幼馴染とボクと幼馴染 - 6
ふぅ……なんともまあ、眼福だったなぁ。
額縁を見せてもらっただけなのに、とんでもない充足感が得られた。
見ただけでこれだとしたら、実際に手に入れてしまう一体どうなるのか?
そんなことを考えながら歩く帰り道――。
「あれ?」
不意に足を止めたのは、珍しい姿が目に入ったから。
凛花だ……。何をしているんだ?
大学の帰りなのだと思うが、それならこんな道を通るハズがない。
迷子か? いやそんな、千穂じゃないんだから……。
声を掛けたほうが良いのだろうか。
「おい、凛花」
「――っ……! ビックリしたぁ……た、たっくんかー……」
随分な驚きようだな。
心なしか怯えたように瞳が震えている気がするし……どうしたんだ?
そんなに怖がられるようなことをした覚えは無いのだが――。
「ごめんなさいっ! お願い、ちょっと黙って付いてきて!」
「え、お、おいっ、いきなり何をするんだよ――!」
急に腕を掴まれて引っ張られる。
どこに連れていかれるのかと思ったら、すぐそばにある小さな公園だった。
それにしてはかなり余計な遠回りをさせられたが……。
一体凛花は何がしたいのか。
「はぁ……よかった……。もういないみたい……」
「なあ、なんの話なんだ? 教えてくれよ」
人を巻き込んでおいて、一人勝手に納得しないでほしい。
「ああ……ごめんなさい、たっくん……。ちゃんと説明するわ……」
そう言って凛花は呼吸を整えた。
それからゆっくりと開かれる唇は、どこか重々しい感じだ。
「さっきまでね……私、後を付けられていたの」
「付けられてた? 誰に?」
「同じ大学の人よ。私と同じ学年の」
「それって、男なのか?」
「ええ……」
だんだんと話が見えてきたぞ。
さっきのはその男を撒くために、わざと遠回りしていたのか。
「最初のほうはね、飲み会とかに誘われる程度だったの。それが断っているうちに、どんどんしつこくなっていって……」
どうやらソイツは随分と凛花にご執心らしい。
「あんまりにもしつこいから、『彼氏がいるから』って言ったのよ。そしたら余計にしつこくなっちゃって……。後を付けられるのも、今日が初めてじゃないわ」
「なんて迷惑なヤツなんだ……。というか、凛花に彼氏がいたなんて初耳だぞ」
「違うわよ! 嘘に決まってるじゃないっ! はぁ……多分、それが勘づかれちゃてるのね……」
本当にいるかどうか確かめるために付きまとっているってことなんだろうか。
なんにせよ、大事になる前にしっかり対処しておくべきだ。
「だったら然るべきところに相談したほうが良いんじゃないか? 警察とか」
「無理よ。直接的な被害が出てるわけじゃないもの。警察なんて、きっと取り合ってくれないわ」
「大学の事務局は? 注意くらいしてくれるだろ」
「それこそ注意だけで終わってしまうわよ。それで、もし逆恨みなんてされてしまったら、怖いじゃない……」
そう言われると……どうしようもないな。
困ったことになったぞ。
凛花には普段から色々と世話になっているし、長い付き合いで――ほどんど家族みたいなものだ。
できる限り力になってやりたいと思っているが……。
「どうしたものかぁ……。ストーカーを処すためなら、ボクだってなんでもするんだが」
「ねえ、たっくん? 今……なんでもするって言った?」
「ん……? ああ。何かできることがあるのか?」
「実はひとつ、考えがあって――」
なんだ、ちゃんと策があるんだな。
それならそうと、早く言ってくれればいいじゃないか。
「たっくんにね……私の、彼氏のフリをしてほしいの!」
……え……?
「ええええぇ――っ!?」
昨日の千穂といい、どうして幼馴染とそういうことになってしまうんだ……。
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