【シチュボ】真実は心霊スポットの先に

@onedora56

bad endルート

本当に行くんですか?


正式にお付き合いするって決めてから、初めてのデートですよ、分かってます?

映画とか遊園地とか水族館とか、そういうのでいいじゃないですかぁ。


ありきたり?

定番と言って下さい。心霊スポットなんかに行くより、何百倍もマシです。


いや、映画が嫌だって言ったんじゃありませんから。

ホラー映画が嫌だって言ったんです。


『死霊のだるま落とし』って、タイトルからしてデートに誘っていい映画じゃないですよね? ねっ!


……まあ、そんなB級ホラー観て微妙な空気になるぐらいなら、ドライブがてら?

少しだけ立ち寄っても、いいですけど。



ここが目当ての廃病院……。

建物は五階ぐらいあって立派ですけど、周りなんにもないですね。


駐車場も奥のほうは藪になってるし、荒れ放題って言葉が、ぴったりな感じ。

途中のコンビニが21時閉店でびっくりしましたけど、潰れてないだけ凄かったのかも。


でも、まだ明るいし、そこまで怖くはない……かな?


いいえ、車で待ってます。中になんて絶対、入りません!

手を繋いで上げるから? ……上げるから!? なんで上から目線なんです。


あっ、分かった。

心霊スポットにこだわったの、どさくさ紛れに手を繋げると思ったからだ。

めっちゃ動揺してる。図星だぁ。


もう、仕方ないなぁ。入り口までなら、一緒に行って上げます。

もちろん、手を繋いで、ね。



手のひら、少し汗かいてますね。

嫌とかじゃないんで、引っ込めなくていいですって。

緊張してるんだ、って思っただけですから。


心霊スポットが怖くて緊張してるのか、こんな可愛い子と手を繋げて緊張してるのか。

どちらかは追求しないでおいて上げます。感謝するように。ふふふっ。



ほら、入り口のとこ見て下さい。

私たち以外にも、物好きな人がいるみたいですよ?


あっ、露骨に残念そうな顔した。

有名な心霊スポットほど、簡単に二人きりにはしてくれないものです。

今後の参考にでもして下さい。ふふっ。


それにしても、人数多いですね。

大学のサークルとかかな。十人ぐらいいそうな……あれ?

駐車場に他に車、ありましたっけ?

無かった、ですよね。

別行動だとしても、話し声も聞こえないし、全員棒立ちで動かないし。


とにかく、戻りましょ。なんだか嫌な感じが……。

聞いてます? 車に戻ったほうがいいですって。


ちょ、止め……引っ張らないで!

冗談なら、すぐに止めて。


だから、行きたくないって言ってるでしょ?

本当に怒りますよ? ねえってば!


ふぇっ!? な、なんで急に抱き締め……キツ、苦しい、です。

ダメ。そんな体重かけたら、支えられな……きゃあっ!


……痛ったぁ。頭、打ったぁ。

お願い、どいて。重い、苦しいよ。息……できな、い……っ。



ううっ、頭痛い。くらくらする。

……ここ、どこ?

真っ暗だけど……走ってる車の中? だよね。


良かったぁ。

無事、だったんだよね?

押し倒されてからの記憶無いけど、あれからどうなったの?


うわ、声が割れて聞こえる。

ノイズ酷くて、なんて言ってるか分かんないや。

病院、行かないとダメかも……。


なんで、笑うの? なにがそんな、おかしいの?

頭痛いんだから、変な笑い方するの止め……くっ、ハイビーム眩しっ!


……えっ!?

嘘。


誰?

あなた誰なんですか!?


降ろして。

降ろさないと警察に電話……静かにするので、アクセル踏むの止めて下さい。

こんなスピードでぶつかったら、そっちだってタダじゃ済まないんですよ?


……ああ、これダメなやつだ。操られてる。

薬? それとも本物の怪異?


どっちでもいっか。

悪あがきするほど、生きてたいわけじゃないし。


……もう少しだけ、一緒にいたかったな。

騙しててごめんって、ずっと謝りたかったのに、それも無理なんだ。

こんなこと願える立場じゃないけど、無事でいてね。

さよな――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る