第3話
当初、新年恒例の年賀競鳥の開催は危ぶまれていた。
なにせ、帝都を掌握した共和主義者たちの首班である『護民卿』が、大の空騎士ぎらいとして知られていたからだ。
かつての共和主義者たちは反乱分子であり、そして空騎士たちは帝都における治安維持の先兵だった。当然、革命前は数多くの共和主義者が空騎士によって捕らえられており、まさに恨み骨髄の天敵といえる。
年賀競鳥というのは、空騎士にとっての一種晴れ舞台でもあり、共和政府はそれを許さないだろうというのがおおよその見立てだったのだ。
実際、共和政府の支配のもとで、帝都の空騎士部隊は規模の縮小を余儀なくされた。かつて空騎士たちは皇帝権力に近い精鋭部隊とされていたが、いまでは共和政府に疎まれ、単なる下級邏卒として扱われるようになっていた。
けれど、紆余曲折を経て、年賀競鳥は開催される運びとなった。
一説によれば、財政難に見舞われている共和政府が、競鳥賭博による収益を欲したからだという。
また別の一説では、それまで年賀競鳥の優勝者に対して皇帝が直々に表彰していたところを、今年からは共和政府の首班である『護民卿』がとってかわることで、共和政府による帝都の支配を内外に顕示する狙いがあったともいわれている。
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