第4話  大家のおばあさん

「おばあちゃん!! お願いだ!! 世話は俺がする。躾は俺がする! 外には出さない! だから、をアパートに置いてやってください!!」


 俺は、アパートの大沢美世ばあさんに土下座をして頼んだ。

 虎太郎は、ばあさんの家の玄関先に置いてきた。


「お前は馬鹿か? ネコは生き物だよ? 泣き声はどうするんだい? 糞尿はどうするんだい? 本物のピカチュウのようにポケットの中で飼える訳では無いんだよ。コーポ大沢には他にも住人さんがいるんだよ」


 おばあちゃんは、すごく当り前の事を言った。

 もともと、ペット不可のアパートなのだ。詩かも。虎太郎の奴、俺のジャージの中で漏らしてやがる……


 この時ほど、ポケモンの世界が羨ましいと思ったよ。


「おばあちゃん!! せめて、一カ月!! いや10日!! その間に虎太郎を引き取ってくれる人を捜すから!!」


「あたしに言ってくる前に、名前が付いてるじゃないか……10日だけだよ。他の住人さんにはお前から言うんだ。苦情が出たら、即刻捨ててくるんだよ!!」


 俺の捨て身の土下座が聞いたのか、大家のおばあちゃんは、渋々折れてアパートで虎太郎を期限付きで飼っても良いことになった。



 そして俺は、大きく後悔することになる。


 虎太郎は、まだ、生後一カ月くらいで子猫用のフードが必要な事、トイレの躾が全然できてない事。

 取り合えず、虎太郎を二階の201号室の俺の家へ帰る途中で住人さん1人1人に頭を下げに行ったんだ。


 その時に、実家でネコを飼っているという女子大生の恵美めぐみさんに教えてもらった。人間用のミルクもあげてはいけないそうだ。

 それに、変な病気を持っていてもいけないから、獣医師に診てもらった方が良いとも言われた。


 俺、「「ドキン!!」」


 母一人子一人の俺に、獣医さんに子ネコを診てもらうお金なんか無かったんだぁ‥‥‥


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