和佳奈と桃花 確かめる想い(8-8)


「ねえ、和佳奈……。一応、確認なんだけどさ」


 桃花が私を抱きしめたまま、耳元に口を寄せる。一瞬前までとは全然違う、甘いささやきがくすぐったい。


「なあに」

「私と…… 私と和佳奈って、両想いってことでいいんだよね?」


 そんな当たり前の――って言いかけたけど、私からは伝えてなかったことに気付く。

 何かもう今のこの状態でそれ以外の答えなんてない気もするけど、こういうのはちゃんとしなきゃね。


 心もち、身体を離して、桃花と正面から目を合わせる。ホント、整いすぎてる顔だなあって思いながら、心の中にある想いを口にした。


「うん、好き。桃のコトがすごく好き。もう離れたくないし、ずっと一緒にいたい」


 良かった。そう言って桃花が、今までで一番嬉しそうな笑顔になった。

 桃花って前からキレイだしかわいかったけど、なんか私の中でキレイ記録もかわいい記録も更新してる気がする……。


「ついでにもう1コ、聞いていい?」

「いいよ、何個でもいいけど」

「大学、いつ決めたの?」


 ちょっと心配そうな表情になった桃花に、ああそういうことって気付く。

 桃花は推薦で決まってて、私がどこ受けるかって教える前にあんなことになっちゃって、やっぱり気になるよね。


 あんなことって…… キスしちゃったんだけど! やっば、桃とキスしちゃってたんだ!

 ……ダメダメ、恥ずかしがるのは後にしなきゃ。桃も真面目な顔してるし。


「年末くらいかなあ? 桃が教室で勉強し始めたあたりだよ、確か」

「えー、本当に? 和佳奈、そんな話全然しなかったじゃん」

「まだ迷ってたから。恋愛と受験って、分けて考えた方がいいって聞いてたし」


 こんな話を私に聞かせてくるのは、愛華か美月のどちらかだ。ごっちゃにすると後が大変って、言いそうなのは美月だけど。もう忘れちゃったけど。


「恋愛と、受験か……。確かにそうかも。だけど、和佳奈はイヤじゃなかったの? 私と……」


 その続きは、ちょっと言いにくそうだった。お互いを追い詰めるように煽って、好きって言う前にキスしちゃって、そのことで傷ついて二人の時間も終わりになったあの日。蓋をしてた記憶がちくってうずいたけど、もう大丈夫だからって思い直す。


「うん。あ、だけどあの時は私、桃に振られたと思ってたから、ちょっと意地になってたかも。桃の連絡先も消すくらい自分を追い込んでたし、『そういうのとは関係ない、私が行きたいだけ』って自分に言い聞かせてた気がする」


 私の答えに、桃花がちょっとだけ目を潤ませてる。そうだよね。私も話しててちょっと泣きたくなってきてるし。

 すれ違い、やっぱり寂しかったもんね……。


「あーもう! あの時の話はやめやめ! 取れる教員免許が多いトコを選んだら桃と一緒でした!ってことでどう?」

「……うん、いいね。そういう偶然はいいと思う」

「じゃあそれで行こー」


 私の無理やりな明るさを後押しするみたいに、強い風がざあっと音を立てながら私たちを包んだ。私も桃花も思わず両手で髪を押さえて、同じポーズになってたのに気付いて笑った。こんな些細なコトが嬉しすぎて、フェンスの際で思いっきり二人で笑い転げた。

 もー和佳奈は笑いすぎ。いやいや最初に笑ったの桃でしょ。言い合いながら私たちは小さなベンチに隣り合って座った。


 まだ冷たさの残る山あいの空気が、私と桃花の距離を近づける。桃花の方からぴったりとくっついてきて、私も押し返すようにもたれかかった。


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