第20話おかえり地上

 僕らの帰りを妨げていた岩盤はアダマンタイトのツルハシにより、ついに破れ去った。


 ただの硬いだけの岩盤はただの岩でしかないから、持って帰っても強欲ババアをからかって怒らせる材料にしかならない。


 ……効果はバツグンだ、持って帰ろう。


 砕けた岩盤を採取。

 手に持ってみて初めて気づく。


 鋼鉱鉄こうこうてつだったか。

 どうりで硬いわけだ。


 鋼鉱鉄は簡単にいうとはがねの材料だ。鉄鉱石よりも純度が高く、熟練の鍛治職人の手にかかれば高品質の剣が作れて冒険者や貴族にも大人気だ。交易品としても高値で売れる。

 それでもアダマンタイトの方が質が高いけど。


 僕はなんとなく錬成箱を使って剣を作る。

 ついでに鞘も作って、金細工と小さなダイヤモンドのカケラなんかも装飾に加工。

 なんだか勇者の剣(想像)ぽくなった。


 当然、熟練鍛治職人のような品質の良さはないが、そもそも剣の形にできる腕を持った職人自体が多くない。

 これで十分売れる!


 売り先なんてないから、強欲ババアに搾取されて終わりだけどねぇー。

 ご存知の通り(?)、強欲ババアに背後から掴まれたら僕は動けなくなってしまうのだ!


「坊ちゃん? この突然出来た剣はなにをどこから、どうやって、なにをしたら作れるんですか……?」

 キャパティが呆然と僕が天にかざした剣を指差し動揺しているようだが、細かいことはいいんだよ。


 僕は鋼鉱鉄の剣を背負い袋につっこみ、アダマンタイトのツルハシを振ってさっさと上に登っていく。


「置いていくよー」

「あ、待ってぐだざいぃぃー!!」


 慌てて転けながら僕の後を追いかけるキャパティ。

 慌てなくても道は繋げるから、後ろからゆっくりついてくればいいんだけどねぇー。


 サクサク掘ってたら、あっさり見覚えのある場所に出た。


 そう、あの思い出のファーストダンジョン牛遭遇の地である。吊るしてあったダンジョン牛肉も残っているし、貴重な赤茶色の木もある。


 ここからはもうなにも心配はいらない。道はできている。振り返ってみれば何もかも皆懐かしい。

 1週間も経ってないのに、半年ほど経ってしまったかのような気分だ。


 僕らはさっさと地上に出た。


「ひぃ、ひぃ、ふぅふぅ」

 ロープで結んだキャパティが一定のリズムで息を吐いている。ラマーズ法のようなリズムだけど出産途中だろうか?


 ちちち、父親は僕じゃないぞ!?

 僕は身持ちが固いのだ。


 地下で水浴びしたとはいえ、土の穴を通って出てきたのだ。多少の汚れもあるし、キャパティに至っては汗と涙と鼻水で酷いことになっている。


「地上に登っただけなのに随分汚れたねぇ〜?」

「地上に登った『だけ』とか簡単な傾斜じゃなかったですよ!? 置いていかれるかと思いましたよ!?」


 何を言うかと思えば、と僕は肩をすくめる。

「ロープで繋いでいたんだから置いていくわけないじゃん?」

「ええ、ええ! むしろ引っ張っていってもらいましたとも! 引きづられたとも言いますけど!!!」


 ワガママだなぁ〜。

 そう思いつつも、若き乙女が土まみれ、涙まみれはあまりに憐れだった。


 僕らは奴隷屋敷に帰る前に地下で入手した金を売って、風呂付き宿屋で風呂だけ入って着替えることにした。


 そんで、どうせなら今後も使えるようなちょっと綺麗めな一張羅というヤツを買った。

 キャパティはノリと勢いでゴシックメイド的なお仕着せ、つまり使用人服を買ってやった。


 そして懐かしの(?)奴隷屋敷に帰って来た。

「……坊ちゃん。なんで私までお風呂に入って着替えてるのでしょう?」


 風呂も着替えも終わった後で自分の格好をしげしげと眺め、キャパティは変なことを問いかける。

 もちろん一緒にはお風呂に入ってないぞ?

 男女別々だぞ?


「何を言う。お風呂に入ったら着替えるに決まっているじゃないか?」

「いえ、そうではなくて……。やっぱり坊ちゃんは良いところの坊ちゃんか、やんごとなき土族の偉い方なんですか?」


 たしかに僕の高貴オーラに、それなりの服が合わさると溢れ出るカリスマが溢れて止まらないことだろう。

 それでも事実は変わらない。


「うんにゃ。僕はただの奴隷で、奴隷の部下のキミも今日から奴隷」

「今更、それを信じろと言われても……」


 事実なんだけどなぁ〜。

 だからキャパティは地上に出ても逃げないんだね。地下での奴隷の部下になる口約束なんて守る意味ないしねぇ〜。


 あと、キャパティ自身が純粋な良い娘なのだろう。詐欺に気をつけなよ?

「まあ、すぐにわかるよ」

 その人の良さがアダになるとは気づくまい、クックック。

「坊ちゃん、顔が悪いですよ?」

「顔は悪くないぞ! 天使のような美少年を捕まえてなんて言い様だ!」


「知ってました? 美少年は男色を売る少年の意味合いを示すこともあるんだそうです」

「えっ、マジ?」


 そんな話をしつつ、たどり着いた我が奴隷屋敷は……、なんだかガラの悪い連中に家財を運ばれていた。


 あれ?

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