第9話 繰り返す一日

 深い森に閉ざされた黒曜村こくようむら。その村のはずれにそびえ立つ黒曜の古木は、ただの木ではない。それは、幾百年もの間、村に禍々しい呪いを降り注ぎ続けてきた、怨念の塊なのだ。


この呪いの起源は、平安時代へとさかのぼる。黒曜村は、かつて、名を陰陽師・安倍黒耀あべこくようと称する、謎めいた呪術師が住み着いた地だった。安倍黒耀は、莫大な力を得るため、禁断の儀式を行った。それは、人々の魂を黒曜の古木に繋ぎ止め、その力を吸い取るという、恐ろしい儀式だった。


安倍黒耀は、安倍晴明を彷彿とさせるほどの高い呪術の腕前を持ち、人々からは畏敬の念と恐怖の念を同時に抱かれる存在だった。しかし、その力は、邪悪な目的のために使われた。彼は、莫大な力を得るために、禁断の儀式を繰り返した。


儀式は成功した。黒曜の古木は、安倍黒耀の邪悪な力で、巨大な怨念の器と化した。しかし、安倍黒耀の野望は、そこで終わらなかった。彼は、村人たちの魂を操り、自分自身の永遠の命を手に入れようとした。


しかし、安倍黒耀の企みは、村の娘、キヨによって阻止された。キヨは、安倍黒耀の邪悪な企みを看破し、彼を阻止しようと試みた。激しい闘いの末、キヨは安倍黒耀を倒すことに成功した。しかし、その代償として、彼女は自らの命を落とすこととなった。


安倍黒耀は倒されたが、彼の邪悪な力は、黒曜の古木に宿り続けた。そして、黒曜の古木は、キヨの怨念と、安倍黒耀の邪悪な力が混ざり合い、より強力な呪いへと変貌を遂げた。


呪われた者は、永遠に繰り返す一日を強いられる。それは、安倍黒耀の魂を操る力と、キヨの絶望と後悔が織りなす、恐ろしい悪夢だ。彼らは、安倍黒耀の野望を阻止できなかったキヨの悲しみを、永遠に背負わされるのだ。


この呪いを解くには、キヨの怨念と、安倍黒耀の邪悪な力を、黒曜の古木から断ち切る必要がある。しかし、その方法は、誰も知らない。黒曜の古木は、深淵からの囁きを送り続け、呪われた者たちを永遠の輪廻へと引きずり込む。


 黒曜村の古老たちは、この呪いの真実を、ひそかに語り継いでいる。そして、その呪いは、いつの日か、再び誰かを襲うかもしれない。黒曜の古木の黒曜色の影は、村を永遠に覆い続けるのだ。

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