第6夜

小梅にとって穂波は妹のような存在だった。

幼い頃に母を病で亡くし、父である善三と2人で団子屋をしていた時、ある朝店先に居たのは穂波だった。

破れた浴衣に急いで走って来たであろう土まみれの足。助けないという手はなかった。


穂波が唇を離すと、小梅はびっくりした様に見つめている。

「私を拾ってくれた時から。小梅は今と変わらない笑顔で私を見つめて、手を差し伸べてくれたあの頃から。あれから、ずっと近くで小梅の事を見てきた。私はあの時から同じ気持ちを抱えて生きてきた。」

穂波は小梅の胸に頬を寄せ、愛しそうに手を絡めた。


「ずっと好きだった。今も。小梅の事が好きだよ。

「穂波ちゃん・・・。」

小梅は痛みを抑えながらゆっくりと起き上がり、穂波を制した。

「嬉しいよ、穂波ちゃんの気持ち。すごく嬉しい。でも私・・・。」

言いにくそうに言う小梅にくすくすと穂波が笑った。

「分かってるよ。千秋さんには敵わないって。」

穂波に千秋の事を言われ、バレていたのかと驚きと焦りを見せる小梅を見て、穂波はますます笑いが止まらなかった。

「あんなに千秋さんが来たら、幸せそうな顔するんだもん。バレバレだよ。」

「穂波ちゃんには敵わないな。」

「でも私、諦めてないから。小梅の事1番好きだって、大切にしたいって思ってる。」

真剣な眼差しで小梅を見ると、穂波はいつものように笑みを浮かべた。

「ほら、お水。何か食べれそう? 」

「うん、お腹空いちゃった。」

お水を飲み干すと、小梅は肩の痛みに顔を歪めた。

「おじや作って薬飲まないとね。」

穂波は小梅をゆっくり布団に寝かせると、空になった水を乗せてた茶碗の盆を取ると、戸を開けた。

「あと、もう少しだったのに。」

そう呟いた穂波の声は、寝息を立てていた小梅には届かなかった。





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