第13話

「それで、腹は膨れたか?」


 食料庫にあった食料を少女が食べるのを何をするでもなく見つめていると、少女が食べる手を止めたから、俺はそう聞いた。

 

「……は、はい、ありがとう、ございます」


「……あぁ、水も必要か。少し待ってろ」


 声が明らかに枯れていることでその事を思い出した俺はめんどくさい気持ちを抑えて、少女にそう言ってからその場を離れ……ようとしたのだが、何故か少女に手を伸ばされて、服の裾を掴まれしまっていた。


「何やってんだ」


 こんな筋肉も何も無いような人間の少女相手だし、ここで結構な数の人間を殺したことも考慮すると、いくら弱い俺でも力ずくで進むことくらいできるが、一応、俺はそう聞いてやった。

 こいつがもう敵対することが無いことは眷属化したことによってよく分かってるからな。

 

「……一人、嫌、です」


 ……こいつ、自分で歩くことすら出来ないくせに、何を言ってるんだ。

 ……でもまぁそうか。

 パッと見もう村に人がいるようには見えないけど、家の中で息を潜めてる可能性は全然あるもんな。

 ……一人にするのは危険か。

 こいつの血が不味くなってるのならともかく、美味いままだった場合、死なれたら困るしな。

 

「はぁ。ほら、これでいいか?」


 そう言って、俺はパンを両手で持ったままの少女の体をもう一度横抱きにして持ち上げた。


「……ありがとう、ございます」


「まぁ気にするな」


 俺の為だしな。

 そして、歩き出した……はいいものの、水がある場所ってどこだ。

 ……こんなことなら、さっきの人間に水の場所も聞いておけばよかったな。

 いくら小さな村とはいえ、井戸くらいあると思うしな。

 ……まさかどこかの川までわざわざ水を汲みに行っている、なんてことは無いだろうしな。


「……はぁ。村長の家以外どうせボロい家ばっかりだし、壊して中を確認しながら行くか」


「……うん」


 別にお前に話しかけた訳じゃないんだが。まぁいいけど。

 

 そして、俺はそのまま、未だにちゃんと近くに浮かせていた血液を使って周りの民家を潰し始めた。

 お、早速人がでてきたな。


 俺たちの姿を確認するなり、真っ先に逃げようとしていたから、俺は直ぐにそいつの足を血液で潰してから、そいつの傍に移動した。


「飲水の確保の仕方を教えてくれ」


「そ、そ、それを教えたら、こ、殺さないでくれる、のか?」


「もちろん」


「あ、あっちだ。あっちへ真っ直ぐ進めば、い、井戸がある」


「そう。ありがとう」


「アッ、ガッ、な、なん、で……」


 なんでって、そりゃ殺すだろ。

 生かす意味が無いし。

 

「これが井戸か。お前……は汲める訳ないよな。自分で歩くことも出来ないんだし。はぁ、俺が汲んでやるよ」


「ありがとう、ございます。嬉しい、です。……これも、私が特別だから、ですよね」


 少女を地面に下ろすと、何やら色々とブツブツと声が聞こえてきたが、上手く全ては聞き取れなかった。

 まぁ、どうせさっきと同じように礼を言ってきただけだろ。


「ほら、汲めたぞ。さっさと飲め」


「……はい」


 少女が水を飲んでいるのを横目に、俺は適当なまだ壊していない民家に入って、水を入れておける水筒のようなものが無いかを探し始めた。

 こいつを連れていくなら、水は常に確保しておきたいからな。

 後食料も持っていきたいから、ついでにバッグも欲しいよな。

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