最終夜
その後は怒涛だった。
小梅の泣く声に町の人がちらほら現れ、目の前の惨事に岡っ引きを呼んでくる人や、野次馬をする人等いろんな人が集まってきた。
千秋達は奉行所に連れられ、これまでの話をした。
小梅は怯えた顔をしながら千秋に身を寄せ、千秋はそれをしっかりと受け止めていた。
その後義美の部屋から全ての罪は自分の責任という事と、千秋と団子屋の娘には巻き込んでしまって申し訳ないという内容の遺書が見つかった。
お登勢の証言から遺書を書いた文字の筆跡も義美の物で間違いないと言う事も分かり、2人は本当に巻き込まれただけという判断が下り、奉行所を出ることが出来た。
「みんな、居なくなっちゃった。」
川のほとりにしゃがみこみ、寂しげに言う小梅を千秋は抱きしめ、言った。
「悲しい気持ちを引きずってはだめ。紅一夜は誰の心にもいるって言ったでしょう?」
「そんな心があるなら、私もう心なんて、感情なんていらない・・・!」
「小梅・・・。」
悲しみに浸る小梅を抱き締めることしか出来ない千秋の前を3人の子どもが駆けていく。
「待ってよ〜!」
「早くしないと寺子屋遅れるよ!」
「だって2人が足速いから〜!」
1人の女の子が2人の女の子のうしろを追いつけるように走っていたが、石に足を取られて転んでしまった。
前を走っていた2人が慌てて転んだ子に駆け寄った。
「葉子!大丈夫?」
「菊ちゃん・・・大丈夫。」
「全く、いつまで経ってもドジなんだから。ほら、立てる?」
「うん・・・ありがとう、百合恵ちゃん。」
「もう、気をつけないと。手繋いでいこう?」
「うん!」
転んだ子は嬉しそうに2人の手を繋ぎ、また3人は走っていった。
小梅はその光景にふと昔の自分と千秋と亡くなった穂波の姿を重ねていた。
「私、穂波の事も大好きだった。それは本当だよ。」
「分かってるわ。穂波ちゃんもきっと、分かってた。」
「・・・私、負けない。穂波の分まで幸せに生きていく。」
「小梅・・・小梅なら、大丈夫よ。」
決意した小梅の顔を見て、千秋は安心したように微笑んだ。
2人の間を花びらがはらはらと舞っていった。
愛しき満月の夜に 完
愛しき満月の夜に 舞季 @iruma0703
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