誰がドラえもんを殺したのか?

@Nya-Rai_31124

第1話

  《第3棟第307号室の長期居住者「F200722812」さんに異常が発生しました。大至急、《端末》を起動ください。繰り返します、区画4A第307号室の長期居住者「F200722812」さんに異常が発生しました。大至急、《端末》を起動ください……》


 久々に取った長期休暇が明けて。二週間振りに職場の管理室に戻った僕のことを出迎えてくれたのは、柔らかな笑みを浮かべた上司でも、お土産をせがむ後輩でもなく、《端末》が奏でる人工音声だった。……別に、そういう人間味のある出迎えを期待していた訳ではなかったけど。というか、この団地の管理人は僕一人だけなのだけど。でも、やっぱりちょっと寂しいかな。


 は―っ、と、深々とため息をついてから。デスクに置きっぱなしにしていた《端末》を右腕に装着し、電源を起動する。端末底部のバイオセンサーが僕の静脈パターンを認証、起動。46mmに満たない薄型の液晶画面が青白く点灯し、虚空に薄青色の立体光学映像が展開される。アニメ調で描かれた若い女の子のアバターが、僕へとスクリーン越しに無機質に微笑用字ほほ笑みかけていた。


 うん、いつも通り。退屈で下らない、職場での一日が始まる。

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