❦Episode 2❦ 「Reminiscence:when we were friends .」
夢を見た。等間隔に並ぶ薄灰色の下駄箱。その中に一つだけ、鼠の死体が二匹、上靴の代わりに詰められている。彼女と同じ、紅い瞳の白い鼠だ。それを大切に手のひらに乗せて、校庭に出ようとした。しかし、自分の外履きを出していなかったことに気づく。どうしようかとふり返ると、目と鼻の先、ほんの十センチほどの近距離に、彼女は立っていた。
『なにしてはるん?』
昇降口から差し込む西陽が、紅い瞳を照らしてきらきらと輝く。いっとう大切に育てられた苺を煮詰めて作ったジャムのようなそれは、やはり、手の中にある肉塊とは比べ物にならない。
『こんなんに使われる鼠、可哀想やん。どっかに埋める場所あらへんか思て』
彼女の純粋な視線に鼻がむずむずと痒くなる。両手がふさがっているので、肩に擦りつけるようにして顔を隠した。すると彼女は勢いよくふり返り、自分の下駄箱を開いてもう一匹の鼠を手のひらに乗せた。そのまま駆けてくると、上履きのまま玄関の外へと降り、こちらへと向き直る。
『僕も行く! 僕ね、ぴったりな場所知ってんねん。はよう行こ!』
鼠を乗せていない方の手で、腕をつかみぐいぐいと引っ張ってくる。全員が帰ったオレンジ色の校舎で二人、手を繋いで校庭へ駆けていく構図は、まるで友達みたいだ。私は敢えて面倒くさそうに溜息をついて呆れてみせる。が、その実、上履きのまま飛び出してしまうほど、浮足立っていた。
こんな時間が永遠に続けば良い。確かにあの時の私は、そう思っていた。
MAR6LE 日比谷りく @hiviyariku
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