第37話 10月28日・霜降
先週の冷たい雨と曇り空から一転して、本日は洗濯日和になった。勤め人のころは休日にたまった洗濯物を片付けていたものだが、毎日が休みになった今ではいつでも出来る。しかし天候ばかりは如何ともしがたい。日差しがある晴天はやはり気分がいいものだ。
さて月末間近の平日は銀行引き落としやクレカ決済が集中する。数年前までは毎月給与振込があったが今は預金が減る一方である。そしてスマホにはクレジット会社から支払い方法の変更メールが頻繁にとどく。いわゆるリボ払いの勧誘だ。
一ヶ月手数料無料とか新規登録の場合ポイント還元などお得感あふれるうたい文句が続くが、金利を計算してみるととんでもなく阿漕だ。(街金かよまったく。桑田はんが思いうかぶ)
ネットを検索すれば計算式がいくらでも転がっている。知ろうとしない人はどうしようもないが、分かっていても使わざるを得ない人もいるんだろうなとも思う。
以前BNLPについてふれたが間抜けな俺は金利を見逃した。手数料が安いのはほんの一ヶ月だけだ。翌月からは100〜400%の金利がかかる。少額たとえ1万円だとしても400%の手数料って単純に4万円になる。クレカ決済でスカピンになっている人が利用したら返済出来るわけがない。
分割で払えるからと目先の浮いた金を浪費したら、何倍もの返済が必要になるサービスだ。(桑田はんどころかウシジマくんが見えてきた)それでも合法で米国で多くの人が利用している。日本では流行らないことを祈る。
無職の俺は、現在収入はないが投資はしている。ここ最近の株高によって運用成績は上がり含み益は確実に増えている。よりによって投資額が最も少ない日経平均株価が爆上げしている。社畜時代からコツコツと積立していたのだから報われたといってもいいのだが・・・
バブル崩壊後就職氷河期世代になった俺は、現実逃避のため投資家になりたいと思ったことがある。日経平均株価は右肩下がりで回復まで30年かかかった。その間に新興国株式(主に中国やベトナム)が流行っていたが結局1円も投資せず、401Kで国内株の投資信託を細々と購入していた。当時インデックスファンドは珍らしい商品だったがまったく期待していなかった。
どん底まで落ちた株価はアベノミクス相場で右肩上がりとなったが、はたして国民はそんなことを期待していたのだろうか?
事実上の通貨切り下げにより、輸出企業を中心に業績は回復し失業者は減った。モノの値段が下がり続けるデフレ状態ではなくなった。名目GDPはプラス成長に転じた。そして税収は過去最高を更新した。マクロ指標を見れば経済は回復しているのだが・・・
ただそれはいわゆるK字型回復とよばれるものかもしれない。回復どころか停滞あるいは衰退している産業もあるし、企業によって業績にバラつきがある。
あくまで俺個人の感想で客観性は皆無だが、俺を取り巻く周辺経済は確実に貧しくなっていた。勤め先が斜陽産業のせいか、商圏である地域の問題か知らないが、誰もがコストに敏感だった。目先の利益を自分の利益を最大化するため、まず費用を惜しんだ。
俺の顧客は生産の多くを海外拠点に移していた。為替レートは誰にも見通せないから当然だが円安になっても国内回帰はなかった。品質はともかく海外の人件費は非常に安く、世界的なインフレが始まっても調達国が変更になるだけだった。
要は国内で作っても値下げ圧力で儲けが出ない。おまけに人口減で国内市場が小さくなっていく。エンドユーザーが海外ならば、わざわざ国内に戻す時間とコストが勿体ない。メイド・イン・ジャパンの信仰がよほど強くなければ現地生産で十分。そう考えてもおかしくない。
「家計の金融行動に関する世論調査」という下世話な調査結果によれば、俺の年代の金融資産保有額は平均1087万円だが中央値は30万円である。金融資産ゼロの人の割合は40%にものぼる。
子供の学費や住宅ローン、自動車の維持費など大きな家計支出があるだろうし、なにより収入が伸びなかった。就職氷河期世代はまず職につくことが第一で待遇面は後回し。非正規雇用やリストラなど不穏なワードにも直面した。
20年ぐらい前、国民から大人気だった小泉総理は「格差?いいじゃないですか」とかいってたが大分広がったと思う。痛みを伴う改革って一体なんだったんだろう?
一握りのハイスペックな高収入者か、俺みたいにモテない吝嗇家でもなければ貯金なんて無理だろ。それなのに麻生大臣が老後2000万円問題をぶち上げたときは「ふざけんな」って思った人が多くいたに違いない。
結局偉い人をあてにしても1円にもならないのだ。ほんのごくまれに庶民よりの仕事をしてくれるが偶然の産物だ。最近誕生した高市政権に俺はなにも期待しない。
先週俺はドラッグストアで備蓄米を買った。その前に立ち寄ったスーパーでカルロース米を買うか悩んだが思いとどまって正解。やはり俺自身デフレマインドから解放されていない。
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