第10話  花ヶ咲高校へ入学

 そして、四月になり俺は区内の公立の花ケ咲高校へ入学したんだ。

 なんと、太蔵さんのコネで!!

 本当は有名私立に通わせたいそうだけど、一度に環境があまり変化しても俺のストレスになるだろうって、太蔵さんなりの気遣いだったらしい。


 だけど、この高校は俺のレベルよりも高かった!!

 入学式の直ぐ後で、おこなわれた実力テストで赤点を三個も取る非常事態に、俺は早速家庭教師を五人も雇われて、勉強三昧の日々を送る羽目になる。


 そして、起こる名前の問題だ。


「それ本名か?」

「芸名だろ? お笑い芸人の」


 なんて言ってくる奴らが多かった。

 さすがに有栖川の名前には驚いて、「あの一族の縁者なのか?」

 と聞いてくる者もいた。

 さすがに、有栖川家の地元だ。この辺でも名家で通っているらしい。


「本当だ……お笑い芸人の名前ならよかったよなぁ」


 俺は、入学初日からすっかり有名人になってしまった。

 そして、実力テストで赤点取って、その頃から女子から影でクスクス笑われるようになっていた。


 男子からも、見放されていつの間にかボッチ状態に……


 この状態に俺は少し凹んだけど、今こそ大好きな【怪物の幻夢】のなぞ解きを進める時ではないのか!! と開き直った。


 俺は、コミックを全巻揃えてもらって、家では勉強三昧で読めないので、学校に持ち込んで休み時間に読みふけっていたら、リーダー格の女子に先生に告げ口をされたんだ。


 まだ、ちょうど五人の女の子が謎の怪物の夢に取り込まれていく最中で、俺の推しである『梨花』の場面だった。

 アニメでは、何度も見たことがあるが、梨花には妹がいたんだな。それが一番最後に登場してくる『果林』だとは……


 先生は、困った様子で俺からマンガを取り上げると言った。


「【怪物の幻夢】が好きなのか?」


「はい!!」


「そこは胸を張るところじゃないだろう? ここは学校だぞ?漫画を持ってきていい処じゃない」


「でも、俺ボッチだから休み時間に、暇なんすよ」


 担任は、大きく息を付いた。


「その件は、クラスで話し合おう。自分から壁を作るんじゃない」


 俺は、ハッとした。自分から壁を作りに行ってたのか……?



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