第2話 異世界サバイバル生活?
5.カフからの餞別
目を覚ますと俺は生きていた、昨日狼達に襲われたのは夢だったのか?体を見渡すが怪我がない、しかし服はボロボロだったので昨日のことは確かに現実だったのだ。
《おはようございます優様》
そんな声が聞こえ、声がする方に目を向けるとそこにはカフから貰ったナイフが俺の目の前で浮いていた。
「カフか?」
《はい、カフ様に創造していただいた人工知能搭載ナイフ型ゴーレムです。》
マジかよ、カフ最高かよ!
俺は思わず泣きそうになったが、ここに飛ばしてきたのもあいつだったなと思い涙は引っ込んだ。
「えっと、ナイフちゃん?の名前とか色々教えて欲しいんだけど、女性…であってる?」
ナイフから発せられる声が可愛らしい事で俺は女性と思いこんだがナイフに性別なんてないだろう。
《私は女性型の声で発声しますが性別はないかと、カフ様曰く『冒険のパートナーは美少女だよな!』と》
マジかよ、カフ最高だよ!!
《カフ様から優様の生命危機による自立行動の許可、優様のサポートを任せられており、周辺探査・地図作成・物質操作・火炎魔法・水氷魔法・雷電魔法・烈風魔法・鉱石魔法・無属性魔法・回復魔法・補助魔法を授けられています。》
おぉ!マジか、一気にヌルゲーになった気がするが魔法を使えるのは良い事だ!!
《昨晩瀕死になっていた優様を回復魔法で回復した後、攻撃魔法にて狼達を追い払いましたがカフ様にはなるべく優様のサポートに徹するように仰せられていますのでご了承ください。》
「分かった、むしろ全然良い!昨日は助けてくれてありがとう。それで、えっと…名前は付けていいのか?」
《はい、名前は優様から付けていただく様カフ様より仰せられています。》
うーん、困った。悲しいが俺にはネーミングセンスが無い、だが名前がないと困るし非常に困った。
(ナイフなんてFPSで聞いたことがあるスペツナズナイフ位しか知らないぞ…スペ…ツナ…ナズ…あっ)
「ナズナってどうだ?スペツナズナイフの間を取ってみたんだが…花にもナズナってあったし女性ぽくないか?」
《別に私はスペツナズナイフでは無いのですが…それとナズナは花ではなく草の名称ですね。》
おぉ!流石人工知能さん、博識だ。
「草か…駄目だったか?」
《いえ、確かに女性らしくて可愛らしいと思います。ありがとうございます優様》
良かった気に入って貰ったみたいだ。
《それでは優様、私を手に持ち“能力値閲覧"と唱えて下さい。》
お!自分のステータスが見れるありきたりな魔法きた!!
「能力値閲覧!」
【
Lv.3
体力:20
筋力:10
素早さ:10
知力:20
器用さ:10
魔力:0
※軽度の鬱症状による状態異常(全能力−5)
はぇ〜平均が分からないけど、まぁ現代人だしこんなもんだろうな、あとやっぱ魔力は無いか、残念。で…最後の欄だが…
「え?俺って鬱なの??」
《そうみたいですね、この“能力値閲覧"は補助魔法による優様の身体を解析し、生物の平均能力値から出した数値と肉体的・精神的な身体の異常を算出し分かりやすく表示させたものですので。》
「へぇ〜ニート生活してからいつ死んでも良いやとは思ってたけど鬱だったのかぁ、実感無いな…」
自覚が無かった俺は思わずショックを受けた。
《それと全魔法共通ですが魔法使用時に発声はいりません、心の中で唱えるだけで発動できます。》
まさかの無詠唱発動可能!一々口に出すの恥ずかしいから助かるな、え?なら何でさっき唱えさせたの??
《カフ様曰く『異世界物の定番』というものらしいです。》
「あぁ、そう…ていうか今声に出てた?心読めるの?」
《顔に出ていましたので。》
流石ナズナさん、さすナさんだ。
《優様は魔力が無い為魔法は使えませんが、私の内包する魔力と授けられた魔法を用いる事で私を通して魔法を放つ事が出来ます。能力値閲覧は補助魔法の応用です、他にも補助魔法の1つで鑑定があります。》
説明が丁寧かつ有能すぎて、もうナズナさん手放せないな。そう思いつつ俺は鑑定でナズナの性能を調べた。
【人工知能搭載ナイフ型ゴーレム(ナズナ)】
等級:秘宝
耐久力:10000/10000
攻撃力:10〜10000
魔力:10000/10000
スキル: 周辺探査(Ⅸ)・地図作成(Ⅸ)
物質操作(Ⅸ)
火炎魔法(Ⅸ)・水氷魔法(Ⅸ)・雷電魔法(Ⅸ)
烈風魔法(Ⅸ)・鉱石魔法(Ⅸ)・無属性魔法(Ⅸ)
回復魔法(Ⅸ)・補助魔法(Ⅸ)・自動修復(Ⅸ)
自動魔力回復(Ⅸ)
見た目ただのナイフなのに秘宝なんだ…え?数値5桁ってヤバくね?これヤバイよな??魔法付きすぎだし…あとスキルの後ろのマーク何?ローマ数字の9か?自動修復とか自動魔力回復って実質耐久力と魔力無限じゃん、カフのやつさらっとなんてもんくれたんだ、素人が持っていいものじゃないでしょ…
「ナズナ、お前の等級とか、スキルの後ろに付いてるⅨって数字は何なんだ?」
《等級は基本的に下から『粗悪・普通・高級・希少・異質・固有・逸話・遺産・伝説・秘宝』があり、内包する魔力が100万を越えると“夢幻"1000万で“神話"1億で“世界級”になります。更にその上に『天体・銀河・宇宙』級がありますが今は説明を省きます。》
《そして魔法には9段階あり1〜3が初級、4〜6が中級、7〜9が上級という認識で大丈夫です。9の上もありますが基本的に9位階魔法を使える人が2人以上で扱う儀式魔法ですので説明は省きます。》
「魔法は9段階で分かりやすいけど武具の等級はちょっとややこしいな…」
そう言いつつ小説でよく見る等級はすんなり頭に入ってくる
《それでは説明もそこそこに早速実戦を始めましょう。周辺探査スキルによるとここから南東5km先に集団戦闘が行われています。》
ナズナがそう言うと目の前にホログラムの様に地図が出てきた、未知の土地に放り出されて改めて思うけど地図って便利だなぁ。
「その集団戦闘に行って何するんだ?漁夫の利か?」
《いいえ、漁夫の利とはいえ戦闘の素人である優様が奇襲をしたとしても返り討ちに合うだけでしょう。ですので気付かれないよう近づきこの世界の戦闘水準の確認、優様は戦いの基礎を学べる機会になるのではないかと。》
なるほどな一石二鳥になるし、さすナさんだ。
「了解、早速向かってみよう!」
そう言うと俺は戦闘が行われている場所へ向かった。
✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂
6.初めての遭遇、初めての戦闘
キィン!キキィン!!
集団戦闘が行われている場所へ近づくと金属同士がぶつかり合う剣戟の音が聞こえる。
「あれは…人と…ゴブリン!?」
初めて異世界らしい生き物を見て興奮する。一目でゴブリンと分かる様な小さく不健康な体、しかし体の色は緑ではなく殆ど人と同じような土色だった。
《そうですね、人種と亜人種で間違いないと思います。人の方は前衛2人に弓使い1人と魔法使い1人、基本的なパーティ構成だと思います。》
確かにいかにもって感じがするな
「んでゴブリンが5体、錆びれた包丁や棍棒を持ってて、こっちもいかにもって感じだな。」
《いいえ、茂みにゴブリンアーチャーが2体隠れていますので計7体です。》
マジか全然気付かなかった、悔しいな。
「ナズナ、俺も周辺探査使えるか?」
《勿論です、周辺探査と補助魔法の鑑定を併用する事で遠くの生物も鑑定する事が出来ます。》
なるほどな、では早速
『周辺探査&鑑定!』
【ガリウス】
Lv.10:戦士
体力:35
筋力:45
素早さ:20
知力:20
器用さ:15
魔力:10
スキル:格闘術(Ⅲ)・剣術(Ⅲ)・弓術(Ⅰ)
【ユリウス】
Lv.9:密偵
体力:25
筋力:20
素早さ:35
知力:30
器用さ:25
魔力:20
スキル:罠師(Ⅲ)・短剣術(Ⅱ)・土魔法(Ⅰ)・格闘術(Ⅰ)
【サーシャ】
Lv.8:弓使い
体力:20
筋力:20
素早さ:25
知力:25
器用さ:30
魔力:20
スキル:弓術(Ⅲ)・周辺探査(Ⅲ)・風魔法(Ⅱ)・気配察知(Ⅱ)
【ミレーヌ】
Lv.12:魔法使い
体力:20
筋力:20
素早さ:20
知力:35
器用さ:30
魔力:40
スキル:火魔法(Ⅲ)・水魔法(Ⅲ)・風魔法(Ⅱ)・回復魔法(Ⅱ)・補助魔法(Ⅱ)
【ゴブリン】
Lv.7:ファイター
体力:25
筋力:25
素早さ:15
知力:5
器用さ:5
魔力:0
スキル:強殴打(Ⅱ)・強斬撃(Ⅱ)
【ゴブリン】
Lv.9:アーチャー
体力:25
筋力:25
素早さ:20
知力:5
器用さ:10
魔力:0
スキル:強射出(Ⅱ)・強蹴り(Ⅰ)
おぉー!4人とゴブリン達の居場所がはっきり分かるようなったし能力値も見える!!ゴブリンの方は複数いるけど大体±1〜2しか能力値は変わらないな、それにしても…
「ナズナ、剣術とかと、強斬撃って何が違うんだ?」
《系列は同じですが数が違います、同じ系列の技が2つ以上になると併合され術として纏められます。今の間に優様、失礼します。》
なるほどなぁ〜と聞いているとナズナが手元から離れ魔法と使った
《
ナズナが俺に向けて4つ位魔法放ってきた
「ナズナ?俺に何使ったの??」
《身の安全を確保する為に蘇生魔法を4つ程かけました、ご安心ください。》
マジ怖かった、何するか言って欲しかったわ…
「蘇生魔法だけ?なんか能力値上げるバフとかないの?」
《ありますが、多少能力値が上がった所で殺される時に中途半端に生き長らえて苦しいだけかと。それとバフはレベルが上がった場合に身体能力の向上が感じにくくなるのでオススメ致しません。》
確かに、無駄に苦しめられるのも嫌だし強くなったって感じにくいのも嫌だな…
「だったらせめて痛覚を感じにくくなる魔法とか怖さに耐性付ける魔法とかかけて欲しいな」
《了解しました、
「ありがと、にしても何で3なの?3までしかないのか?あと最後の魔法はなに?」
《いえ、勿論各魔法は9段階までありますが強力過ぎるため優様の成長に繋がらないかと。そして最後の
なるほど俺の為ね、あと何か最後軽くディスられて無かった?意味が分からなかったけど悪口っぽかった気が…帰ったら調べておこう。にしても…
「後衛の女の子達可愛いなぁ、やっぱ漁夫の利で炎魔法とか使って襲うか?」
と思わずゲスい発言を漏らす。
《優様…なるべく優様の意志を尊重しますがお勧めは致しません、優様は倫理観が無いのですか?》
ゴーレムに引かれてしまった…軽い冗談のつもりだったが。
「ちょっとした冗談だよ、勿論倫理観はちゃんとあるよ。自分がされて嫌な事はしないし、襲いたくてもちゃんと我慢出来る。」
自制心が高いなんて俺は偉いんだ。
《襲いたいのは本心なのですね…》
「ナズナ何か言った?」
《いえ、何も。》
ナズナが独り言呟いてたけど聞き取れなかったので気にしない、そんな雑談をしているとゴブリンと冒険者達の戦闘が終わりそうだった。
「ゴブリンファイターはあらかた片付いたみたいだな、あっゴブリンアーチャーがガリウスに矢を放ったぞ。」
ナズナの周辺探査スキルのおかげでゴブリンと冒険者達の動きが丸わかりになってるおかけで戦況が冷静に判断できる。ゴブリンアーチャーが放った矢はガリウスに当たらず半透明の障壁の様な物に妨げられた、魔法使いのスキルだろう。
攻撃が防がれたゴブリン達が驚いている間に弓使いがゴブリンを仕留めた。多分弓使いの周辺探査スキルで最初から隠れている事がバレていたのだろう。
「苦もなく勝ったみたいだな、それでも浮かれずに周辺を警戒してて流石プロって感じだな。」
ゴブリンに勝った4人組は周りを警戒しつつ何かを話し合ってるみたいだ、そして話し合いが終わると…
ヒュン、ズドン!
俺の隠れていた木に矢が刺さった、距離が離れていると油断していたが弓使いは周辺探査スキルがあるのでバレていたのだろう。うっかりしていた
「ЪШХУЭ!ЖРЙЗКИК!!」
何か話しているみたいだが聞き取れなかった、異世界でも言葉が伝わるなんてご都合展開は無いみたいだ。
「困ったな、出ていこうにも言語が分からないなら会話にならないし、でも出ていかない訳にもいかないし、そもそもまともに人と話せるか自信が無い…」
ここでまた1つ異世界物の気になる点が出てきた、転移前や転生前に陰キャやオタクだったやつが異世界に来てあんなにハキハキ話せるのはおかしくないか。ハキハキ話せるなら元の世界でも陽キャに混じってそうだよな…とかどうでもいい事を考えているとナズナが提案してきた。
《優様、補助魔法で言語翻訳がありますので問題ないかと。》
ナズナほんと有能、あと何気に補助魔法も優秀だな異世界に必須だわ。
「ナズナありがと助かる、
「ちょっと聞こえてるでしょ!そこにいるのは分かってるんだから早く出てきなさい!!」
おぉ!弓使いは言葉が理解出来る!ちょっと感動…してる場合じゃないな、覚悟を決めるか。
両手を挙げながら俺は冒険者達の前に姿を現した。
「あなた何者?どうして私達を偵察していたの?」
「すみません、自分は…えーっと旅人なんですが他人の戦闘なんて滅多に見る機会が無いですし護身の参考になるかなと思い観察させてもらってました。」
どうだろう、何者か答えるのは詰まってしまったがスラスラ話せた方ではないだろうか、話すのは得意という訳でも無いが苦手でも無い、普通に受け答え位は出来るレベルだ。
すると弓使いは魔法使いの方を振り向き何かを促した。
「…嘘は言っていない、能力値も普通…いや旅人にしては低すぎるくらい。」
「そうね、敵意は感じないし本当にたまたま遭遇した感じね。」
良かった、なんとか納得してもらえたようだ。こちらの疑いが晴れると
戦士のガリウスと密偵のユリウスがゴブリンの耳をナイフで切りながら話しかけてきた。
「驚かせて悪かったな、俺はガリウス。こっちが密偵のユリウスで弓使いがサーシャ、魔法使いがミレーヌだ。」
「俺はひn…優です、マサルって呼んで下さい。それはゴブリンの討伐証明として耳を切っているの?」
「あぁそうだ、ゴブリンは素材に出来る所が無いからな。とはいえ人間に害をなすから討伐すると報酬が貰えるんだ。」
はぇ〜よくある話だ。作業みたいに耳切ってるけど結構あれもグロいよな…そんな事を考えていると
「マサル、あなたレベルが低いのによく森の中で生き延びれているね隠れるのが得意なの?」
魔法使いに質問されてしまった、そりゃそうだよな多分村人レベルの弱さなのに森の中で生きているんだもんな。
「そうですね、なるべく生き物と出会わないように気を付けていました。」
「マサル〜敬語なんて使わなくてもいいわよ、私達冒険者なんだし寧ろむず痒いわ」
弓使いのサーシャがラフに話してくれる
「ありがとサーシャ、でも人と話す時は基本誰にでも敬語を使ってるから自分としてはこっちの方が楽なんですけどね。」
これは本当だ、寧ろ話す人毎に話し方を変える方がめんどくさい。
「そうなの、ごめんね変な事言って。」
「いやいや、むしろ気を使ってくれてありがと。」
そんな会話をしていると
「おーい、討伐証明物は取り終えたから帰るぞー」
ガリウスが呼びかけてくる
「街に戻るんですか?」
「あぁ、丁度依頼終わりの帰路でゴブリンと出会ったからなマサルも一緒に行くか?」
渡りに船とはこの事だ、俺は勿論頷いた。
「お願いします!」
そうして俺は冒険者4人組と一緒に街に行く事になった。
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