戸籍シャッフル! 〜突然ですが、今からあなたたち二人は実の兄妹です!〜

竹なかみおん

プロローグ

▼ 【管理課】


「うーん……困りましたねぇ」


「おいミラ。どうしたんだよ?」


「あ、イリュ君。あのですね、この人のことなんですが……」


「どれどれ。あー、明日が”お迎え”の人か」


「そうなのです。”お迎え”自体は仕方のないことなんですが……。でも、今この人を”迎え”にいっちゃうと、ちょっと面倒なことになっちゃいそうなんですよ」


「ふーん。じゃぁさ、ほら。こうやって順番を並び替えちゃえばいいだろ」


「え、そんなのアリなのですか?」


「内緒だけどな。ここだけの話、意外とみんなやってるぜ」


「えー。そうなの? あ、でもそうすると今度は後ろの人たちに矛盾が起きてくるわけですが」


「うん、だから、ミラ。ちょっとそれ貸してみな。こうするんだよ」


 イリュはミラから問題の書類を受け取ると、両手でがしゃがしゃと音を立ててシェイクした。


 すると書類に書かれた文字は水面を揺れる落ち葉のように揺れ動いた。

 ある文字は行を変え、またある文字は下に重なった書類に沈んだりした。逆に、ぶくぶくと下から浮かんでくる文字もあった。


「あーあー」


 ミラはイリュの行為を不安げに見守った。


「はい、終わり。なぁもう帰ろうぜ。とっくに定時過ぎてるよ」


「んー……でもホントにこれでいーんですかねぇ?」


 出来上がったのは、デタラメな書類だった。


「いいんだよ。暗黙の了解ってやつ」


 心配するミラを余所に、イリュはミラの手から書類を取り上げると、クズカゴにでも捨てるみたいにポイと上長のテーブルに提出してしまった。


「ほら行こうぜ」


「う、うん……」


 さっさと行ってしまうイリュの後を追いながらも、ミラはいつまでもその書類から目を離せないでいた。


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