学びはいつも

山の中のくじら🐳

蝋梅 ロウバイ

美しい香り

ロウの様に触ればポロリと割れて落ちそうで、まるで人が作ったかの様なプラスチックを漂わせる色彩。

無機質な花びらにそっと顔を近付ける。

匂いの存在を想像させない花びらが、強烈な花の色香いろかを放つ。

春。。。

生の花の魅力を感じていなかった私が急に香りを得ただけで、目の色を変える。

触れれば落ちそうだと揶揄やゆしていた生意気な私の心を虜にさせる。

そっと優しく包み込むかのような優しい視線でまじまじと舐めるように下から上へと視線をずらす。

そして、花に顔を近付けて、香りを嗅ぐ。

太陽の黄色いの光りにとけてしまいそうな花に向かってそっとつぶやく。

(なぜそんなに、美しく、可愛らしく、咲く?)

(誰の為にそんな美しい香りを放つ?)

(誰も君に益を与えてくれないというのに。。)

自分の発した思いを慌ててひっかくした。

出したものは、しまえぬというのに。

自分の恥ずかしい考え癖を隠そうとする。


誰のためでもない。。

蝋梅ロウバイは、自分の為に美しく咲き

    自分の為に美しい香りを放つ

誰かがお金をくれるから

誰かに褒めて貰えるから

評価して貰えるから


私が蝋梅ロウバイに問いかけた言葉の真意は、それだ。

誰かがお金をくれる訳でもないのに、

なぜそんなに美しく咲き

      美しい香りを出し

      あざやかに凛として、花開く?と。

人間だけの価値であり、

花であるロウバイに、お金の価値も、

評価も、「無」である。

今、この時このタイミングで

   出来る限りを出し尽くす。

誰のため?

自分のため。


どうして?その理由を聞くのさえ、野暮ったい。

そうあるときに、そうあるだけ。


私は、、、。なんなんだろう?

生きたくないと思い、仕事に行き。

辞めたいと思い、仕事から帰宅する。

近所の目を気にしては、カーテンも、窓も開けず、陽の光りさえも浴びず、部屋から一歩も出ずに、腐り出す。揚げ句の果てには、明るい日差しの時刻に、眠りこけてしまう。

私は花に問う。

なぜあなたは芽を出す時に芽を出せて

花を開く時には花を開かせられる?

なんの報酬も、なんの評価もなしに。

するべきことをすることが出来る?


花は、(それしかないから。。。)

(するべきことが、それしかないから。)

真っ直ぐ見つめ答えてくれているかのように、

私のために、何かをしようとはしていない。

つぼみがだんだんと開き

花びらが少しずつ大きく開き

そのうち雌しべが開き出し、

中央から雄しべがピロビロピロ~ンと、伸び出す。

行程は決まっていて、順々に、少しずつ、進んでいく。

決まった事を、決まったリズムで展開していくだけ。

(何故そんなに悩む?)

(悩むことある?)

(どうやったら悩めるのか?不思議。)

(いったい何に悩めているのかすら、分からない。)

(流れが決まっていて)

(手順が決まっていて)

(進むリズムが決まっていて)

(舞台と同じで、パッパッパッパッ。)

(次の展開がテンポ良く進んで行くだけ。)

(考えるすきも、悩むすきも、立ち止まるすきさえもない。)

(私は私であるだけで、自分の人生が展開して行く度に、感動しかない。)

(褒めらる必要も、ご褒美も、それは、二の次。私の出来ることではない。)

(私は私のするべきこと。)

(私の出来ることだけをして、そして、私は私自身に感動する。)

(出た。)(膨らんだ。)(開いた。)(伸びた。)(放った。)

(瞬間、瞬間、感動する。)

蝋梅ロウバイの花は、視線を反らすことなく、真っ直ぐ向き合う。

向くべき方向を向く。


蝋梅ロウバイは、蝋梅ロウバイの色を出し。

蝋梅ロウバイは、蝋梅ロウバイの香りを放つ。


そしてまた私は

自分と蝋梅ロウバイを交互に意識する。

私はなんであるか?

私が私でありさえすれば、

私は蝋梅ロウバイの様にスッキリと生きれるだろうと、確信した。



2025/2/5


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