第6話
Ep
あまりにも長すぎる夜を超え、朦朧とする意識の中、心地いい倦怠感を引きずる私をおいて、雪歌がカーテンを少しだけ開く。
うっすらと明るくなりつつある空は、一体どんな色なのだろうか。
私のいる場所からそれを確認することは出来ず、「ねぇ、雪歌。そらのいろ、教えてよ。」とねだる。疲労の色はありながらも私よりは遥かに体力を残している彼女は、私の要望に振り返り、首を横に振り、こう続ける。
「あたしが見てる色が、葉月に見える色と同じだって保証はないでしょ?」「……うん」確かにその通りだ。独特な考え方な気はするけれど、同じであると言い切れないなら、言わないという判断があってもいいのかもしれない。
「もしも葉月が本当にその色を知りたいなら、一緒にみようよ。」
悪戯っぽく笑みを浮かべた雪歌は、心做しか少し愉快そうな態度で私のもとへと歩み寄る。
「色、知りたい?」顔を近づけて問う彼女。私は無言で頷き肯定する。
「じゃあ、今日は外に出ようよ。少し眠ったら、二人で、ね?」
ああ、やはり雪歌はとても綺麗だ。だけど、否、しかも格好いい。
「雪歌、すごいね。」
私が掠れた声でそう称えると、満足そうに目を細めて隣に転がる雪歌。
手をこちらに差し出し「ん」と促す。「なに、それ。」なんていう私だけど、その意図は言われずとも理解している。
「……」
無言でも、思いの外意思というものは伝わるものなのだな、などと思いながら彼女と手を繋ぎ、瞳を閉じると、いつぞやのごとく、ゆっくりと意識を手放す。
「おやすみ、はづき。……またね。」
完全に意識を失う寸前私の耳に届いたのは、私に明日をくれた、雪歌の言葉だった。
御都合主義的快楽探求 御陵 詠 @yowai_yyyy
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