羽化

　いつからか、ずっと私はさなぎのまま死ぬのだと思っていた。

　勉強も人間関係も恋愛もできるところまでやりつくして、疲れて何もしたくなかった。そのまま就職して、お金を生活できる分だけ稼いで無難に生きていこうと思っていた。大学卒業から5年が経とうとしていた。周りにはちらほら結婚したり子どもが産まれたりしていて、私には縁がないものだと思っていた。

　新年。少し心を入れ替えてみる。新しい年は最初だけかもしれないけれど、何かが変えられそうな気がした。

　私には、他人も未来も変えられないけれど、自分は少しは変えることができるかもしれない。

　1年の計画を立てて、楽しみなことをところどころに散りばめて。仕事も少し新しいことができるように目標を立ててみた。他人にはほんの少しに見えるかもしれないけれど、私にとっては大きな1歩。目に見える形にするだけで、何かが積み重ねていけそうな気がした。

　ここが私の出発点。

　静かに背中を伸ばして、透明な羽に期待をのせて、明日へ羽ばたいてみよう。