美しい君との時間

目が覚めて、君を探す。

もちろん君は、昨日のまま。

同じ場所で、美しく咲く。

花が勝手に歩くわけでもなく、他の誰かが動かすわけもない。この部屋には、私1人なのだから。

あるとしたら、夢遊病か?

美しく咲く君に、口付けするかの様に、顔を何度も近付ける。

あなたの美しい香りに一瞬にして、幸福へと誘われる。あなたに嫌がられないかと、思いながら。

開いた花すべてに顔を近付け、香りを嗅ぐ。

何度も何度も顔を近付けては、香りを吸い込む。

私はもう既に、あなたの香りにヤられている。

そう思った時にふと、、。

(フェロモンか?)

言葉が脳裏を走る。


1つ、2つ、3つ。。。

(あれっ?)

また始めに戻り、

1つ、2つ、3つ。。。

(あれっ?)

(香りが違う。)

1つ、2つ、3つ。。。

(やっぱり。。。)

鼻を近付け、今度は顔を離し、

そしてまじまじと、鼻を見つめる。

(何が違う?)

(何が違う?)

(花の。。。花の香りの強さ。)

(何がどう?)

(雌しべが開いた花は、香りが薄い?)

(開き初め位の花の香りが強い?)

(雄しべが無い?のは、ほぼほぼ香りがない?)

(雄しべは落ちた?)

何度も何度も顔を近付ける私を蝋梅ロウバイ

は、なんと思うだろうか?

(ミツバチ。。。)ふと、脳裏を走った言葉に、

(ミツバチと思えば花も私を拒まないだろう。。)

(蝋梅ロウバイの受粉を手伝う?)

花が開いて。雌しべが開いて。

雄しべが出て。落ちる?

フェロモン。。。

花の香りは、受粉の為。

私は成長した蝋梅ロウバイの花の香りに引き寄せられ、香りに翻弄され、顔を何度となく近付け、花を渡り歩く。

自分をミツバチと称し、花びらが大きく開いて、

露になった花の陰部をまじまじと見ては、顔を近付ける。

途中までは、何のこともない、ありきたりの話のようで、言葉に表した途端、猥褻ワイセツなことをしてしまっていた気持ちになる。

文字に落とす前の体感を渡り歩いて際には、

「とんだピエロだ。」と、憤慨し、やや引きずり込まれた被害者意識を生み出していたにもかかわらず、文字に落とし込んでしまったら既に加害者の様である。

花は、動かないし、実を結ぶとしたら、

風、昆虫、そして人間の手による、子孫繁栄のて手助け。

対象物が、植物の花から、人間や動物を持ち出した途端に、なんだか可笑しな印象を、自分に与える。

花の開花。香り。フェロモン。受粉。

色香とは、花のコミュニケーション。

煌びやかな美しさと、芳しい香り、それによって子孫を残す。

そう言えば、職場の人が言っていたっけ。。。

「あ~。あ~。あ~。ぁ~。」

「あのお客さん。落ちた蝋梅の花拾ってんでしょ?」

「あれ。土の中に埋めると、芽が出て、苗になるのよね。。。」

「あんなもん拾って何にするのかしら?」

「あっ。捨てた。」

木の苗を土産とする売店スタッフ。職場の同僚は、お客さまの動向をジッと、目で追う。


落ちた花が芽を出す。

(花。。土に埋めてみようかな。。。)

ふと思う。

子孫繁栄。満願成就。

芽が本当に出てしまったらどうしよう。

苗に育ってしまったら。。。

その前に、本当に私は土に埋めるのか?


こんな下らない私の中の独り言を知ったら、

花はなんと答えるのか?

「私を埋めて。。。」

いや。なんかやっぱりこのやり取りは。

人間が、目にしたり言葉にしたら変でしょ?


ある流れとは、それであることで成り立ち、

それでなくなると、まったく違う流れとなる。


2025/2/5 ハタチニコニコの日。

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