夏の夜空に消えてく花火
みかんの実
第1話 女友だちとの再会
仕事帰りに、恋人のナツキと食事の約束をしていた。
「あー、偶然。あんた達等まだ付き合ってんの?」
聞き覚えのある声に胸がざわついた。
駅前で待ち合わせたところで、会ったのは――、
「アキちゃん!」
「アキ!」
俺とナツキの声が、同時に駅前の通りへ響いた。
安さが売りの馴染みある居酒屋。
店内は仕事帰りのサラリーマン、地元の大学生で賑わっていた。
「いやー、ここも変わってないねぇ!」
なんて、アキが周りをキョロキョロと見渡しながらビールジョッキに口を付ける。
女の癖に相変わらず豪快な飲みっぷりをみせた。
「アキちゃんも変わってないね。ちょっと焼けた位で」
「ほんと、黒くなったなー」
ナツキの声に続いて、俺もテーブル越しに座るアキに口を開く。
ナツキの黒髪は肩までの長さにカットされ、綺麗に内側に巻かれていて。今日は仕事帰りという事もあり、ストライプのシャツに膝丈の白いスカートを着こなしていた。
そんなナツキに比べて、アキのはTシャツにデニムのショートパンツ。後ろに高く束ねた金色の髪の毛は、根本の部分が黒くなっていた。
こういう無精なとこもほんと変わらない。
「でも、アキちゃん。いつ帰って来たの?」
ナツキが嬉しそうに、声を弾ませる。
そうだよな。コイツは何故かアキと仲が良かったから。
アキは大学を卒業して就職した、が――。
すぐに辞めて、「あたし世界を旅してくる」とか言って外国へ行ってしまった。
それから約2年。
その間、俺にはもちろん、ナツキにさえ連絡がなかったのだ。
先週、犬の散歩中に偶然アキの母親と会ったけど、こっちに戻ってくるなんてそんな話してなかったのに。
「今日、夕方に帰ってきた」
そう言って、アキはニカッと歯を見せた。
「えっ、今日?せっかくだから誰か呼ぼうか?リッちゃんも心配してたんだよ!」
「あはは!!いーよ、いーよ!おいおいで!!」
ジョッキに口を付けながら、2人のやり取りを眺めれば懐かしさが込み上げてくる。
「今までどこ行ってたんだよ。ナツキだって心配してたんだぞ」
俺の言葉にナツキもうんうんと頭を上下に振る。
「オーストラリア!凄い良かったよ」
「「オーストラリア!?」」
俺とナツキの驚きの声が重なった。
「うん、途中からワーホリ使って働いたりしてたんだけど」
「へー、なんか凄いな」
「アキちゃん、英語得意だったもんね」
「いやいや、やっぱ高校、大学の英語じゃ全然ダメでさ」
「俺、外国なんて家族としか行ったことないから……」
「わ、私もだよー」
「あはは!大変だったよ。伝わらないしさ、でも拾う神もありなんだよね。最近は日本人向けの通訳の仕事までありつけたんだけど……」
目を輝かせるアキは、とてもイキイキしていた。
気候が住みやすかったこと。
カンガルーの肉は可哀想だから食べなかったこと。
向こうでルームシェアしてた友達のこと。
「実は、いつの間にかビザ切れてて強制的に帰らされたんだー!」
……どこまでも、アキらしかった。
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