ひとつのこと

 翌日の週刊文冬には、トップアイドルのスキャンダル発覚という見出しが書かれていた。驚くこともなくそれは私達のことで、いまは事務所の一室で瀬奈と私と社長の黒須真希の三人で事実確認という名の尋問を受けていた。


 はずだったのに、真希社長は怒っている様子もなく瀬奈に至っては笑顔でいままでの私達の事を話していた。


「よかったな、瀬奈。夢も叶って、パートナーまで見つかって」


 真希社長までこんなことを言い出している。事務所までの私の気持ちを返してほしくなってきた。


 ジト目で瀬奈を見ていると、真希社長が少しだけ声のトーンを変えた。


「それで、これからの活動だが二人はどうしたい? 私は今回の件で瀬奈にも佐奈にも辞めてもらうつもりもなければサポートしたいとも考えている。あの記者には消えてもらうとして……」


 話の途中だけど私は時々思うことがある。物騒すぎないこの人!? 以前にも他の事務所のアイドルが瀬奈の邪魔をしてきたときもこんなことを言っていた。そして気づけばいなくなっていた。


「……いるのか? 佐奈」


「っ! はい!」


 少し上擦ってしまった。


「佐奈らしいな。瀬奈は佐奈と一緒なら何でもいいと言っているが? 時には年上らしく決めてくれ、尊重するから」


 真希社長は本当にサポートしてくれるらしい。だからこそ、信頼できる。


「瀬奈と一緒にlune de mielに行きたいです」


 それを聞いた真希社長は優しく微笑んでいた。

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