『間欠時空報告員』
やましん(テンパー)
『間欠時空報告員』
『間欠時空報告員』の業務は過酷である。
自身の人生を、ただ、社会のためになげうつからである。
また、そのわり、未来に関する保証もない。
地球における、時空報告員が成立したのは、二億五千万年ほど前であった。
そのとき、先行していた火星文明と金星文明が、宇宙怪物ブリューリにより壊滅し、文明は地球に移住したのである。
それまで、火星と金星にいた、間欠時空報告員は、地球に移ったのである。
彼らは、男女半々で、10人が選ばれていた。
選んだのは『ジラ』である。
ジラは、宇宙の物理法則をすべて自由に使い尽くす力がある。したがって、この宇宙では不滅である。
しかも、ジラは、本来は重力以外には不可能なはずの、多元宇宙の何処にでも移動ができる。
また、どこの宇宙の物理法則をも支配する能力がある。
まあ、ようするに、多元宇宙があるかぎり、ジラは不滅なのだ。
それでも、何時の日にか、多元宇宙総てが滅亡するときは、来るだろう。
ただし、それは、ほとんど、無限の未来である。
しかし、そのころには、さらに、多元宇宙の外の宇宙を見つけている可能性が高い。かもしれない。
とはいえ、ジラは、優秀すぎるにも関わらず、相当に、いい加減なのだ。
どうなっても、どうにでもなるからである。
しかし、地球人類は、そうはゆかない。殺しあわないでは、生き抜けない。そうはゆかないわけよ、と、信じているわけである。
そこで、報告員さんは、10名が選ばれていたが、その後は、ほっておかれたままであった。
彼らは、五千年ごとに交替で世界に現れ、観察し記録して、それを引き継いで行く。
つまり、一回現れると、次は五万年後になる。
しかし、情報は、全員に伝わり、彼らの寿命は、地球に現れている時間かける太陽系の寿命であった。
つまり、まだ、確定していない。
ナンバー6️⃣の『たらば姫』は、地球の現代文明で言うところの、西暦2025年に、出現する予定であった。
ナンバー5️⃣の、『いたち王子』は、紀元前2975年に、中東地域に現れ、そこからぐるっ、と地球を一周して情報を集めて報告をした。人類は体系的な文字を、次第に範囲を広めながら使い始めていた。
ナンバー4️⃣の『こおり姫』は、紀元前7975年に現れて、エリコの塔の建築を見学したりした。上黒岩遺跡あたりにも出没していて、彫刻のモデルになったりしたらしい。
これらは、すべて、映像記録になっていて、10人とジラは、見ることができる。
ただし、10人は、ばらばらにしか目を覚まさず、一緒に見ることはない。
てなわけで、いま、『たらば姫』は、目を覚まして、地球の観察にでかけようとして、準備をし始めていたのである。
しかし、報告員のほかに、自動観察ロボットがあり、それは、常時観察を行っていた。
『たらば姫』は、ここ五千年の様子を調べていたのである。
『なんとまあ、地球人類は、相も変わらず、やはり、戦争しかしていない。武器と、関連用品しか作っていなかったわけか。まあ、一部に例外があるかなあ。芸術とか。しかし、戦争に一切無関係というものは、あまり見当たらないかなあ。人類と絡まないで生きているものは、深海域には多いな。よし、では、今回のスペシャルテーマは、『戦争と関わりがない地球人類の営みを探してみる旅』にしようか。』
自動観察ロボットが言った。
『やめたほうがいいすよ。』
『なぜ? 無駄骨でも、資料あつめにはなるし、希少だから興味が湧くんだ。』
『いや、そうなんですがね。次の五千年期には、地球人類が全般に出る可能性はかなり有意に低くなる、と見なされるので、‘’地球人類最後の栄光‘’、とか、いささか、哀愁を感じさせる方が、ナンバー7️⃣にも、分かりやすそうな。』
『かけるか?』
『いいすよ。まあ、負けないす。人類が、次の五千年生き延びたら、あっしが、鍋焼うどん100ぱい、おごりやす。生き延びなかったら、あなたが、バーチャルうなどん100ぱい、わらしにおごる。』
『いいだろう。ただし、結果は、五万年後だな。』
『あい。五万年前、あなたは、進歩したネアンデルタール人たちとゲームして遊んでいた。彼らは、その頃すでにジラと接触し始めていた。現世人類は野蛮で戦争が好きで、ネアンデルタール人は、あきれ果てて、地球を捨てたが、現世人類は地球の支配者になった。あなたは、その一時期に両方の彼らを見、記録した。次の五万年後には誰に、あいますかね?』
『さあね。でも、そのときは、たぶん、来るだろね。鍋焼うどんや、うなどんがなくらないことを、祈るね。』
🤔🍲🍜🙏
『間欠時空報告員』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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