第4話 懐古の紅葉渓谷が、弱った心に染みるから
あの夏のあと大地は、別の仕事のためにひと月ほど東北へ行った。なんでもフォトグラファー仲間がおり、イベントや挨拶回りなどがあるという。僕も誘われたけど貯金が心配なので断った。その間に僕はカレンダーのデザインを組む。
大地からもらった写真を組み合わせたり眺めたりしながら、ノートにデザイン案を書き出し、おおよその下書きを決める。このときに軽く色鉛筆でカラーリングもやってみる。いくつかパターンを書き、納得いくものができれば一旦寝かせ、翌日に改めて確認してパソコン上に下書きどおりのデザインをする。
このやり方は会社では一度しかやっていない。一度、両面チラシを任され、珍しく納期もたっぷりだったこともあり、張り切っていくつもの下書きをした。結果、ギリギリ間に合い、顧客にも喜ばれたけど、それ以降、僕に新規チラシデザインの仕事が回ってくることはなかった。
今にして思えば、仕事が回ってこない理由もわからなくはない。要は僕のやり方はコスパが悪いんだ。毎日大量の案件が入ってくる中で、コンペに出すわけでもなければ大口注文だったわけでもない案件に見合うコストではないということ。僕のこだわりは現場で実践するには不向きだった。
どうりでリピート品の修正やフォーマットが決まったパンフレットを任せられるわけだ。そして短納期の社報誌もそう。とにかくスピードを求められていたので、僕のやり方は合わない。でも今回は違う。
なんとかカレンダーはA3サイズで壁に張る用のものだと決まった。それ以外はすべておまかせとのことなので、まずスタンダードに上に写真、下に暦を置いたスタイルで考える。
写真は大地が撮影したものなので、暦部分をデザインするのが僕の仕事だ。数字のフォントや枠組み、それらすべてを組み合わせて見やすいかどうか工夫する。
自分の趣向のまま作るとカレンダーの視認性が落ちてしまいそうなので、写真とカレンダーは分けたほうがいい。そういう認識で細枠のものと太枠のもの、フォントも見やすいゴシック調とシンプルながらも全体的に丸みがあるフォントで組み合わせ、四案ほどでき上がり、あとは大地の帰還を待つだけとなった。
そうしてデザインができ上がった三日後、九月もいよいよ終わるという頃、大地が出張から帰ってきた。
「ただいまー、はいこれ土産」
どっさりと抱えた大袋には大量の菓子箱やおつまみ、ご当地生ラーメンやレトルト食品などなど。
「って、食べ物ばっかり……!」
「あとフルーツと野菜が届くよ」
「まだあるのかよ!」
大地のほんわかした笑顔に僕はすかさず呆れた。
「青果は兄さんからね。あとは俺の趣味。向こうの飯、がばいうまかとよー。眞魚も今度は一緒に行こうよ。みんなにもう言ってあるけんさー」
「僕が行ったところでなんの手伝いにもならないって……」
そう言う僕だが、まんざらでもなかった。いつか九州以外の、いろんな場所を見てみたい。
「東北もいいけど富士山とか北海道とか、無知な僕でもわかるようなキャンプ地あるよなぁ。それまでに車の乗り方思い出さないと」
「まぁねぇ。富士山も北海道もいい場所いっぱいあるし、飯はうまいし。クマに注意やけどな!」
大地が無邪気に言った。そうだった。九州にクマがいないから忘れてたけど、他の地域はクマがいる……。
「あ、あの、やっぱナシ、無理、怖い」
そんな僕の懇願は大地の耳に届いておらず、机に広げていたデザイン案のプリント用紙を見て目を輝かせていた。
「おー! いいやんか! さっそく店長に見せ行こ!」
「本当にいいのか? なんかもっと、お前のこだわりみたいなのは」
「俺、こがんとは、ようわからんけんさ」
堂々と言うなよ。お前のカレンダーなんだけど。
そんな僕の呆れもよそに、大地は四案のカレンダーデザインを見て「こっちもいいし、これもいいな」と狸らしく雑食性を見せていた。
そうして数日後、僕は大地に連れられて、彼のクライアントであるカメラ店に向かった。
『ほおのきカメラ店』は町の小さな個人商店だが、そう古くさい外観ではなく、レトロなタイル張りのちんまりとした店だ。存在は知っていたけど実は入ったことがない。大地はカメラのメンテナンスもやってもらっているようで何度も足を運んでいるそうだ。
「ここで初めてカメラ買ったんよー、高校のとき」
クリアなガラスがはめこまれた扉のノブを引きながら大地が言う。
「そうだったなー。高校のときは僕が全然お前にかまってやれなくて、それで大地もお金貯めて新しい趣味を見つけたんだよね」
なんとか記憶の糸を手繰り寄せようとしたが、大地がカウンターに立って「すみませーん」と声をかけたので我に返る。
こじんまりとした店内は明るい蛍光灯に満ちており、ちょうど店の真ん中にあるショーケースのカウンターで空間が隔てられていた。
客が立つ側にはキレイに磨かれたガラスケースの中に年代物のカメラやトイカメラ、アンティークカメラなど装飾用としての品や、実用的な一眼レフが種類豊富に並べられている。また、カメラに取り付けるネックストラップや三脚からフィルムまであらゆるカメラ道具も並んでおり、息を呑むほど値段が高額で格式の高さが窺えた。
やがて店の奥から白シャツと黒いスラックス姿の壮年の男性がやってきて、深い声音を響かせる。
「はーい。こんにちは、大ちゃん」
バリトンボイスとミスマッチなフランクさだ。
「こんにちは、店長。今日はカレンダーのデザイン案を持ってきたよ」
大地も友達感覚で接している。ロマンスグレーが似合うダンディな店長は目を細めて笑い、「おぉ、待っとったよ」と嬉しそう。そうして彼は僕を見た。
「あぁ、君やね? 大ちゃんの幼馴染の子って」
「はじめまして。米持眞魚です。大地の幼馴染で……」
「聞いとりますよー。そがん話ば大げさにすることなかったっちゃけどねー、大ちゃんがどうしてもって言うけんが。あ、僕は店長の
絶妙なタイミングで名乗られ、僕は思わず噴き出した。安澤さんにカウンターへ入れてもらい、奥の事務所へ案内される。
ほおのきカメラ店は安澤さんのお父さんが経営していた店らしく、大地が初めてカメラを買った頃に現在の店長が継いだそうだ。そんな話を促されたソファでしばし聞いており、冷たい麦茶を出してもらい、グラスを半分飲み干したところで本題に入った。
大地はデザインのことがまったくわからないので、ここは僕が仕切らせてもらう。
黒いビジネスバッグからカレンダーの原寸用紙を出し、テーブルに並べた。安澤さんの目が光り、僕は咳払いして話し始める。
「えー、まずは──」
***
結論から言うと、安澤さんは太眉を残念そうに下げて何やらいろんなことを言っていたが、全案却下となった。
「眞魚、そう落ちこまんと。時間はたっぷりあるし、焦らんでいいって店長も言っとったやろ」
大地はなだめすかすように言いながら、車の運転席でハンドルを切る。
「別にもう吹っ切れてますけど。あれから二日経ってんだよ? そんな引きずってたら仕事なんてできないよ」
強がりを口にし、助手席でスマホゲームに勤しむ始末だった。
完璧だったはずのデザインが呆気なく却下されたのは、やっぱり堪えるものがある。僕が気に入っているものが採用されないまでも、四案のうちどれかが採用されていいはずだと高をくくっていた。
しかし、安澤さんの言う「もっと大ちゃんの写真を目立たせるようなデザイン」というものは、すぐに思いつかない。僕は自分の機嫌をごまかすため、話題を変えた。
「それで、今回はどこに行くの?」
今、車は九州自動車道をぐんぐん走っている。今日は前から予定していたキャンプだ。
「長崎の黒木渓谷だよ」
「渓谷……」
言われてもピンとこない。
長崎は言わずとしれた観光の名所。長崎市内だけでなく
しかし、進んでも見渡す限り山だ。外はあいにくの曇り空だし、気分は上がらない。
「烏森くんも誘ったけん、賑やかになるやろねぇ。まぁ、おやつにずんだ餅でも食っときー」
「うん」
出かける前に大地が持ってきたビニール袋に宮城県仙台名物ずんだ餅が入っていた。言わずもがな東北土産の一つで、鮮やかな黄緑色の餡の下にずっしりとした餅だ。優しい甘さの中に枝豆の青い風味があり、僕は無心でむさぼった。
そう。今回は烏森くんにも連絡したので、福岡からはるばる来てくれるそうだ。唐津に招待するよりも先にキャンプへ行くっていうのが、なんだか大地らしい。
大村インターを下り、国道に出て走っていくとようやくキャンプ場に入っていく。うっすら色づいた山の中に美しく手入れされた庭木が並んでいた。
古民家の管理棟があり、その珍しさに目を引く。砂利道、松の木、木造の平屋、大きな車庫みたいな炊事場。その中に溶け込むおばあさん。
大地がキャンプ場の管理者であるおばあさんに声をかけ、さっくり手続きを済ませた。僕も後ろからついていき、手続きの様子を眺める。
玄関脇にある棚には手書きのサイト案内図が貼ってあり、手作り感がかわいいし、わかりやすい。キャンプ場は全部オートサイトだそうだが、そんな説明も耳に入らなかった僕は、ただただこの古民家に意識を向けていた。
なんとなく子供の頃を思い出す。
「おーい、眞魚ー」
いつの間にか車に乗っていた大地に呼ばれ、僕は慌てて車に戻った。
「なんか、眞魚んちに似とるよね」
大地が明るく言うけど、僕は「そうだね」とそっけなく返すだけ。いつもならここから大地が話を広げるけど、今日は僕に合わせてかあまり話しかけてこなかった。
大地の言うとおり、かつて唐津にあった僕の実家に雰囲気が似ている。こんなに広くて立派なものじゃなかったけど庭は植木が多くて、地面は砂利が敷き詰められていて、平屋で少しカビの匂いがする。家にはおばあちゃんがいて、母さんは毎晩遅くに帰宅して、トイレに起きた時に顔を合わせることがあった。そんな過去の光景が蘇る。
車の乗り入れが便利なキャンプ場だが、そのすべてが砂利で敷き詰められていた。
木々に囲まれたサイトにつき、僕と大地は二人でいつものようにテントを組む。でも……
「これ、ペグ刺さるのか?」
僕は単純な疑問を口にした。
まぁまぁの大きさの粒で、なかには鋭利なものもある一貫性のない砂利にいつもの軽量なペグを刺すのは難しそうだ。テントを支えるのに欠かせないペグは、地面に刺す際はハンマーで叩いている。硬い地面に刺せば、ペグが折れ曲がってしまう可能性があるだろう。
心配していると、大地はなんだか嬉しそうに笑った。
「眞魚もだんだんわかってきたなぁ。そのとおり、ここの砂利は硬い。一筋縄じゃいかんので、ちゃんと対策しとる」
そう言うと彼は太いペグを出してきた。なんと、マイペースな大地にしては用意がいい。
「一回失敗したけんね!」
失敗してたんかい。
「ってことは、前にも来てたんだね」
「俺は結構いろんなとこ行っとるよ。はじめましての場所は、この前の求菩提山くらいやないかなー」
ふうん。僕の実家にそっくりだから連れてきた、というわけじゃないのか。勘ぐり過ぎかな。
「知っとるけん選んどるわけでね。やっぱ俺の写真メインのカレンダーやし、今まで見てきた場所で、その時期のその場所のいい瞬間を撮りたいやん」
「なるほど」
大地は普段、多くは語らないし、きっと自分の中でもどんなカレンダーにしたいか定まってないんだろう。そういう客は職場時代でも多かった。デザイン性の高いものを求めるが、具体的なレイアウトやテーマなどは決まっておらず、そもそもそういうことも考えになくて、言語化できずに抽象的な指示をしてくるのだ。そういう要望にもしっかり応えて、客のイメージどおりに仕上げるのがプロの仕事。
僕は水を含みながら、ぼんやりそんなことを考えた。思いのほか冷たくて、それが胃の中に沈んで、ますますお腹を冷やす。重くなった胃をさすり、僕はため息をついた。
基本的なことを忘れて、自分の理想だけを詰めこんだ独りよがりな仕事をして、何がっかりしてるんだよ。そんな自分にがっかりする。
やがて拠点を築いた僕らは、いつものごとく各々好きなようにした。大地はさっそく撮影に行き、僕は周辺の散策をする。
記憶に新しい求菩提山のように、渓流に囲まれた山林を歩けば、ぽつぽつとソロキャンパーがいた。定年後と思しきご夫婦のキャンパーもおり、とてもゆったりとした時間が流れている。
管理棟付近へ戻ると、僕の胃がわずかに軽くなった。妙な安心感があり、やっぱり似てるなと思う。
錆びている外の足洗い場や、庭木、砂利、水分を含んだ木造の匂いが懐かしい。ぼんやり佇んでいると、管理棟から誰かが出てきた。
「おっ」
目を凝らして見ると、ぼさぼさの髪に不健康そうな顔色、アウトドアという言葉が似合わない天狗の子孫がそこにいた。
「こんにちはー」
烏森くんが僕に気づき、手を振ってくる。今日はあのラフな格好ではなく、きちんとした山歩きスタイルだ。軽そうなジャンパーの下にパーカー、ストレッチ素材のズボンは蛍光グリーンの差し色が入っている。全体的にグレーと黒、蛍光グリーン。細くて小柄な彼の背後にはキャンプにしてはコンパクトなリュックがあった。
「いやー、遠いっすね、黒木渓谷。最初聞いたときは正気かよと思いました。大地さん、スパルタすぎ」
近づくなり烏森くんは絶好調に文句を垂れた。あれから僕らはたまに連絡を取り合っているんだけど、大地は例のごとくスマホが使えないので主な連絡係は僕になっている。
「あれ? 眞魚さん。なんか元気ないですね?」
なんでわかるんだよ。あやかしの鋭さ、本当に嫌だな。
「えー……そんなことないけど」
「そうですか? なんか心ここにあらずって感じですよ。あ、あんまり踏み込んじゃいけない感じですかね。僕、コミュ障なんでそういうとこ直さなきゃいけないのに、すみません」
「ううん。大丈夫……なんかごめんね。せっかく来てもらっといて」
「別に眞魚さんが謝ることないですよ。僕が来たくて来たんですから。むしろついてきていいのかなって思ったくらいで」
僕らは似たもの同士なので、しばらくこの応酬が続いた。ゆったりと駐車スペースまで移動すると、烏森くんは愛車に近づいて自慢げに見せてくる。
「これで来たの?」
「そう。僕の二輪です」
どうもスクーター一台で下宿先の福岡市からこの大村市までやってきたらしい。その距離、約一二〇キロメートル。
停車させていたスクーターは黒い車体で結構がっしりしている。烏森くんはヘルメットを着用し、ハンドルを握ってスクーターを押しながら僕と並んで話した。
「ほんとはバイクが欲しいんですけどねー……まぁ、乗り慣れてるんで。あ、これ実家に戻る用でも使うんですよ。だから自動車道も走れる250cc。でもこいつでも長距離は本当に大変で。これも修行の一環ですけど」
さらに聞けば、お父さんから「そうしろ」と言われてバイクの購入を止められているそうだ。現代天狗の修行も大変だな。
「二輪は乗ったことないからわかんないけど、君の体力が化け物並だっていうのはわかった」
この小柄にどれほどの体力が詰まってるんだろう。普段、覇気がないから、こういうときに真価を発揮するのか。烏天狗の時点でただ者じゃないけど。
それから烏森くんは別サイトで泊まるらしく、一旦別れることにした。
スクーターで移動する烏森くんを見送り、僕も自サイトへ戻る。時折、渓流を眺めながら歩く。色づき始めた紅葉が川を流れていく様を目で追いかけるのが楽しい。
どうやら烏森くんと再会したおかげで気が紛れたのか、僕は素直に景色を楽しんだ。
それにしても、まだ十月前半。山の中とはいえ、日中は日差しもあって汗ばむほど。紅葉もやっと色づきだしたかなというような頃合いだ。真っ赤な紅葉を撮影したら、それだけで鮮やかな画になるだろうし、解像度次第では無加工でも問題ないだろう。大地は一体どういう写真を求めてるんだろうか。
なんとなく興味が湧いたので、大地を探しに自サイトとは反対の方面へ向かった。
もう一度通ったご夫婦キャンパーのサイト前にて、僕ははたと立ち止まった。
仲睦まじそうな夫婦がお揃いのジャンパーと装備を身に着けたまま、楽しげに焚き火を見ている。いや違う。一心不乱に何かを剥いている。それがなんなのか気になり、不躾ながら探るように見てしまった。
そんな僕に気がついたのか、女性のほうが顔を上げて会釈した。つられるように男性も顔を上げ、僕を見てニッコリする。
「こんにちはー」
二人が穏やかに挨拶するので、僕は慌ててペコリと頭を下げた。
「こんにちは」
「ちょっとねぇ、あなた、お時間あります?」
人懐っこそうな女性は、まんまるな顔で愛嬌たっぷりだ。そのおかげで、僕もあまり身構えることなく「あ、はい」と近づいた。
夫婦揃って僕を手招きし、焚き火台の前に座らせる。そこでようやく彼らの手仕事がなんなのかわかった。銀色のボウルに入った大量の落花生と、その脇にビニール袋があり、そこに殻を入れているようだ。
「これこれ、ゆで落花生。これを剥いておつまみにするの。お料理にアレンジもきくんだけど、大量にあるから、あなたも手伝って」
「わかりました」
僕もだいぶキャンプの日常に慣れてきている。昔なら知らない人に声をかけられても愛想笑いでごまかしていたものだが、この自然の中にいると同志のような気がしていくらか心が緩む。
大量のゆで落花生を夫婦でずっと剥いていたらしく、僕が手仕事を引き受けた途端、二人は「助かったー」とでも言うように作業を止め、固まった肩や腰をほぐし始めた。
ただ茹でた落花生なのかと思いきやそうでもなく、どうやらこの土地の名産らしい。殻付きのまま塩ゆでした落花生はおつまみとして最適なんだとか。また剥いた殻は焚き火に使うのでゴミも最小限で済む。そういう話をしながら徐々に言葉数が少なくなり、黙々と作業した。
「……こう、殻を剥く作業ってどうしても黙りがちになっちゃうわねぇ」
奥さんが気まずそうに笑う。
「わかります。栗とか銀杏とか、皮剥きしてると真剣になりますよね」
僕も古い記憶を手繰り寄せながら笑った。
「あら、若いのに意外ねぇ」
「おばあちゃんによく頼まれてたんで」
母が仕事で家にいなかった小学生の頃、祖母と過ごす時間が多かったので必然的にこういう手仕事を任されることが多かった。祖母はなんでも僕に食べさせようとし、栗や銀杏の他にりんごやみかん、柿、びわなどの皮むきをして二人で食べていた。
三人で落花生を剥いているとあっという間に終わった。ボウルには薄皮がついたピーナッツがごろごろ。
すると、ご主人のほうがピーナッツを指差し、僕に「食べて」と促してくる。剥きたてのゆで落花生を僕が一番先に食べていいのか。いいんだな。二人とも、とてもニコニコしている。
「いただきます」
ピーナッツを一粒つまんで口に運ぶ。薄皮の渋み、しっとりと柔らかい舌ざわり、ちょうどいい塩加減のあと、噛めば噛むほど甘みが増していく。まろやかで濃厚な優しい味わいだ。
「おいしいです」
「よかったー! じゃあ、これおすそ分け!」
奥さんがビニール袋にピーナッツを入れてくれるので、僕は慌てて止めた。
「そんな! いいですよ、せっかくご夫婦で食べるものを」
「何言ってるの。タダでお手伝いさせたわけじゃないのよ。ほら、おいしかったなら持っていきなさい」
奥さんがビニール袋を押し付けてくる。その横でご主人がピーナッツを口に放りこんで頷く。
僕は二人に恐縮しながら頭を下げて「ありがとうございます」とピーナッツの袋を受け取った。
人から食べ物をもらうというシチュエーションが新鮮で、気分が高揚したのか急いで自分のサイトへ戻る。
大地はまだ帰ってきていない。その代わり、烏森くんがローチェアに座ってゲームしていた。
「やぁ、さっきぶり。まるで自分のサイトみたいじゃん」
僕が声をかけると、烏森くんはゆっくり顔を上げた。そしてすぐにゲーム画面へ戻る。
「二人ともいないんで、遊びにきた意味ないなぁっていじけてたんですよ。あ、でも大地さんは一旦戻ってきました。食材を買い足しに行くって出ていきましたけど」
確かに大地の車がない。そういや、ここまであんまりどこかへ立ち寄った記憶がない。何を買い忘れたんだろう。
いじけていた烏森くんはレトロなシューティングゲームをしていたようで、クリアしたらすぐに画面を閉じた。
僕は彼の横にあったローチェアを取って、向かい合うように座る。
「大地さん、あんな頻繁に狸の姿に化けてるんですね……」
烏森くんはしみじみと言った。どうも狸バージョンの大地に遭遇したようだ。
「僕がここに来てすぐ、一匹の狸が頭上を飛び越えていったんで何事かと思ったんです。大地さんでした」
「あははは。大地のやつ、あとで説教しないと」
あいつ、いくらなんでも無防備すぎやしないか。そう考えていると、烏森くんは僕が持っていたピーナッツの袋を見て不思議そうにまばたきした。
「あぁ、これはゆで落花生を剥いたやつ。別サイトにいたご夫婦の手伝いをしたらもらったんだ」
「この大自然の中で助け合いの精神、尊いですね」
「そんな大層なもんじゃないよ」
僕は半笑いで返した。それに対して、彼は前のめりになって真剣に言った。
「でも大事なことですよ。田舎じゃそれが当然というか、そもそも助け合わないという概念が存在しないというか。都会が便利すぎるんですよ」
「そうだねぇ……便利すぎると一人で生きていくのも割と平気だしね」
てっきり嫌味で言われたのかと思ったが、どうもそうじゃなさそうだ。
久しぶりに会ったから忘れてたけど、彼はこういう物言いをする子だったな。ちょっと人に誤解を与えそうな言い方だったり、達観したように斜め上から言ってきたり、みたいな。天狗らしいといえば天狗らしいのか。
そんな天狗様は若干調子に乗った風を装い、ふふんと笑って言った。
「僕、こう見えて都会暮らししてるんで、一人でも生きていけるのわかります。マジ便利。徒歩圏内にコンビニあるの最高すぎる。それに他人からの干渉がなくて本当にいい」
「へぇぇ、君、山から下りて生活できるんだねぇ」
「な! 今、馬鹿にしましたね! 僕、大学生ですよ! 福岡市内の大学に通ってるんですけど! この前のは夏休みだから帰ってきとっただけだから!」
「ごめんって。そう怒らないでよ。ほら、ピーナッツをお食べ」
慌ててなだめると、烏森くんはピーナッツを一粒食べておとなしくなった。
「これ、おいしい」
「おいしいよねぇ。大地が帰ってくるまで残しておこうと思ったけど、食べてしまうか」
「えー、もったいない! せっかくだからおつまみ用と料理用で分けましょうよ。カレーに入れて食べたい」
「なんでカレーなんだよ」
即座にツッコミを入れると、烏森くんはリュックを引き寄せてジッパーを開けた。中から保冷バッグを出して僕に渡す。
「はいこれ米三合、じゃがいも三つに飴色玉ねぎ。僕が炒めて持ってきたんですからね。実家の野菜ですけど。あと、この玉ねぎはスライス用で一玉。玉ねぎはいくつあってもいいですね。あとはにんにく一欠。市販のカレールウ一箱。これでカレー作らない手はないですよね」
「にんじんが足りないな」
出てきた食材を抱えながら僕はまたツッコミを入れる。烏森くんは顔をしかめたが、すぐに真顔に戻って冷たく言った。
「あれはあえて置いてきました」
「……にんじん、嫌いなんだな」
「はい」
素直でよろしい。しかしここまで揃っているとなれば、確かに今晩はカレーで決まりだ。
「ちょっと待って。肉がないぞ」
もう一つ忘れていたことに気づく。これに烏森くんはキョトンとした。
「大地さんが肉持ってきてるはずですよ」
「え? あ、そうだっけ?」
しまった。仕事でうまくいかなかったショックで、今回は食材とか道具とか、大地に全部任せきりで何一つ手伝ってなかったんだ。しかし、烏森くんは僕の焦りを気にすることなく、頭の後ろで手を組み、椅子をゆらゆら押しながら言った。
「なんの肉でしょうね。僕、別にカレーにはこだわりないんで、なんでもいいんですけど。ちなみに実家のカレーは牛です」
「牛か……僕もまぁ牛が好きだなぁ」
烏森くんに痛いところを突かれずに済み、取り繕うように言う。これは牛肉決定だぞ、大地。
すっかり牛肉カレーの舌になった僕らは、それから食材をテーブルに並べて大地の帰りを待った。今のうちに米を炊いとくか。クッカーに米を入れてウォータータンクの水で軽く洗う。そして、大地が火熾した焚き火台のグリルネットにクッカーを置いて炊く。
「そういえば、カレーにピーナッツって合うの?」
僕の疑問に烏森くんは「合う」と言い切り、少し笑って「はずです」と付け加えた。
「だってほら、豆カレーがあるんだし、ピーナッツも豆ですよね。合うはずです」
「ピーナッツって豆なんだ」
「そうですよ。マメ科の植物で、落花生という名前の由来も地中に生るからだったと思います」
「へぇー。うちのおばあちゃんが落花生はナッツだって言い張ってたから、ナッツ類だとばかり」
「眞魚さんって、おばあちゃん子なんですか?」
すぐに質問が飛び、その速度についていけなかった僕は一拍置いて頷いた。
「うん、そうだよ」
「ご両親、忙しい人だったんですね」
「あ、ううん。うちは母さんが中学のときに亡くなってて。父さんはその前に離婚していなくて、愛知にいるし、すでに再婚して子供もいるし。でも母さんが亡くなってからは父さんも気にかけてくれてたし、専門学校と就職も父さんが住んでるとこにしてさ。おばあちゃんも歳だし、ボケてたし、僕が高校出て施設に入ったあとで亡くなってさー」
つい早口で言うと烏森くんは目をしばたたかせた。
「え……あ、そうだったんですね。それはそれは」
烏森くんは居た堪れないのか僕から目をそらすと「すみません」とボソッと言った。そうだよね、そんな反応になる。僕は大きく笑い飛ばした。
「いやいや、もうとっくに昔のことだよー。そもそも父さんがいなくなってからすぐ母さんは仕事ばかりで家にいなかったし、もうずっとおばあちゃんと二人暮らしのようなもんだったから」
「そうですか」
烏森くんは頬を掻き、へらっと気を緩めたように笑った。そして、逃げるようにスマホを開いて「大地さん、遅いっすねー」と妙に上ずった声で言う。
「そうだね。まぁ、暗くなる前に戻るだろ。僕、ちょっと疲れたから」
そう言って僕もスマホを開いてソーシャルゲームを起動させる。あ、Wi-Fi通ってないや。
ダメだな、なんだかとてつもない罪悪感がめぐる。つい勢いで身の上話をしてしまった。しかも重ためのやつ。だから今まであまり考えないようにして家族の話はごまかしてきたのに。
そう考え始めると頭の中がうるさい。無意味にスマホを見てしまう。気まずい空気が流れているのを感じ、話題を考えるも何も出てこない。
すると、烏森くんが先に口を開いた。
「あの、やっぱ空気読んで言わんでおこうとか思うの、よくないなって考えたんですが」
僕は「え?」と驚き、顔を上げた。烏森くんは咳払いし、僕をおずおず見ながら言う。
「さっきの眞魚さんの話、そんなことを笑って言うの、よくないです。僕の失言が招いたことだけど、平気なふりして言うのは、やっぱり違うと思うんで」
「そうかな? だって重いじゃん? ちょっとこの前知り合った人に話す内容でもなかったよね。いやー、ごめんね、気にさせて。笑えないもんね」
「違います。そうじゃなくて」
どうにも烏森くんの言いたいことが読み取れない。別に気を使わなくていいのに。気を使わせたこっちが悪いんだけど。でも平気なふりとかしてないし。だってもう全部昔の話で、僕はそれを乗り越えてきたんだから。
「あー、わかった。自覚がないんだ……まったく」
それは彼の独り言だった。烏森くんの言葉は、正直いつもより不器用なので伝わりにくい。それは彼もわかっているのか、頭を掻いて羽を落としながら、もどかしげにため息をついた。
「僕は恵まれて育ちました。だからその事情や背景を想像するのは難しいです。もしかしたら、僕が勝手に悲観的に捉えてるだけかも。笑って言うなっていうのも、確かに違うけど……すみません。なんか自分でも言いたいことがわからんくなってきた」
「ううん。烏森くんが僕を気遣ってくれてるのはわかったよ」
だんだん尻すぼみになった彼に、僕もなんと返せばいいかわからず、無難な言葉をかけた。そうして僕の複雑な事情と、彼の複雑な思考はうまく噛み合わないまま時間が流れていく。
だんだん気温が下がり、僕はテントからジャンパーを引っ張り出して羽織った。
すると、ようやくマイペースな狸が帰ってきた。車を停めて飛び出し、満足そうに笑って買い物袋を見せてくる。
「ただいまー」
「遅い!」
僕と烏森くんが声を揃えて噛み付くと、大地は立ち止まって目を丸くした。
「え、なん? どうしたと?」
「とっくに日が暮れちゃうよ! その前にカレー仕込まなきゃだろ!」
僕が怒る。
「そうですよ! 遠くから食材を運んできた僕を褒めてください!」
烏森くんも怒る。
「はいはい二人とも、お腹空いたんやね。ちょっと待っときー」
大地がなだめるように僕らの頭に手を置く。ダメだ、ぜんぜん伝わってない。僕と烏森くんは顔を見合わせてため息をついた。
「はい、大地。これをカレーにぶちこめ」
「えっ、なにこの大量のピーナッツ」
「わけはあとで話すから、さっさとカレーだ! カレーを作れ! そして肉は牛肉じゃないと許さない!」
「安心しろ。肉は牛だ!」
大地はひとまず親指を突き上げて頼もしく言った。
烏森くんが持ってきた食材と大地が下味をつけて仕込んでいた牛肉でカレーを作る。カレーは大地が。米は僕が先に用意している。烏森くんは意味があるのかピーナッツを選別していた。
カレーはしっかり煮こまれ、三十分後には三皿のカレーライスができ上がった。
仕上げに烏森くんがカレー皿にパラパラとピーナッツをまぶす。その際、彼は「うぇっ!?」と妙な悲鳴を上げた。
「あの、なんで、このオレンジの邪悪な塊が……」
にんじんのことか。確かにカレー皿には、烏森くんが持ってきたものに入っていないにんじんがある。
「なかったけん、買ってきたとよー。直売所にあったばい。『黒田五寸人参』っていう幻のにんじんらしい。甘くてうまいんやって」
大地は悪気なく言った。
「それじゃ、いただきまーす」
三人声をそろえて皿を取る。僕はローチェアに座り、烏森くんはその横のチェアに座り、大地は座椅子に腰掛け、各々カレーを口に運んだ。
濃厚なルウは花咲くようにスパイスがふわりと香り、まったりと辛味がくる。中辛。大ぶりに切った肉にしっかりとスパイスの下味がついてるから、また違った味わいになる。そして、なんといってもピーナッツ! 痺れた舌に優しい甘みが嬉しい!
「合う!」
思わず声を上げると、大地も夢中でカレーライスをかきこんで頷く。
米は硬いところと柔らかいところがあって、それはそれでいい。食感がその都度変わるから。そしてなんといっても夕暮れの木漏れ日と薄群青、一番星の下で食べることこそ最高のスパイスとなっている。
緑でもなく赤でもないもみじの葉が強い西日に照らされて、赤く染まっていた。すると大地がぽつんと一言。
「この夕焼け色の紅葉がいいんよな」
ふいに冷たい風が焚き火の炎を揺らした。寒さを感じてもカレーの熱で体は冷めない。
ちなみに烏森くんはにんじんを避けて食べていた。しかし、大地の視線に気づいて嫌そうににんじんをスプーンですくう。
「なんや、嫌いやったとー? これも修行やけん、食べてみん」
「そう言われちゃかないませんって……はぁ、しんどっ。わかりました。食べます」
烏森くんは目をつむってにんじんを口に入れた。柔らかくて溶けやすくなったにんじんは、彼の口の中であっという間に消えていっただろう。烏森くんは長いため息をついて、なんとも言えない顔をした。
「おいしいです」
絶対そうは思ってないだろ。しかし、彼はきちんと残さず食べた。
その頃にはすでに日は落ちていて、もみじの葉はすでに夜の色に変わっている。でも僕らの周りだけ明るく光っていて、なんだか笑っているようだった。それを大地は静かにカメラにおさめた。
烏森くんは食事が終わっても僕らのサイトから離れなかった。三人で近所の温泉施設へ行き、ゆったり戻ってきて、焚き火を囲む。僕は温泉でほてった体のおかげでうとうとしていた。
「烏森くん、真っ暗な中で自分のサイトわかんなくならないでね」
「大丈夫ですよ。僕は夜目がきくので。それより、眞魚さんのほうがヘロヘロじゃないですか。早く寝てください」
「うん、おやすみー」
テントの奥へ入っていき、シュラフにもぐりこんで外の様子を眺める。
パチパチと火花が爆ぜる音が鳴り、それが心地よくて眠気を誘う。その中で、大地の静かな笑い声が聞こえてきた。
「いや笑い事じゃないんですよ」
「ごめんごめん……そっか。烏森くん、それは難儀やったね」
「難儀ですよ。僕はどうしようもなく天狗です。きっと眞魚さんにまた生意気だとでも思われてますよ」
「あーははは……ドンマイ」
「慰めになってないです。はぁ、あーもう。どうしたらよかったんですかね、僕」
烏森くんはもどかしそうに言う。すると大地が思案げに「そうやねぇ」と言い、息を吸い、ゆっくり話した。
「眞魚は自分のことに無頓着なんよ。自己犠牲的っていうんかな。周りのことばかり見て世話して……そうやって育ったけん、気づかんかったとやろーね。おばあさんが認知症になってから、俺も眞魚とはあんまり話せんでね。どうにもできんかったっちゃ」
「そうなんだ……大地さんでも無理なら、僕なんか立ち入る隙がない」
「心配してくれてありがとね。あいつ、あんなやし……弱って倒れても気づかんとさ」
沈黙。薪が音を立て、風が炎にまとわりついてボウボウいってる。
やがて烏森くんが、ため息混じりに返した。
「うん。そういうタイプだ。別に自覚してほしいわけじゃないんです。でも見てるこっちが、なんか……何言っても響かないんだろうなって思うと、やりきれんくて」
「そうなんよねぇ。頼ってほしいのに頼ってくれんし。それを言っても笑って逃げられるんだ。やけん、俺は──」
二人はずっと真面目に話こんでいた。でも、その先は聞こえてこない。頭の中に黒い膜が降りたら、もう世界は一旦止まる。
***
アラームの音で目を覚ました。外を見れば焚き火は片付けられていて烏森くんもいない。
薄く霞んで、ちょっとだけ湿っぽい匂いがする。どうも山から降りてきた霧が空気に溶けて薄くなっていたみたいだ。山の空気を吸いこむとひんやりしていて、一気に脳が冴え渡った。
大地も起きだしたが、今度は耳が狸のモフモフに変わっている。珍しく寝ぼけているようだ。
「おーい、大地。おはよう」
耳を仕舞おうと両手で挟みこむと、大地の耳は元に戻った。
「おはよう。あーあ、眠いなー」
「昨日、烏森くんと夜ふかししてただろ。早寝のくせに無茶するなよ。さっさと切り上げればよかったのに」
「そう言わんでよぉ……」
大地は狸の姿になって座椅子に丸まった。確かこの格好になるときは寒いからだったっけ。モフモフに触りたい気持ちを抑え、僕は焚き火台に火を入れる準備をしながら訊いた。
「コーヒー飲む?」
ネットにやかんを置き、お湯を沸かす間にマグカップへインスタントコーヒーの粉末を入れる。大地はまだぼんやり顔で返事をしなかった。
「……昨日の夜さ」
僕はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「なんか僕の悪口言ってたよね?」
「んーん。烏森くんの人生相談だよ」
すぐさま大地が言い返す。そうごまかすなら、それに甘えようかな。僕だって、自己犠牲で生きてるわけじゃないからね。
「眞魚、お湯湧いたよ」
大地が小さな手を出すので、僕は慌ててやかんを火から離した。カップに湯を注ぎ入れる。
「ほら、その格好じゃ飲みにくいだろ。戻れ」
「はいはい」
大地は毛布から出て、顔をプルプル震わせると元のサイズに戻った。
「ふぃー。ちょっとあったまったな。あ、コーヒーありがとう」
「いーえ」
大地にマグカップを渡し、僕も自分のコーヒーを飲む。飲みやすい温度のコーヒーはちょっとだけ酸っぱかった。
そうして一服し、朝食もそこそこに帰り支度を始めていると、すっかり帰る気満々の烏森くんが僕らのサイトにやってきた。
「おはようございます」
「おはよう。よく眠れた?」
大地がのんびり訊くと、烏森くんは「はい」といつもよりスッキリした顔で返した。
「あ、眞魚さん」
烏森くんがこちらを見つめるので、僕は大地の後ろから顔を出す。
「また遊んでくださいね。それと、あんまり思いつめずに」
「え? うん、またね」
何がなんだかわからないけど、彼の顔はスッキリしている。
昨夜、彼らはどんな結論を見出したんだろうか。その答えを知るには、まだまだ先になりそうだ。
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