動物たちの権利

星野那波

悲しいペットの生涯

ぼくは、空からずっと見ている。

ぼくと同じ悲しい生涯を送る犬たちを・・・


ペットショップのガラスケースに入れられた犬たち。

小さくてもふもふ、愛らしい丸い目、とてもかわいいと皆が寄ってくる。

でも、ぼくたちはすごくすごく怖いんだ。

お母さんから引き離されて、狭いケースの中、たくさんの人たちにずっと好奇の目で見られ続けてて・・・


お母さんに甘えたいし、きょうだいたちにも会いたい、外を元気に走り回ったり、草や土のにおいをかぎたいんだ。

でもそれができない。


ぼくたちのお母さんはもっと辛い思いをしている。

パピーミルで、ずっとぼくたち子どもを産まされ続けている。

もう体がぼろぼろ。

ぼくたちのことを想っていつも悲しんでいるんだ。


お母さん犬は、せめてぼくたちが温かい家族に引き取られていってほしいと願っている。

でもそんな願いも虚しく叶わないことも多い。


ペットショップから買われた犬たち。

飼い主さんにたくさん遊んでもらったり、散歩したり、おいしいごはんを食べれたり、温かい寝どころで安心して眠れる、そして何よりたくさん愛情をもらえると期待した。


でも期待通りになんていかなかった。


遊んでくれたり、可愛がってもらえたりするのは最初のうちだけ。

あとはぼくたち犬をすぐ飽きてしまった。


糞尿まみれで放置されてる子もいれば、ストレスで吠え続ける子、いつかまた可愛がってくれるのを期待している子と様々だ。


そして待っているのは保健所のガス室。


勝手にかわいいからとペットショップでぼくたち犬を買い、飽きたらすぐ保健所に連れていき、命を捨てる。


そんな連鎖がもうずっとずっと続いている。


最近では保護団体が増えている。

保健所から引き取って、シェルターで新しい飼い主(里親)探しをしてくれる。

でも、中には怪しい団体もあるから注意が必要なんだ。


保護団体さんは、ぼくたち犬をちゃんと最期まで責任を持って飼ってくれるか、犬にとって快適な環境かを審査してから、犬を引き取らせている。


「審査が厳しい」と不満に思う人もいる。

でも、ぼくたち犬の生涯がかかっているんだ。

「一人暮らしで寂しいから」「かわいい犬に癒されたいから」だけじゃ犬は飼ってほしくない。


劣悪な環境のブリーダーやペットショップからお金を払って犬を買ってしまえば、またお母さん犬は子どもをたくさん産まされ続けて苦しむことになる。

不幸の連鎖だ。


いくら犬が可愛くても飼わないでほしい。

どうしても犬を飼うことを望むなら、殺処分をまぬがれた犬たちの里親になって生涯責任を持って世話をしてほしい。


ぼくはいつも空から見守っているよ。

ぼくたち犬が幸せになれる日を願って







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