第2話 横顔

私は長らく

自分の横顔を知らなかった


母の三面鏡を覗くまで

自分の横顔が見れることを

知らなかった


うまく角度を合わせれば

うしろ頭の向こうまで見れることなど

ついぞ知らなかった


そこには別の自分がいた


見たことのない

ブッキラボーな自分がいた


(こんな迂闊な男が

 世の中にいるだろうか


 いや男なんて

 みなそんなものだろうか)


とにかく

他人から見た自分のイメージに

もっとも近い自分の姿を

私は初めて見た


少なからずショックだった


そのショックは

私だけのものだった


だって他人から見れば

それはもともとの私

そのものだったから


正面から見た顔は

ハミガキのとき

洗面台で知っていた


なかなか愛嬌のある

まあまあの男前だと思っていた


井の中の蛙であった


私は自分の認識を

六割がた縮小することにした


別に芸能人になる訳でもないし

見た目の問題はそれでなんとか

我慢できた


しかし私はある日考えた


ひょっとして私の「中身」も

自分が思うような私ではないのかも……


その考えは私を愕然とさせた

鏡を見たときより

ショックが大きかった


しかし自分自身を知ることや

なるべく客観的になることは

決して悪いことではない


私は認識の縮小を

自分の中身にまで

延長することにした


そしてカクヨムに投稿し

様子をうかがった


私はまあまあの自信と

まあまあの落胆を得た


         

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