第4話 Valentineの余韻
電車の中、俺と華乃は手を繋いだまま座っていた。
いつもなら、電車の揺れに合わせて適当にスマホをいじったり、外の景色を眺めたりしてるはずなのに、今日は違う。
心臓の鼓動がやたらとうるさい。繋いだ手の温もりが、まだ信じられないくらいに心地よかった。
「……なんか、帰りたくないね。」
華乃がぽつりと呟いた。
「確かに。」
俺も同じ気持ちだった。
「じゃあさ。」
「ん?」
華乃は俺の顔をちらりと見上げる。
「もうちょっとだけ、一緒に歩かない?」
駅から家までの道はそんなに長くない。でも、今日くらいは遠回りしてもいい気がした。
「いいよ。ちょっとだけな。」
「ふふっ、やった。」
電車がホームに滑り込み、ドアが開く。俺たちは手を繋いだまま立ち上がった。
改札を抜け、夜の空気に触れると、ほんのり冷たい風が頬を撫でた。でも、それ以上に——華乃の手の温もりが、心まであたたかくしてくれていた。
「……ねぇ、輝人。」
「ん?」
「チョコの感想、ちゃんと聞かせてね?」
「もちろん。」
華乃は微笑みながら、俺の袖をくいっと引っ張った。
「じゃあ、もうちょっとだけ、このまま一緒にいよ?」
俺は照れ隠しに小さく笑って、ぎゅっと手を握り返した。
「……仕方ないな。」
バレンタインの余韻は、まだ終わりそうになかった。
Valentineの帰り道 輝人 @nog1_love
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