成長

「彼」がTwitterをやり始めたのは2020年2月である。それ以前から周りの人からよくTwitterの画面を見せてもらっていたので、インストールし最初のアカウントを作った。しばらくの間、彼はそのアカウントのみで活動していた。

また「彼」はモンスト、すなわちモンスターストライクなるソシャゲをもプレイしていた。小学生時代に3DS版をプレイしていた記憶が鮮明であったこともあり、2019年10月に彼がスマートフォンを初めて買ってから、その最初期からインストールしていたのである。


そうしてしばらく時間が過ぎたが、2020年6月、「彼」は天啓を得た。安倍晋三がモンストをプレイしてるかのようなアカウントをTwitterで作ったら面白いのではあるまいか、と。「彼」はさっそく似たアカウントがないかどうか確認することにした。するとたしかにほぼ同じコンセプトのアカウントを発見した。しかし、そのアカウントは何やらよくわからないbotと化しており、中の人が活動している気配を見せていなかったため、「彼」は問題なしと踏んで、「モンストを楽しむ安倍晋三」なるアカウントを開設した。

その名の通り、安倍晋三がモンストを楽しんでいるかのようななりきりアカウントである。「彼」はのちにこれを略してモン安倍と呼ばれることとなる。


「彼」すなわちモン安倍がアカウントを開設するとすぐにフォロワーは驚異の増加速度を見せ、1日で300人、10日で1000人を数えるまでになった。かくして彼はしばらくの間、モンスト界隈の住人としてTwitterライフを満喫した。


2020年9月4日、ボリスジョンソンなりきり、すなわちボリスのツイートが5つも立て続けに万バズをすることとなった。モン安倍は、当初あまりにボリスのツイートがタイムラインに流れてくるので、これをフォローしているものだと誤認しており、いつしたのだろうかと首を傾げていた。しかしボリスとFF外であることがわかると、自分と同じようなコンセプトのアカウントの存在に親近感を覚え、すぐさまこれをフォローした。果たしてまもなく彼はボリスからフォローされた。これをきっかけにモン安倍はボリス達とよく絡むこととなり、徐々になりきり界隈の一員となっていった。


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ボリスはこの大バズの影響でフォロワーを大いに増やしており、まもなく5000人に達した。これは他のなりきりたちと比べて圧倒的な数字であった。プーチン、マクロン、モン安倍といった次点候補たちは軒並み2000人にも到達していなかったのである。

ボリスマクロンプーチンによる三者三つ巴のフォロワー戦争は8月以降継続して行われていたが、こうなると圧倒的にボリス優位に進んでいた。


ボリスが5連続の万バズをしてからしばらくは、なりきり界隈は小康状態となっていた。8月にTwitterG7が出来た時のような勢いは鳴りを潜め、新たなバズもフォロワーの大量増加もなかった。だがしかしそれゆえに、平和この上ないやり取りが1か月以上もの長い間、なりきり達の間で繰り広げられていた。「永遠にこのままってのも悪くないかもね」というのが、当時のなりきり達の総意であった。


さて10月も下旬になると、現実の米国社会は大統領選挙を間近に迎えて国内は二分され、日本のTwitterユーザーもこの大盛り上がりの選挙戦に大勢が注目していた。与党共和党のトランプ現大統領と、野党民主党のバイデン元副大統領との事実上の一騎打ちである。政治界隈が紛糾するなか、なりきり界隈もこの選挙に注目していた。

11月、バイデンの当選が決まると、トランプ陣営の徹底抗戦をよそに、なりきり界隈に新たな人が現れた。無論、バイデンのなりきりである。彼はボリスに影響を受けており、すぐさまなりきり界隈になじんだ。


こうして、2020年はまもなく大詰めを迎えていくこととなる。

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