第4話
同じクラスで、レイと同じ部屋のモナが憎たらしい。しかも、2人がけの木長テーブルの隣の席だし、声の主の張本人の隣に向かうしかないのだ。
バンっと音をたてて、鞄を乱暴に勢いよく机の上においた。わざと。
「こっえー」
なんてモナの周りに立つ男子達がニヤニヤと視線を向けてくるから、更にイラッとくる。
ふん、同じ位の男子は本当に子供っぽくて、馬鹿な発言しかできない生物なのね。
でも、兄と家族と仲が良くて何がいけないのかしら。
「あなたには関係ないわ」
無視をするつもりだったのに、思わず心の声が外へ漏れてしまう。
「はぁぁ?あなたには関係ないわー?」
人に真似されるのってとても不快なのね。
イラついた顔をごまかす気にもなれないわ。
「今更さぁ、気取っても遅いんだよ」
「あなたには迷惑かけてないでしょう?」
「はぁぁ?あなたには迷惑かけてないでしょー?」
モナがあたしの台詞を繰り返すと、周りの男子達が"ひゃはは"と笑い声があがる。
本当に大嫌いだわ。
「だーかーら、同じ部屋だから困ってんだよ。気持ちわりぃ」
「家族はハグやキスするの当たり前じゃない」
「そんなのするか」
「普通にするわ」
「俺は、何ヵ月も会わないけど」
モナが鼻で歯切れのいい笑いをみせるから、思わず目をパチパチとして顔を上げたところで──。
「はい、号令ーー」
バーンと音を立てて木扉が開けられる。
担任の先生の姿にクラスの皆がバタバタと席についていった。
先生が来てくれて少し助かった気分。
あたしも急いで教科書を出してノートを広げて、授業をうけるフリをする。
「教科書13ページを開いて」
聞いてはいけない事を聞いてしまったのかしら。隣に座るモナヘこっそりと視線を向ける。けど、モナは変わらず平然としているから少しほっとできた。
家族の関係って、各家庭によって違うのかしら。
「前回は、植物と生物の基本的な細胞と構成について……」
短髪なのにサイドだけ長い紺色の髪。
前に向けられる瞳は、どこまでも深くてレンの寮と同じ宝石の色をしていた。不思議と光は見当たらなくて、闇の色みたいにとても濃くてちょっと怖いくらい。
全体的に色素の薄いあたしとレンとは真逆だわ。
いつもレンしか視界に入れてなかったから、モナの顔をちゃんと見たのははじめてだったかもしれない。
「なーに、見てんだよ?」
「え?あなたなんか見てないわ」
ただの青い猿だと思っていたけれど、人だったのね。
「よし、じゃー俺等も行くか」
「え?」
授業中だというのに、モナがガタンと席を立つ。と同時にクラスの子達が話しながら教室から出ていくから驚いた。
教壇に立つ先生も、教材をまとめ何やら準備をはじめている。
「おい、お前なんで座ったままなんだよ。置いてくぞ?」
……まずいわ。話を何1つ聞いていなかったわ。
「な、何をすればいいのかしら?」
「あ?」
モナの瞳が真ん丸に見開いて、眉間の皺がくっきりと浮かびあがった。
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