暗い隣室
天蝶
第0話
新しく引っ越してきた俺は、静かなアパートの一室に住むことになった。周囲は静かで落ち着いた雰囲気。隣の部屋には誰が住んでいるのか知らないが、たまに壁に耳をつけて不審な音が聞こえてくることがあった。
ある夜、激しい雨が降り出した。雷が鳴り、停電になってしまった。真っ暗な部屋の中、おれは懐中電灯を頼りに過ごしていた。その時、隣の部屋から何か囁く声が聞こえた。「助けて……」という子供の声。俺は驚いて耳をそばだてた。
「そんなの気にしちゃダメだ❗️」と自分に言い聞かせて、しばらくは無視していた。しかし、声は徐々に大きくなり、「お願い、助けて❗️」と泣き叫ぶようになった。俺は、好奇心に駆られ、一度見に行くことに決めた。
隣の部屋のドアをノックすると、返事はなかったので、そのまま扉を開けてみた。部屋は薄暗く、何も見えない。ただ、囁き声だけが響いていた。懐中電灯を照らすと、そこには何もなく、ただの無人の部屋だった。だが、囁き声は消えなかった。
「俺はここだ、助けて❗️」
俺は急いで部屋を出て恐怖に震え、元の部屋に戻った。声は続いていたが、そのうち次第に弱くなり、最終的には何も聞こえなくなった。安心した俺は、そのまま眠りについた。
次の日、隣の部屋のドアに貼られた張り紙を見つけた。「この部屋は無人であり、今は使用されていません。」不審に思った俺は、管理人に確認することにした。すると、管理人は驚くような表情を浮かべた。
「この部屋は、数年前に火事で焼失したそうです。それ以来、誰も住んでいませんよ。」
その日以来、囁き声はもう聞こえなくなった。しかし、夢の中で、あの声が再び響くようになった。「助けて……」という声。目が覚めると、何かが耳元で囁いている気配を感じる。
意味がわかると、背筋が凍る。このアパートには、音を発する部屋は存在しないはずなのに、その声の正体は……。実は、あの部屋にはまだ誰かがいるのかもしれない。
暗い隣室 天蝶 @tenchoo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます