第35話 遅れてきた大容量データという災厄
「ん?」
謎の借金、じゃなくて、他人の口座からお金と魔石を根こそぎ持ち出した上に借金までさせて、ダンジョンの奥地に転移で放り込んで口封じする、っていう、かなり相当悪質な詐欺に遭って、そのダンジョンから脱出して、1週間後。
私はこの間、一度もダンジョンに潜ってない。それは休憩でもあったし、詐欺の被害者って事で、事情聴取ってやつを受ける必要があったし、支部長の心の安定の為に一緒にご飯を食べたりしてたし、持って帰った素材の使い道を相談する必要があったからだった。
私はもともと、お金の貯金もちゃんとしてたし。魔石は、せめて家族と、友達と、近所の人と……まぁ、私の家があった場所に出てきたダンジョンに呑まれた人を、全員復活させる為に、相当な量を貯めてた。しかも、借金だった分と、慰謝料を支部長がむしり取ってくれたから、正直、もう働く必要は無い。
「なんだろ、これ」
まぁ、それでも、魔石はまだ全員復活には足りないから、明日ぐらいからはまた、浅い所で雑魚狩りを再開しようかな、なんて思ってたところで。支部長の家で、支部長の手作りご飯を食べる晩御飯から帰ってきたら、ドアのポストに何かが入ってるのに気が付いた。
それは、見た感じは白い封筒で、持った感じは軽かった。振ると、カサカサ軽いものが動く感じの音がする。ただ不思議なのが、宛名もなければ切手も貼ってないし、当然消印も無いって事。つまり、普通の郵便物じゃない。
まぁ、何だか新手の宗教っていうか、ダンジョンを崇める感じの人達が、その活動の1つで、手作りチラシを配りまわってた時もあったから、手作業で配ったんなら、不思議じゃないんだけど。
「そう言えば、ダメなお薬を封筒に入れて、ポストに入れて、家主が帰ってきたら通報するって詐欺があったような……」
……うん。ダメなお薬っぽくは無い。もうちょっとしっかりしてるものだ。疑り深くなってるなぁ……。支部長が言うには、もっと警戒した方がいいらしいんだけど。私は、そういう警戒心がなさすぎるんだって。
とりあえず、ほとんど何もない部屋の椅子に座って、机の上で封筒を開けて、ひっくり返して中身を出す。出てきたのは、1枚のカードだった。トランプぐらいの大きさで、白くてつるっとしていて、真ん中に二次元コードが書かれてる。
ひっくり返して裏を見てみたら、そこには、こんな文字が印刷されたみたいに書いてあった。
『ダンジョン完全網羅事典・裏技/便利ツール付きアプリ』
……今更? というのを、言葉にしなかった私は、偉いと思う。忘れてはいなかったし、支部長に話したら頭を抱えられた後で、なんか偉い人に話が伝わったみたいで、支部長が忙しそうにしてたから、たぶん偉い人ほど待ってたとは思うんだけど。
二次元コードは、腕輪でも読み込める。まぁ、スマホの機能が入ってるから、それはそう。それに、紙の本にしたら、きっと作るのも配るのも、大変だったんだと思う。何か、便利ツールまで付いてるし。
まぁでも。少なくとも私は、あのダークトレントを、1人で倒したんだから。攻略本が欲しいって言った、本人なんだから。貰う権利は、絶対にある筈。って事で、カードの二次元コードを読み込んだ。
『ダウンロード開始 残り:85:00:00』
「…………えー」
読み込んだら、アプリのダウンロードが始まった、のは、いいんだけど……その、時間が。
というかこれ、途中で、腕輪のデータ容量が足りなくなる奴じゃ……。
え、待って。85時間、1日が24時間だから……3日で72時間、残り13時間、3日と半分? その間、腕輪がこの状態だと……実質、使えない、って事?
「え、えぇー……困る……」
腕輪は、色々な機能がくっついてるというか、色々な機能が1つになっているから、これが使えないと、大変だ。
だからといって、腕輪をいくつも持つのは、身分証明書も兼ねてるから、出来ないし。……便利なんだけど、口座とか、スマホとかは、やっぱり別で持ってた方がいいのかなぁ。
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