太陽と幽霊

猫蕗

第一話

毎日朝起きるのが面倒くさかった。そして外に出たくもなかった。

というのも私は髪が長く、その上学生であるため髪を結ばなくてはいけない。

生来の怠け者である私は髪を結ばずに外に出ることもしばしばだ。


そしてついたあだ名が"幽霊"である。

腰まで届く長髪をおろした姿が、まるで幽霊のように写ったのだろう。

そんな私も今では高校3年生である。

案外あっさり――そして静かに高校生活を終えるところである。


しかしその予想はあっさりと裏切られた。

同じクラスになった彼女の存在である。


"木下あかり"


彼女はいつも笑っている。まるで太陽のようだ。

そしてその笑みは私にも向けられた。


そして私はその笑顔の虜となった。

怠け者はその日に卒業し、髪を結び、そしておしゃれすらもするようになった。


私は彼女の隣に並びたかったのだ。


「木下さんっておしゃれだよね」


「彼氏とかいるの?」


我ながらうざったい程に話しかけた。

それでも彼女は


「そんなことないよ」


「考えたことないなぁ」


と返事をしてくれている。


彼女が月なら、私はすっぽんである。

しかしそれでも憧れは止められなかった。

そしてある日、彼女が探偵が好きだと知った。

そのことを聞いた私はあることを考えた。


そうだ、一緒に探偵をしよう。


おかしな話である。怠け者であったはずの私がこうも面倒な――おそらくこの世で一番面倒な、探偵という職業に手を出したのである。


早速彼女を誘った。


「ねえ、一緒に探偵しない?」


驚いたであろう。彼女からしてみれば、いきなり変なクラスメイトが変なことを行ってきたのである。

私だったらまず断る。


しかし彼女はいつもの笑みを浮かべると、こういった。


「いいよ」、と


その時の心情は言葉で表せないほど大きな感情であった。


そして私たちの"探偵ごっこ"が始まった。

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