魔法少年ハクア〜怠惰な脳筋魔法少年(25歳)はあんまり魔法を使わない〜

鯖の佃煮

第1話

 この世界には、ダンジョンが存在する。漫画とかアニメとかでよく出てくる、魔物がいて、超次元的な力が使えて、洞窟の中なのに絶景が広がってたりするアレだ。

 七年前、全国の街中に洞窟が生えてきたのだ。こう、ずもももーっ、ってな感じに。で、軍の人が調査に入り、所謂いわゆるダンジョンという物である事が判明した。

 ダンジョン内でのみ魔法やスキルと呼ばれるものの行使が可能であり、そういったものを駆使して魔物と対峙し、倒す事でドロップする様々な物を入手できる。


 ちなみに、魔法やスキルには取得制限という物があり、初めてダンジョンに踏み入った時に完全ランダムに割り振られる職業で決まる。

 こんな所でまで運に左右されるとかダンジョンってクソ。

 しかも取得制限が掛かるだけでなく、職業によって身長やら性別が変わる事もあるらしい。まあダンジョン内でだけだけど。

 ダンジョン配信者と呼ばれる、ダンジョン攻略をしている所を配信する人達には身バレの危険が減るからと有難がられていたりするらしいが、そうでない人達からは体が上手く動かせなくなってしまう為毛嫌いされている。

 慣れれば動けるが、そうなると逆にダンジョン外での生活に支障が出たりするので、やっぱダンジョンはクソだと思う。


 …………俺の職業が何かって?魔法少年だよ。”少年”と付くだけあって、まぁ身長が低い。クソ程低い。150幾らかだ。俺25歳だぞ。元の身長が175位だったのもあって、最初は本当に苦労したよ。もう二度とあんな苦労したくないね。



閑話休題それはさておき



  ファンタジー的な力が使えるからと言って別に命の危険がない訳ではない。まぁ、当たり前の事だな。故に、ダンジョンで活動するに足るかの判断と、ドロップ品の鑑定、売買を担当している国の運営する組織「冒険者ギルド」が存在する。定番だな。ちょっとアガる。

 そして、ギルドとは別に個人運営の組織「クラン」が存在する。戦力貸出、ダンジョン内治安維持や、便利グッズ販売が主な仕事で、依頼主の代わりに素材を取ってくるといったサービスをしているクランもある。

 C級〜S級にランク分けがなされており、高ランクになればなる程依頼の難易度も報酬も上がる。あとクラン加入試験の難易度も上がる。

 S級クランにもなれば、一度の仕事で一生遊んで暮らせるんじゃないかってくらいの報酬が入る事もザラにある。税の事は考えるな。いいね?


 現在存在が判明しているS級クランは四つ。

天光てんこうの翼」「紅蓮灯火ぐれんとうか」「治維ちい」「白虎騎士ホワイトタイガーナイト

 その内依頼方法が判明しているクランは前者二つ。後者二つは依頼方法が判明していない。まぁ両方とも治安維持系のクランで、依頼というシステムが存在していないだけなのだが。

 何故そんな事を知っているのか、って?俺が白虎騎士所属S級冒険者だからだよ。勿論クラン名決めたの俺じゃないからな。なんだよホワイトタイガーナイトって。ダサすぎるだろ。そもなんで俺が治安維持組織に入ってんだよ、民の安全の為〜とかガラじゃないんだが……。


 愚痴ってた所で仕事が消えてくれる訳じゃなし、さっさとダンジョン巡回しに行くとしますかね〜。





◇ ◆ ◇ ◆ ◇





 ――B級ダンジョン内六階層にて。


『Привет!待たせたの、皆の者!』


:きちゃ

:こんちわ〜

:ここどこ?

:きちゃ〜!

:待ってた

:待ってました!!

:こんにちは〜

:きちゃあ


「あ、推しパ配信始めてら」


 俺の推しパ、春夏秋冬。幼馴染四人で組んだB級パーティで、ダンジョン配信者だ。

 一人一人自らの出来る事、出来ない事、やるべき事を把握している。接敵して即自分の役目を把握して動いていて、B級とは思えない程に強いパーティだ。

 配信者としても面白く、コメントとのプロレスやメンバー同士の絡みが見ていて楽しい。談笑してはいるが、周囲の警戒を怠っていないのも高ポイント。

 グロ展開を身構えずに見ていられるのは有難い。基本、ダンジョン配信者というのはグロが付き物だ。腕が飛んだり足が潰れたり胴体が離れたり首が無くなったり。だが、春夏秋冬の場合メンバー一人一人が強い上に誰も警戒を怠っていない為安心して見れるのだ。


『今日はじゃの、アントネストというB級ダンジョンにやって来たのじゃ!!』


「……このダンジョン、今俺がいる所じゃね?」


 今俺が巡回しているこのB級ダンジョン、最近ここの魔物の動きが活発になっているらしいのだ。故に何が起きても対応出来るようS級冒険者である俺が派遣されたのだが……


「一応警告しとくか」


 まあどうせ何も無いだろうけど (フラグ)


:アントネスト?

:虫ダンジョンかぁ……

:虫嫌い

:うわぁ…

:気を付けてね

ハク:そこ最近魔物の動きが活発化してるらしいから気を付けて下さい

:今回はユニークモンスターでるかな

:マジぃ?

:ハローハクさん

:虫キモイ

:ハク先生ハロハロ〜


『え、そうなのハクさん!?今から別のダンジョン行こうかな……』

『……じゃから我はアントネストはやめようと言うたのじゃ』

『どーどー、ハクさんは行くなとは言ってないんだし、大丈夫だろ。アタシも虫は嫌いだけどさ…』

『ここドロップ美味しいから俺は好きだけどなー』


 弱腰になっているのが久々利くくり 夏華なつか。韓紅色のメッシュの入った紅色の三つ編みと梅の装飾が施された眼帯を付けているのが特徴的な少女で、職業はハイエルフ。

 司会進行を務めるのじゃロリが東雲しののめ 秋奈あきな。雄黄色のロング髪とオパラン色の瞳、油色の片角と大きな狐面が特徴的な巫女服の少女で、職業は鬼。春夏秋冬のパーティリーダー。

 秋奈を抑えているのが阿良々木あららぎ 冬乃ふゆの。大きなリボンツインテと悪魔の角と羽根が特徴的な姉御肌の少女で、職業はサキュバス。

 それを眺めながらカラカラ笑っているのは夜桜よざくら 春斗はると。目元に巻いている包帯が特徴的なギザ歯の少年で、職業は狂戦士バーサーカー


 幼馴染だけで結成されたとは思えない程バランスのいいパーティである。それにしても、それ職業なん?って感じの職業が多いな……。


 おっと、こんな事を現を抜かしている場合じゃなかった。さっさと仕事巡回を再開しなくてはクランマスターにブチ切れられてしまう。


「あの人が切れると面倒臭いんだよなぁ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法少年ハクア〜怠惰な脳筋魔法少年(25歳)はあんまり魔法を使わない〜 鯖の佃煮 @akari0520

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ