弐話目:黄金柑

小春日和の事。納戸から発掘した熊手を持って庭の池を眺めていたら、後輩の里中がやって来た。


「何してるんですか先輩。小難しげに池なんか見ちゃって」


 佇む私の姿が見えたのだろう、玄関から玉袖垣越しに庭を覗き込んでいる。里中にやぁと挨拶して、軽く子細を語った。


「いや何、先日池の掃除を頼まれたのだ」


 掃除ぃ、と彼は素っ頓狂な声を上げた。相も変わらず一々反応が大袈裟な奴だ。

 先日、枯れたホテイアオイの除去を頼まれ早い内にやろうと考えては居た。何せ亡くなった友がわざわざ頼みに来る様な用事である。河童も人魚も視た事は無いが、江ノ本曰く彼等が困ると言うのだから大切な通り道なのだろう。

 今日は天気も良かったので、さては掃除日和かと思い立ちはしたのだが…。腰を上げて早々客人が来た事でやる気が削がれてしまい、ひとまず止めた。

 まぁ上がれと里中を招いて、自分は縁側に腰掛ける。お邪魔しまぁす、と間延びした声が聞こえて来た。庭からずかずかと不躾に上がり込まぬ辺り、お調子者だが礼節を弁えた男であった。

 だが先輩と呼んで来る割には、敬われた覚えが無い。単純に年の差があるだけで、彼にとっては同級生と共に居る感覚なのかもしれぬ。


「渡会先輩、先ずは此れをお渡ししますわ」


「何か呉れるのか、有り難う。…何だいこりゃ?」


 彼は手土産だと言って、何やら丸いものがごろごろと入った袋を渡して来た。受け取ってみると、私の掌よりも小さいものが触れる感覚がある。

 袋の口を開けると、瑞々しくも爽やかな香りが鼻腔を擽った。目にも鮮やかな黄色が覗いている。


「此れは――蜜柑か?」


 しかし私のよく識しる蜜柑よりも、遥かに明るい黄色だった。色味としては柚子や檸檬に近い気もする。

 首を傾げる私に、里中は賢しげな顔をして指を立てた。


「蜜柑は蜜柑でも、こいつぁ黄金柑って奴ですよ」


「ほう、黄金とな。また洒落た名前だ」


 確かにつやつやとした表皮は、黄金を連想させる。一つ取り出して、鼻に近付けた。香りを楽しんでみる。


「嗚呼、凄く良いなぁ」


 私好みの匂いだった。柑橘の香りと言うのは、如何してこうも心が浮き立つのだろうか。不思議な心地である。


「駅前で安売りしてましたわ。今が旬だそうで」


 引っ越し祝いです、たんと買ってきましたと里中は胸を張った。確かに此れはお手柄かもしれない。

 苦笑交じりで改めて礼を述べた。後で里中の分も剥いてやろう。


「そんで、何でしたっけ。そいつを使って池の掃除するんで?」


 私の横に胡坐を掻いた里中は、手持無沙汰に横に立て掛けられた熊手を見る。


「まぁ、やるよ。お前が来たから一旦止めはしたが、先延ばしにしたら取り返しがつかん」


「うーん、しかし貴方病み上がりでしょうに。池に落ちてまた病院に戻ったら如何するんで」


「落ちても大丈夫だろう、今日は暖かいよ」


 里中は難しい顔をして此方を見ている。


「また溺れちゃあ敵いませんよぉ」


「おっ…溺れはせんだろうよ。此れで溺れるのは子どもぐらいだ」


 万が一落ちても足が着くような深さである。心配性と言うか肝が小さいと言うか。

 しかしそれでも里中はうんうんと唸っている。如何にも池の掃除をやって欲しくないらしい。

 暫くは返答が見込めそうにないので、私は一旦話題を変えた。彼はただ引っ越しの祝いに来た訳ではないはずだ。


「里中よ、お前ただ黄金柑を届けに来た訳じゃないだろう。何か用事が有ったんじゃないのか」


「嗚呼そうですそうです。此処に来たらやけに真剣な顔で池なんか見てたから、用事がすっ飛んじまいました」


 ぽん、と手を叩くと鞄から大きな茶封筒を引っ張り出した。ごそごそと中身も取り出す。

 里中は一つばかり隣の町にある、大きな出版書肆に奉職している立派な編集社員である。それこそ社会への貢献度としては、私よりも遥かに上であろう。

 彼は学生時代の誼で私に仕事を持って来てくれているのだ。持つべきものは友と言うべきだろうか。

 私は自作小説の方はさっぱり才能が無かったが、外国の言葉に関しては多少なりとも学がある。其の為、翻訳を中心として仕事を引き受けていた。


「締め切りはちょいと先なんで安心して下さいな。懐が潤うのも…ちょいと後になるでしょうが」


「何、仕事を貰えるだけ有難いさ。毎度済まんな」


 先輩は締め切りは守ってくれますから良いんですけどねぇ、と里中は溜息を零す。如何にも彼の担当する文士の中に、困った御仁が居るらしい。


「何だ、お前さんも大変だなぁ」


「下っ端社員を慮ってくれる人は珍しいですよぅ、増長する困ったお人も多いです」


 そんな奴が居るのか。大作を練り上げて売れに売れてしまうと、人は変わってしまうのかもしれぬ。

 私には一生関係のない話かもしれないが。


「三文文士の私には縁遠い話だなぁ」


「全くで」


「おい」


 そいつは失礼だろうと睨むと、彼は調子良さそうにへへへと笑った。仕方の無い奴め。

 その後、腹を決めて掃除をしようとしたら結局里中に止められた。替わりにやって呉れると言う。

 熊手を持ってシャツの袖を捲る里中を縁側で眺める。外回りが多いからなのか、そこそこ体格が良い。


「しかし、そいつは君の仕事の範疇じゃないだろうに」


「なぁに構いませんて。替わりに書き物仕事でも進めて下さいよ、蕎麦も頼んでおいたんで昼に其れ食って僕は帰るとします」


 何と私の甲斐性の無さを予測して、昼飯ついでに引っ越し蕎麦を頼んでいたらしい。何れは自分で頼むつもりだったが…準備の良い男である。

 

「外回りの仕事もちょいとサボれて上手い蕎麦も食える。駄賃としちゃあ安いもんですし、ほら言うでしょ餅は餅屋って」


 そう言うものだろうか。確かに肉体労働をするよりは、机に向かう方が性に合ってはいる。

 此処は里中の好意に甘えてしまおうか。

 座敷から移動する前に、一旦台所に向かい黄金柑の入った袋を置いてきた。二個ほど取り出し、一つは仏壇に供えてやる。床の間に置くか迷ったが、あそこから江ノ本が出て来た以上邪魔になりそうなので止めた。

 残った一つは文机まで持って来た。匂いが強い訳ではないので傍に置いた所でそんなに香りはしないが、色鮮やかな其れは何処となく気分を明るくさせる。翻訳に煮詰まったら、此の愛らしい黄色でも見て心を落ち着かせよう。

 じゃあ頼むぞ、と庭に居るであろう里中に声を掛けるとはぁーいと返事が返って来た。じゃぶじゃぶと池を漁る音がする。

 其処ではたと気付いた。里中には江ノ本邸に引っ越すとは告げたものの、何処にあるかは教えていなかった筈である。

 彼と私と江ノ本の三人で此処を訪れた記憶は無かったが…私の知らぬ所で二人きりでの親交があったのか。

 であるならば、池の掃除も私と言うより江ノ本を偲んでなのかもしれぬ。

 人知れず少しだけしんみりした気持ちになった。


「うひゃあ」


 そのまま四半刻ばかり清掃の音を聞きながら翻訳作業に勤しんでいたが、庭から里中の情けない悲鳴が聞こえて来て慌てて立ち上がる。何事か。

 里中はお調子者で気の利く男ではあるが、小心者のきらいがあり滅法怪談ものに弱かった。先日の江ノ本の言葉を信じるならば、池には彼の苦手な者が訪れる可能性があるのだ。いや決して私が見てみたいとかではなく――河童や人魚に会ってみたいのは本心だが――里中が心配なのは嘘ではない。


「おい如何した」


 彼は池の直ぐ近くで尻もちを着いていた。怯えた顔で固まっていたが、慌てて立ち上がると縁側まで来た私の袖を掴んだ。泥で汚れたが其れを気にする程の余裕がないらしい。


「せ、先輩」


「お、おう。如何したんだ」


 がくがくと揺すられる。落ち着けと彼の肩を掴んだら、里中は深呼吸してようやく平常に戻った。


「い、池のですね何でしたっけ、ホテイなんちゃらをですね。漸く全部取り除いたんですよ」


「あぁ、確かに綺麗になってるな」


 池を占拠していた枯れたホテイアオイは綺麗に引きずり出され、玉袖垣の付近に纏めて放置してあった。あれなら後日乾かして仕舞えば如何とでもなりそうである。池の水は濁ってはいたが、先の状態よりも流れが速やかになっていた。


「助かるよ」


「そりゃ如何も…ではなくてですねぇ」


 其処で汚れた手で袖を掴んでいたのに気付いたのか、ややっすいませんと慌てた調子で手を離した。忙しい事のこの上ない。


「そうして池の中を眺めていたらですよぉ…何とまぁ濁った水の中に目ん玉がふたぁつ見えたんです」


「目玉ぁ? そりゃ君、魚の目とかじゃないのか」


 そう尋ねると真面目な顔で違いますと否定された。違うのか。


「ありゃあ魚なんかじゃありませんて。猿とか人みたいでしたよ、でもどっちであっても奇怪しいじゃないですか」


 確かに子ども一人入れるか怪しい程度の深さである。なれば、彼が目撃したものは…江ノ本の言っていたどちらかかもしれぬ。

 しかし、しかしだ。恐がりの後輩に其れを伝えるべきだろうか。言ったら白目を剥いて引っ繰り返って仕舞いそうである。

 此処は頼れる先輩として、怪異の不在を証明すべきかもしれぬ。


「ちょいと確認させてくれ」


 意を決して私は縁側から庭へと降りた。里中が後ろで危ないですよぉと喚いているが、家守が庭の脅威に怯えても致し方あるまい。

 護身用の熊手を持って池の近くに立つ。池の中に目を凝らすと、濁った水の中に何かの両目らしきものが見える気がする。

 確かに――猿か人の如き瞳である様な、黄色の瞳。

 つい後退あとずさりしたくなったが、此処は後輩の為にも勇を示さねば。

 引きずり込まれぬような位置まで移動して、池の中の瞳と見詰め合う。

 危険を感じたら直ぐにでも熊手で突っつく気概だったが、何だかその目は困っている様にも見えた。


―コココッ


 以前も聞いた事のある音が庭に響く。池の中の何かは、泡を一つ吐くと恥ずかしそうに姿の見えぬ泥の中へと沈んでいった。

 あの音は、何かの鳴き声だったらしい。

 私はその一連の流れを呆然と見ているだけであったが、渡会先輩ぃと呼ぶ里中の声に現実へと引き戻された。


「ど、如何でした? 変な音もしましたけど」


 心配そうに見ている彼に、釈然としないまま頷く。


「まぁ確かに何か居はしたが…」


「やっぱり居たんですか、おおくわばらくわばら」


「落ち着けって。…居はしたが、困っている様だったぞ」


 はいぃ、と素っ頓狂な声を上げる。何だか其の様子が面白く、私は笑ってしまった。一々仕草が大仰なのだ。


「笑い事じゃありませんて」


「い、いやすまん。多分、河童か人魚じゃないか、あれは」


 誤魔化しようも無さそうなので、素直にそう告げると里中は急に冷静になった。小難しい顔で首を捻っている。


「か、河童ですか? うーん、河童や人魚にしちゃあ眼が違う様な」


 おや。雲行きが変わってきた気がする。

 ただ里中の恐慌状態は治ったらしい。一先ず彼を労わる為に桶に水を汲んで来ると、有難うございますと手を洗った。


「お前さん、河童や人魚の姿を識っているのか。怖がりの癖に」


「識ってはいますよ、怖いから識っておくんです。…おやぁ、其の口調だと遭った事無いのですか」


「無いよ、そもそも居る事に驚いている」


 貴方二回も溺れたでしょうにと言われる。確かに溺れはしたがそんなもの視た覚えがない。


「あのなぁ里中。確かに私は二回も溺れた情けない男だが、一回目は知らぬ間に溺れた訳だし、二回目は足が滑って冬の川に落っこちたんだ。二回目も息を吸うのに必死で、水中なんぞよく見ちゃいないよ」


 嗚呼そうでしたねと言って、彼は何だか申し訳なさそうな顔になった。

 もしや一回目の凶事を思い出させたのを気にしているのかもしれない。私の心の瑕疵の一つではあるが、もう十年も前の話だ。里中に気を遣わせるのもこっちが申し訳なくなる。

 さて如何やってこの空気を変えようかと思っていたら、ごめんくださーいと言う快活な声が玄関から響いた。如何やら蕎麦屋の出前が届いたらしい。

 此れ幸いと私は腰を上げる。


「君、あれが頼んでた出前だろう。受け取ったら隣のおかみさんにも渡して来るよ」


 ちょいと待っててくれと告げると、里中はほっとしたような顔で分かりましたぁと頷いた。

 機嫌の良さそうな蕎麦屋の出前に代金を聞くと、支払いは済んでいると言う。如何にも里中が注文の折に先払いして呉れたらしい。至れり尽くせりすぎやしないか。

 此れは懐が潤った折には、里中に美味い肉を喰わせてやるべきかもしれない。

 上手そうな蕎麦の乗ったせいろを四枚受け取り、去って行く出前を見送って隣家のおかみさんを訪ねた。

 出て来たおかみさんは、少々遅い引っ越し蕎麦を其れでも喜んでくれた。良い人である。


「今日は旦那も休みでねぇ、お昼に二人で食べさせてもらいますね」


「済みません、大変遅くなりまして」


「構いませんよぉ、渡会さん病み明けでしょう?」


 そうやって暫し談笑していたら、急にドターンと大きな何かが倒れる音がする。吃驚びっくりしておかみさんと顔を見合わせた。


「今の、渡会さんの御宅で音がしましたね」


「え、えぇ。今、私の後輩が来ているのですよ。彼が掃除を手伝ってくれてまして…もしや何か倒してしまったのかな」


「あらまぁ大変」


 直ぐに戻ってあげて下さいな、と言う心配そうなおかみさんに礼を言って戻る。今日は騒がしい。

 さてはまた池の中に何かを見てしまって尻もちでも着いたのか、と思っていたのだが…座敷に戻ると何と縁側に江ノ本が座っていた。釈然としない顔で腕を組んでいる。

 其の横で、里中が大の字で引っ繰り返っていた。驚きながらも近付くと、気絶している。


「え、江ノ本。おい、里中は一体全体如何したんだ」


 頭を打ってやしないか心配になったが、幸いにもたんこぶは出来ていなかった。

 揺すっても起きず、取り敢えず座布団を折って枕にしてやる。無いよりはましだろう。


「判らん、俺は池が如何なったかと訊きに来ただけだ」


 そしたら無言で引っ繰り返って仕舞ったと言われ、私は苦笑してしまった。明らかに原因は其れじゃないか。

 可哀相に。怖がりな小心者の後輩は、十年前に行方不明になってしまった先輩が目の前に現れ肝を潰してしまったらしい。

 池の中の訳の判らぬ生物よりも、今は亡き筈の先輩が目の前に出て来る方が衝撃的だったのだろう。

 此ればかりは江ノ本が悪い、里中に同情してしまう。


「なぁ江ノ本よ。普通は死んだと思ってた知り合いが目の前に現れたら、倒れるくらいには吃驚するよ」


「其れは――、其れもそうか。つい失念していた」


 ぽりぽりと頭を掻いて立ち上がると、私が介抱している彼の様子をしゃがんで眺めた。存外に距離が近くてつい鼓動が早まる。

 どの角度から見ても、幽霊にはとてもじゃないが見えない。しかし彼の姿は行方不明になった当時のままだ。

 何とも、奇妙な心地になる。


「幽霊とは、昼にも出て来れるものなのか」


 胸の早鐘を誤魔化す為にもそう尋ねてみたが、江ノ本は私の顔を見てふんと鼻を鳴らした。


「何時出て来ても可笑しくはないさ。そも、訪問するのなら夜半の方が不躾だろうに」


「そりゃあそうだが。お前の家でもあるだろう、そんな事気にするなよ」


 むっとして言い返したら一本取られたな、と溜息混じりに呟かれた。そうして立ち上がると床の間へと向かって行く。


「や、もう帰るのか、里中にもう一度顔を見せてやれよ。こいつもお前を慕ってただろうに」


「起きて俺が居たらまた引っ繰り返りかねんぞ。心の準備の為にも、起きたらお前が説明してやれ」


「全く人任せな奴め…。あ、待て待て」


 何だと振り返った江ノ本に、仏壇に供えていた黄金柑を見せた。


「土産に持って帰れやしないか? 駅前で里中が買って来て呉れたのだ。良い匂いがするぞ」


「渡会、お前は俺を何だと思っているのだ。…土産は無理だが、床の間にでも置いて呉れないか」


「床の間にか、お前の邪魔にならないか」


 首を捻る私に、江ノ本は笑った。


「何、其れぐらいは気を付けるさ。…俺も黄金柑は嫌いじゃない。香りぐらいなら、届くだろう」


 成程、と得心していたら既に彼の姿は無かった。後には仏壇から黄金柑を持って来た私と、気絶した里中だけが残される。

 少ししたら里中の意識が戻った。気絶した相手の介抱等よく分からず、取り敢えず濡らした手拭いを額に載せてやっていたが冷たさが功を奏したらしい。

 茫然としている彼に、此の間の夜の出来事を話してやると泣きそうな顔になった。

 矢張り彼は彼なりに、江ノ本に対して積もる感情があるのだろう。里中は、江ノ本には敬意を払っていた。


「ってぇ事は、あれは江ノ本先輩ご本人なんで?」


「あぁ、何処から如何見ても江ノ本だったよ。人違いではあるまいさ」


 嗚呼惜しい事をしたなぁ、と里中は悔しがった。悔しがりながらも蕎麦を一枚平らげ、私が剥いてやった黄金柑もしっかり一個食べて帰って行った。気絶した割には元気が良い。食欲が失せるよりはましやもしれぬ。

 暫く掛け軸を一緒に見ていたが、江ノ本は戻って来なかった。一応床の間に黄金柑を置いてやりはしたが、絵の中の景色はちっとも変わらない。

 此処から来るんですねえと、里中は不思議そうにしていた。


「じゃあまた来ますよう、僕もまだ仕事があるんで。…今度は会えますかねえ」


 其の時に会えると良いなぁ、と私も心から思う。

 私は独りになった後に、もう一個黄金柑を剥いて食べた。

 瑞々しく僅かな酸味を持つ甘さは、優しく舌根を刺激する。

 指先に残る、黄金柑の皮の匂いに目を閉じた。

 ほんのりと、春めいた香りがする。

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