僕のカッターナイフ

えあ

第1話

社会に出ると、理不尽に詰められることが多くなる。


それでも謝れないと食い扶持は稼げない。


筋トレをする人は、

相手より物理的に強くなることで、

『いつでも⚪︎してやれるからな?』

と思うでメンタルを保ってるらしい。


じゃあ、

運動もできなくて、

身体も小さくて、

頭も悪くて、

鈍臭くて、

ウツで、

ハッタツショウガイで、

いつも笑われてばっかりの僕は、

何を拠り所にして、この社会をやり過ごせばいいのだろうか?


その答えを見つけた。


僕たちには、家族も恋人も、大切な人もない。

愛してくれる親だっていなかった。

逆に考えると、捨てるものがないのだ。


無敵の人間なんだ。

今すぐに狂ってこの会社に火炎瓶を投げたっていい。

どうせこんな人生捨てたも同然だから。


だから、僕は詰められてる時は心の中で発狂するようにしている。


僕は直接相手を⚪︎すなんて妄想はしない。

そんなの、僕の小さな体格じゃ取り押さえられて終わりだし、

こんなに苦しい思いをさせてきたのに、〇んで逃げれるなんて、羨ましすぎるからだ。


だから、誰かに詰められた時はそいつの大切な人を⚪︎す妄想をする。


具体的には、昼休みの時間、執務室の中心で、順調な人生を生きていることをこちらにマウントするかのごとく、

にやけながら見せびらかしてきた、

先輩のスマートフォンの待受画面に写っている、

小さなあの子を思い浮かべる。


先輩が、大切に大切に育てている小さな娘さん。

僕に責任を押し付けて、詰って、病ませたお金で、大切に大切に育てられた二歳のお嬢さん。


その首を小さく捻る。

このくらいなら体育の授業でいつも晒し者にされてた僕にだってできる。


いや、〇しなんて興味はない。

僕がみたいのは大切なものを奪われた先輩の顔なんだ。

その絶望した表情を心の中で見ながら、

「よく弱味〈たいせつなもの〉を晒して他人に攻撃できますね」

って冷笑してやる。


これが、僕が、心の安寧のためにしている妄想だ


大切なものを持ってる人間は弱い、僕より弱い。

その点で僕には大切なものは何一つないから強いんだ。


自分の命だって大切じゃないんだから。


だから、僕は毎日会社にカッターナイフを持って行っている。

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僕のカッターナイフ えあ @kuins_air__

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