第4話 森の魔物とリューリの初陣
次の大きな町へ向かう道中、広い森を抜ける必要があった。
そこは低級から中級の魔物が出ると噂される場所らしく、気を引き締めて進む。
リューリは魔法書を読みつつ、簡単な詠唱の練習を繰り返している。
すると、突然馬が鼻を鳴らして警戒を示した。
前方の茂みがガサガサと揺れている。
「来るか……なんだろう」
現れたのは牙をむいた巨大イノシシのような魔物。
体毛が赤みがかっていて威圧感たっぷりだ。
だがここで焦る必要はない。
俺は【フリマ】を開き、動物相手に有効そうな「狩猟用弓」と「防御用の携帯バリケード」を瞬時に購入。
ポン、と手元に現れた弓を引きながら、リューリに声をかける。
「リューリ、魔法が使えそうならやってみる?」
「が、頑張ります……!」
リューリは震える手で魔力触媒を構え、魔法書に載っていた詠唱を口にする。
すると先ほどは出せなかった炎の球が彼女の手のひらに生まれ、ぶわっとイノシシ魔物へ飛んでいった。
ドォンと小さな爆発音が響き、イノシシ魔物が一瞬ひるむ。
その隙に俺は矢を放ち、見事な手応えで魔物の肩に命中。
魔物は苦しげに足をもつれさせ、そのまま倒れ込んだ。
「す、すごい……私、本当に火の玉を出せました……」
「やったな。かなり威力あったぞ。さっきの練習が活きたんだ」
イノシシ魔物が完全に動かなくなったのを確認し、俺は【フリマ】で買ったばかりの「解体用セット」を使って素材を回収。
肉や毛皮、牙などを綺麗に仕分けて回収できる。
こういう魔物素材は都市部で高値で売れるし、特に牙は装飾品や魔法道具の材料になるらしい。
「やっぱり魔物の素材はそれなりに価値があるな。リューリの魔法がなかったらもっと時間がかかっただろうから助かった」
「役に立ててうれしいです……」
リューリは照れくさそうに微笑む。
奴隷の境遇で自信を失っていたのかもしれないが、こうして実際に力を発揮できたのは大きな前進だろう。
◇
それから森を抜けるまでに、スライムやらオオカミ型魔物やらが襲いかかってきたが、俺たちは【フリマ】をフル活用し、余裕で撃退していく。
主に魔法で牽制し、俺が弓で仕留めるスタイルだ。
どうしても手に負えない相手が出てきたら、火薬玉や強めの武器を買って対処すればいい。
この世界の冒険者たちは通常、強い武器を手に入れるのに苦労するらしいが、俺にはそれが無縁。
必要な時に必要なだけ購入すればいいのだ。
「これならモンスター狩りも結構楽にこなせるな。素材を集めて売れば、後払い分くらいすぐチャラになるだろうし」
「本当にすごいスキルですね……。レンさんって、どうしてこんな力を持っているんですか?」
「俺もよく分からないんだ。気が付いたら異世界にいて、このスキルを持ってたから……」
俺はリューリに大まかな経緯を話した。彼女は不思議そうに首をかしげる。
「異世界……そんなことってあるんですね。でも、もし私が魔法の勉強を極められたら、いつかレンさんの世界にも行けるのでしょうか……?」
「どうだろう。でも、もし行ける方法が見つかったら、一緒に行ってみる?」
「……はい。なんだか、夢みたいな話ですね」
そんな穏やかな会話をしながら、俺たちは森を抜けて開けた道へ出た。
前方に見えるのはしっかりとした道路。
どうやら大きな街が近い証拠だ。
俺は思わず馬の速度を上げて、次の目的地へ急いだ。
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