第2話 その日、私は出逢った

ある春の日。

今日から高校生である私、橘音那は


「音那!! 遅刻するわよ!!」


寝坊した。

お母さんに起こされてなければあと30分は余裕で寝ていた。

私は急いで支度をして家を飛び出した。


こういう急いでる時にはお約束がいくつもあるわけで、私はそんな展開を期待しながら登校していたが...


「入学初日から遅刻とはどうなってるんだ」


遅刻した。

ただ、言い訳させて欲しい。

遅刻したのは渡ろうとしていた信号が全部赤になったり、前を歩くお婆さんがとても遅かったりしただけであって、決して寝坊したから遅刻したわけではないのだ。


そんなわけで私の高校入学最初の印象は


「あ、今日遅刻してきた人でしょ」

「初日から遅刻するってすげぇなw」


はぁ、最悪である。ただ、そのおかげか声をかけてくれる人が何人かいた。


「ねぇねぇ、寝坊しちゃったの?」


とっても可愛らしい顔立ちをしている女子が話しかけてきた。

なんとまぁ、その、とても元気な子だな。


「う、うん。まぁそんな感じ」

「やっぱりかぁ。私も今日ギリギリでさー。いやーよかったよかった」


なにがよかったのだろうか。

こっちは初日から遅刻したせいでとても鬱なんだけど。


「あんまりちょっかいかけてんじゃねぇよ。初日から遅刻したんだから気分悪いだろ」


話していると、後ろから男子が目の前の女子の頭にチョップした。


「痛っ、ちょっと響!! いきなり叩くことないでしょ!?」

「叩いたんじゃなくてチョップしただけ。それにグイグイいきすぎなんだよ涼音は」

「えっと二人は知り合い?」


仲が良さそうな二人に聞いてみると、爽やかイケメン風の男子が答えた。


「あー、まぁな。中学の同級生なだけ。俺は小山内響。で、こっちが雨森涼音。ガキだけど仲良くしてやってよ」

「響は私のお父さんか!! それにガキじゃないです〜。だいたい中学の頃は響だってガキだった...」

「それで、橘音那さんって言うのか。これから一年間よろしく」

「あ、うん。よろしくね」

「人の話を聞けぇ!!」


そうして私には入学初日早々にして、二人の友人ができた。

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あの日、私は失恋した ARuFa @hura1412

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