魔王少女 ~わたしは魔王だったんだ~

サガミ

第1話 プロローグ

 魔法少女にあこがれることは確かにあった。

 どこからともなく現れた妖精にキラキラなステッキを授けられ、かわいいコスチュームに身を包む。不思議な力を使い、かっこいい技を出して正義のヒーローみたく悪を蹴散らす。

 目を輝かせながらテレビにかじりついた。

 私も魔法が使えたら……。学校はテーマパークに、宿題なんかゴミ箱の中に、毎日が日曜日に……、そんな浅はかなことを思ったりもした。

 だがそんなものは現実にはあり得ないことで。テレビの中だけのことで。そんな面白いことなんてなくてもこの世界はすでに楽しいもので。

 だからそれでよかった。

 笑い合い、バカなことをし、愚痴を言い合い、おいしいものを食べ、人と接し、勉強をし、将来のことに頭を悩ませる。そんな普通なことを当たり前のようにしていたかった。

 刺激なんてなくても十分に楽しい日々だった。障害があっても十分に楽しい日々だった。

戦いに生など求めたくなかった。血なんて欲する必要もなかった。

 人外な力なんて、強さなんていらなかったのに。

 私なんて生まれてこなければ、

 私がこの世にいる世界が創られなければ、

 私がこの世界を創らなければ、

 こんなことにはならなかったのに――

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