第7話

 ヨツバさんは食品工場で働いているそうだ。お仕事が終わる夕方頃にやってきて、コーヒーを飲みながらおれとおしゃべりをする。


「この街には慣れた?」

「うーん……まだ慣れないな。都会は戸惑うことが多い」


 おれも執行人になる前は田舎に住んでいたから、その気持ちはわかる。都会は慣れるまで、とても目まぐるしい。いろんなものに溢れていて、なにを選べばいいのかわからなくなる。

 だけど選べてしまえば、なんてことはない、と思う。


「でも……あんたがここでうまいコーヒーとアイスを売ってくれるから、なんとか頑張ろうって思えるよ」


 ヨツバさんは舌先でアイスをすくって、小さく笑った。


「へへ、そう? じゃあ頑張って売っちゃお。たくさん食べにきて」


 ヨツバさんはワッフルコーンをばりばりと噛み砕いて、親指で口の端を拭う。コーヒーを飲み干して立ち去った。

 お仕事って大変だよね。だけどヨツバさんがこの都会で一生懸命頑張っているのを見ていたら、おれも負けてられないなって思うよ。


 ああ、早くおれが求める魔女に出会えたらいいのに。

 待ち続けるのはつらいときもあるけれど、頑張っている人が目の前にいるのだから弱音を吐くなんて、かっこ悪いことはしたくない。


 店じまいの準備をしていたら、散歩から戻ってきたモリスケが頭の上に止まってキィと鳴く。首には手紙が巻きついていた。

 さて、ワゴンを置いて身支度を整えたら出かけよう。もう日が沈みかけて、空には一番星が輝いている。急がなくちゃ。


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