第19話人生は旅のようなもの

 焚き火でダンジョン牛の肉を炙り、とっておきのキノコとダンジョン牛のスープを茹でる。


 出来上がったスープを配膳してキャパティに手渡すと、ふうふうはふはふと必死になってスープをすする。

「美味かろう?」

 僕はスープをゆっくり混ぜながら問いかける。


「あぁ……、うぅ……」

 キャパティはスープの湯気で顔を湿らせているかと思うと、ついにほろほろと涙と鼻水を流し出した。


 ダンジョンに入り何日が経過したかは知らないが、地下世界とは違い危険の多いダンジョンでは温かい食事それ自体が貴重だ。

 ましてや、ようやく生き残れたことを実感したとなれば心にみぬわけがない。


「ああ、ほら、これで鼻でもかみなさい」

 僕はボロ切れとなった布を渡してやる。

 これも地下世界で自生できればさらに快適になるんだけどなぁ〜。


 繊維を吐き出す大きな虫なども地下世界に存在し、その吐き出した繊維は上質な布やタオルにもなり、ダンジョン布として人気だ。

 これもダンジョン牛同様、採取の難しさから高級品だ。


「人生って……、人生ってどうしてこんなに大変なんでしょう……」

 ぐしぐしと布で鼻をかみながらキャパティはそう言葉をもらす。


「人生とは旅のようなもんだ。苦難の山脈もあれば心安らぐ草原もある。そんな旅の中で温かい飯というのは明日を歩き出す活力だ。ほら、ダンジョン牛肉焼けたぞ、食え」


 それぞれが遭難者して地下世界にいるとか、なんか嫌な旅だけど、それでも美味い飯があればなんとかなるもんだ。


 ダンジョン牛肉の串焼きを差し出す。貴重な岩塩をまぶした逸品だ。串焼き肉って、なんでこんなに美味そうなんだろう。


 それを受け取り、キャパティはポツリと呟く。

「……坊ちゃん、本当は60歳の土族ですよね?」


 キャパティの中で僕はどこまで歳を重ねるんだ? このままいけば不老不死になってしまいそうじゃないか。

「いいから食え、食って部屋で寝てしまえ。ポンコツなんだから考えても無駄だ!」


「ムキー! これでも私、結構優秀なんですよ!?」

「ここまでの過程でどこに優秀の要素があった!?」


 食い終わったキャパティのお尻を蹴って、木の格子付きのお部屋に放り込む。

「牢屋だー! これはお部屋じゃない! 牢屋です!!」


 しばし騒いでいたキャパティだが、食事の前に水浴びも済んで、スープで身体も温まり、唐突に気絶するように毛布に包まって寝た。


 水浴びのときも、「えっちー! こっち見ないでー! でも怖いから遠くに行かないでー!!」とか騒いでたが、僕の好みはお姉様のわがままボディである。成人したての小娘ボディには興味がないね!


 まったく……、騒がしいものを拾ってしまった。


 僕はダンジョン牛肉の串を頬張りつつ、簡単に片付けをする。匂いが周りに広がると、松明の結界を施してもモンスターが寄ってくるかもしれないからだ。


 鍋に蓋をし、牢屋のお部屋に入れて布をかけておく。明日の朝はこのスープにちぎったパンを入れておじやにするのだ。


 さて、僕はもう一仕事。


 下で掘れた鉄鉱石を火にかけて錬成しつつ、牢屋部屋の中に置いてある錬成箱でアダマンタイトを錬成しツルハシにしていく。


 あっさり出来た。


 暇なのでダイヤモンドの原石を眺めつつ思案。

 ……加工した方が高く売れるんじゃね?


 メノウとかも磨くと宝石として高く売れるけど、磨かないとその辺に転がるただの石だしねぇ〜。

 ダイヤモンドの原石も素人眼には少し変わった色の水晶かなぁぐらいにしか思えない。


 僕の内なるパトスがこれをダイヤモンドだと断定しなければ、きっと僕もダイヤモンドと気付かずにはした金で売り飛ばすか、強欲ババアに水晶として納品してしまっていただろう。


 僕はダイヤモンドの原石を眺める。

 ……ダイヤモンドだよね?


 内なるパトスの判定なので、無論、ダイヤモンドである確証などない! 僕を信じる僕を信じろ!

 僕は恐る恐る錬成箱に設置し加工する。


 こうして、想像通りのダイヤモンドが出来上がった。キラキラしててオーラが違う。ちょっと青みがかっているのが高ポイント。よく知らんけど。


 満足した僕はダイヤモンドを手に持ったままコテンと横になり、寝た。


 目覚めるとキャパティがドアップで目を見開き、ダイヤモンドを凝視していた。


「ダ、ダイヤモンドだぁ……」

 ハァハァしてて、なんか怖かった。

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