第42話 12月2日・橘始黃

 ここ数日季節外れの暖かさ続き、庭の夏蜜柑が緑から黄に色づき始めた。もともとは姉が花木センターで柚子として買ってきたものだ。10年ぐらい前に初めて実を付けたときは、ずいぶん大きな柚子だなと感心したものだが…流石に秋の終わりには無知な俺でも気がついた。

 そういえば薔薇の苗を庭に植えたときも咲いたのは一度だけで、茨に接ぎ木したモノだったと姉が憤慨したこともある。雑草が生い茂る庭に薔薇が咲いても、みすぼらしさが増すような気がするし俺はどうでもよかったが。


 先月はご祝儀相場が終わったのか株、債権、為替のトリプル安が起こった。高市総理は財政規律に関して、市場の信任がどうたらこうたら答弁していたこともあり、早速野党から突っ込みが入った。

 債権価格と金利はシーソーで例えられる。前提として価格が安くなれば金利は上がるし価格が高くなると金利が下がる。

 金利が安くても買う人がいるというのは、それだけ信用されているともいえる。政府が借金を踏み倒さず利子もちゃんと支払ってくれる安全な資産。だから年金基金だの生命保険会社などの機関投資家が、低リスク資産として引き受けて保有しつづけるのだろう。

 そもそも高市総理のいう市場の信任とは誰を対象にしていたのだろう?異次元金融緩和によって、日銀が民間銀行から国債買い上げてカネを吐き出した。その結果、日銀の国債保有率は50%以上となった。となると実際に市場で売買される割合は意外と少ないのかもしれない。

 因みに海外投資家は約11.9%、144兆円保有しているそうだ。これは憶測だが積極的な売買はないと高をくくっていたら、サナエノミクスに不安を覚えて売った海外投資家がいて価格が安くなったのではないだろうか?海外投資家は高市サポーターではないし。

 債権が売られて長期金利が上がった。そうなると住宅ローンなどに影響が出てくる。フラット35(最近では50もあるそうな)の利用を検討していた人は、今後金利負担が重くなると、住宅購入に慎重になるかもしれない。


 昔、日本の借金は1500兆円あって国民一人あたり800万円を背負わされていると聞いたことがある。そして無駄使いをやめないとどんどん膨れ上がって、今の税収では返しきれなくなって子供や孫どころか子孫の代まで借金が残ると。

 小学生の頃読んだドラえもんで、のび太が作った借金のせいでセワシくんのお年玉が50円しかないという話があった。子供ながらなんて理不尽なと思った。まさか大人に成ってから、お上にそんなこといわれる日がくるとは夢にも思わなかったのだが。

 債権とは大雑把にいえば借金を取り立てる権利だ。例えばナニワ金融道の桑田はんや灰原くんが、債務者からカネを巻き上げることが出来る権限。そして国債はお上が国民からカネを巻き上げるための証文かというと全然違う。いわゆる赤字国債というのは予算立てたけどカネが足りねえから発行したモノだ。

 だけどそれ返すカネって税金でしょ?といわれたらその通り。じゃあ結局俺等が返すのと変わんねえじゃんって話になるけど、

 しかしあくまで借金の経済主体は、お上であって国民ではない。だからお上が俺等に対して、あなた達に貸したカネを返せなんていう筋合いはない。

 

 俺は債権に馴染みがない。社畜時代401Kで国債ファンドを月に2000円ぐらい買ってたがそれぐらいだ。運用成績はもちろん悪かった。デフレ時代だし金利も低かったから儲かるわけないのだが、国債は満期になったら必ず額面以上の返済があると聞いていたので買っていた。(当時は少額で国債が買えるようになったなんて知らなかったし)

 結局そのファンドは、いつの間にか商品名が変更され訳が分からなくなったので、社畜を辞めiDeCo に移行するさいに売り飛ばした。

 そういえば大昔、母方の叔母が国債買って損したと聞いたことがあった。俺のイメージでは、100万円とか200万円ぐらい買って5年か10年後ぐらいに元金と利子が返ってくるという感じだったので、なんで損するのか意味不明だった。

 

 何度もいうが債権は市場で売り買い出来る。別に満期まで待たなくても現金が欲しければ売ればいいのだ。ただし買った値段以上で売れるとは限らない。100万円で買って100万円と利子が付くのに100万円以下になるわけねえだろと思ったが、違うらしい。

 儲けとなる利子いわゆる金利は変動するのだ。お上が国債を発行するさい金利が高くなったとしよう。そうすると既に発行された低い金利の国債より、新たに発行された高い金利の国債の方がお得だ。当然そっちの方が欲しくなるよね。人が欲しいといったら俺も俺もと買われるから価値が高くなる。そして元々持ってた低金利の国債の価値が低くなってしまうのだ。

 それに今現在の100万円と将来の100万円の価値は違う。

例えばなんだけど額面100万円 年利2% 5年後償還の国債を買ったとすると

期待価値は 100万円+(100万円x0.02)x5年=110万円となる


一方、年利2% 5年後の額面100万円の国債の現在の価値はというと

100万円/[(1+0.02)x(1+0.02)x(1+0.02)x(1+0.02)x(1+0.02)]=90万5731円となる。


 計算式違うやんけインチキだろって思う。でも日本国債は儲けは単利で計算するんだけど、市場で売るときは複利で計算するのだ。将来もらえる収益を今もらったら、その価値はいくらって計算するディスカウントレートという。

 あくまで机上の計算であって債権投資するときの目安なんだけどね。俺は債権投資やったことないし、聞きかじった知識とネット情報だから間違っているかもしれないけど。

 そういう面倒くさいことが嫌なら個人向け国債というモノがあるらしい。ただ俺自身は買う気は起きない。金利がついても結局インフレ負けするのが確実だから。

 カネがたんまりあって使い途がないって人には、銀行に預けてるよりマシなんだろうけど。俺のささやかな投資額を考えるとあまりに低リスク過ぎる。


 



 







 


 

 

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