第38話 11月4日・楓蔦黄
庭の金木犀の花が散り、ハナミズキの葉が色づき始めた。団地の道沿いの銀杏はまだ落ちていない。秋が深まりつつあるなあと山を眺める。俺には紅葉狩りなどという雅な遊びは、とても似合わないが。
高市政権が誕生して2週間たった。内閣支持率は急激に回復し、日経平均株価は5万2000円を突破した。石破政権がいかに不人気だったか分かる。特に若者の支持率が高く期待が大きいそうだ。
現役世代とくに若年層の将来不安が解消され、日本の活力が戻るならそれに越したことはない。少子化の影響で現役世代の負担は増えることはあっても減ることはない。そんな未来に悲観して絶望されては困る。(俺の年金のためみんな働いてくれ。頑張って株価を上げてくれ、インフラ整備の費用を稼いでくれ、闇バイトに手を出して治安を悪くしないでくれ。とまあ俺の本音はそんなとこだ。)
移民政策によって解決出来なくもないが、余所者がムラ社会にうまく馴染んでくれる未来なんてご都合主義の極致というものだろう。
都会から田舎に移住したら軋轢がひどくてみんなで不幸になった、というエピソードはネット上に溢れている。同じ日本人ですらそうなんだから、生まれも育ちも違う異国の人に求めるのは無理がある。
となると現役世代に頑張ってもらうしかない。頑張って働いた分報酬が増えるなら節約や貯金よりも浪費にいや消費に傾く。モノの価値が上がって売上が伸びれば設備投資や利益の分配も増えるかもしれない。企業の価値が上がれば投資家もくる。それが循環すれば・・・
おそらく高市総理の経済政策はそんな方向性じゃないだろうか。アベノミクスの継承というのならば。
まだ政権発足して日が浅く高市総理は外交デビューの真っ最中である。報道によると成果が上がっているらしい。一方で女性であることを武器に媚を売ってるという批判があり、それに対する批判で本人ではなく外野が騒いでいる。
俺は、トランプ政権から防衛費のさらなる増額(対GDP比5%)を要求されずにすんでよかった、とは思う。関税は下がらなかったし5500億ドルの対米投資は結局やらされるみたいだが(そういえば総裁選前は見直すとか息巻いていたような・・・)
俺の関心は専ら物価高対策である。石破政権は、現金給付を公約にした選挙で惨敗し結果として退陣したが高市政権はどうだろうか?
現在の物価高の原因は通貨安による輸入インフレである。景気がよく需要の高まった結果ではない。仕入原価が高くて値上げするコストプッシュインフレ。消費者物価指数は前年同月比約2.8%増、生鮮食品を除く食品が約8%増だった。
所信表明演説では、国内で食料を増産し輸入依存を下げるという話をしていた。食の安全保障を高めるためにも自給率を上げることは必要なのだが、果たしてそんなに上手くいくだろうか?自給率の高い米について前政権と政策を180度方針転換し米の増産を中止。
原因不明の米価高騰の対策として前政権は、備蓄米の放出と増産を採用。今までの常識では米は余っている作物のはずだった。そして長年減反政策を進め耕作放棄地が増えた。それこそ正に農政の180度方針転換だったのだが、一周して元に戻った印象。
鈴木農水大臣は、このままだと供給過剰で価格が暴落するからという理由で増産を中止した。価格を市場に任せ、対策としてお米券配布を検討しているという。(どう配布するかは自治体の判断に任せるそうだ。)
そもそも論として政府が生産調整している段階で、価格を市場に任せているとは思えないのだが、野暮なツッコミだろうか?さらにいえばお米券は、物価高対策ではなく税金を使った需要喚起策ではないだろうか?(高値が続くと需要が減って値下げするようになる。つまり市場に任せてないよね?)
そういえば前農水大臣は備蓄米を放出したが、JA幹部は米価格に影響しなかったと批判していた。(お米券は価格を下支えしつつ利益団体にキャッシュバックも出来る。確かに米価に影響する政策かも。)
先月末の日銀の金融政策決定会合で利上げは見送られた。大雑把にいえば来年の春闘まで金利を維持するらしい。現在政策金利は0.5%である。他国に比べれば異常に安い。安い金利で借りた円を売って投資する、という円キャリーは続くからさらに円安になると思う。
輸出企業にとっては追い風なのだろう。また海外投資をしていれば円ベースでは利益増だ。かくいう俺も含み益が増大している。
中央銀行は政府から独立した機関で、金融政策は政府からの指示はない。片山財務大臣はタカ派(利上げ派)いまの円は安すぎるという考えのはずである。高市総理は過去にいま利上げするのはアホだといっており、ハト派(利下げ派)なのだろう。
ただ正直いって日銀の決定には失望した。通貨安によるコストプッシュインフレは継続する。あくまで俺個人にとってはだが気にいらない。いやらしい話だが俺はある程度の資産があり借金がない。目先の資産増加速度はインフレを上回る。だがそれだけだ。
短期間で利益を出さなければいけないプロ投資家と違って、コツコツ積立投資している身としてはなるべく長く安く仕込みたい。リーマンショックのような暴落は勘弁してほしいが、どうせ使わない(使えない)金だ。少し先の未来のために今は増えなくてもいい。
俺の生活コストは低い方だと思う。物持ちもいい方だ。それでも物価高の波を受けている。食費にいたっては津波のようだ。
そういえば半年以上チョコを食べていない。カカオが不作のせいだが去年から40%の値上げだ。60グラム程度の板チョコが200円近くして魂消た。自分へのご褒美が板チョコってあまりにもトホホな話だが、もし勤め人を続けていたらありうる。
ハロウィンが終わったばかりだが、バレンタインという菓子メーカーが定着させた悪しき風習も無くなるのではないだろうか?モテない男の僻み全開だが、このイベントにいい思い出はないしインフレ負けしてしまえと思う。
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