社会的ブルー

学生作家志望

闇バイト

心のままに動けばいつか楽になれるのやもしれない。


私の中に心があるせいで、私はいつまでも苦から逃れることができない。心なんて捨ててしまえればいいのに。いつもそんな風な無茶を思考しながら項垂れている。


頬を下る水は傷だらけの体も容赦なく濡らしていく。ズキズキと鼓動を感じるような激しい痛みに突き刺されもう耐えれないと倒れこんだ。


生まれつきの皮膚病と親の度重なる暴力が醜い私を作り出していた。隙間のない密閉された部屋で繰り返し殴られたり切られたり、抵抗する力すらまだない小さいころの記憶を、未だ鮮明に覚えているという事実が私の体をもう一度震わせるのである。


皮膚病に冒されてまともな肌を持ちえない私に、気遣い構う善人の塊のような人間は絶対にこの世に存在しないだろうと断言できる。今更そんな甘い夢見ていられるわけがない。


私が見た甘い夢、大勢の友達に囲まれるときがあれば今度は恋人とハグをして笑っているときもあった。

顔も知らない友達と名乗る人とご飯を食べていたのに、急に恋人が出てきたりして、話はもはやめちゃくちゃで繋がりがまったくないのだ。だから私はそれを甘い夢と捉える。夢を夢として見ていないということだ。


最初から全て嘘だと分かっている。現実逃避にはもう飽き飽きした。


身も心も壊したい、たとえ壊すことが不可能だとしても意識だけは壊していたい。意識があれば痛い、無くなれば消えたくなる前の痛みが、消えるでしょう。だからこんな腐食した頭に付属した意識など無くなればいい。


苦しい、怖い。あんな世界にはもう行きたくない。



・・・・・・男からのメッセージが夜の暗くなった部屋を数秒明るく照らした。涙はもう出なくなっていた。そんなことに気付くこともできないくらい私は絶望の淵に追いやられているのだ。


逃げ出せば殺されるかもしれない、逃げたとしても社会に殺されるかもしれない。生きるために、生きるために。


・・・・・・やるしかない。


高齢者が住む家の強盗、それが今日の私の仕事。





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