如月 ルナの手記
@reru-rere
第1話
この物語はクトゥルフ神話TRPGを遊ぶ「不知火」がもつPC「如月 ルナ」のバックストーリーとなっております。また、グロテスク、流血表現がございますので、閲覧の際は注意を払っていただきますようお願いいたします。
それでは良き惨殺を
私の決意を明細化するために書き記そうと思う。
将来の私がこれを読み返してどう思うのだろうか。
ほかのだれかが読んでどう思うのだろうか。
馬鹿な奴だと思うのだろうか。
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あれは私が小学生のころだった。
雨が地を強く打ち付ける6月のころ、私が体調を崩して休んでしまった日。
ピンポーン
とチャイムが鳴る音がした。
記憶が正しければあの日来客の予定はなかったはずだ。だが、現れてしまった。
玄関に向かった母がドタドタと廊下を走る音、どすんどすんと廊下を強く鳴らす知らない足音。
部屋に入ってきた母が私を押し入れの中に隠す。あの時見た母の表情は普段温和なものとは打って変わって、焦り、恐怖といった負の感情をにじませていた。
そのあとに部屋に侵入してきたのは黒いパーカにグレーのジーンズに身を包みパーカーのフードで顔を隠した母より少し大きな男だった。
それだけだったら母もここまで取り乱してはいなかっただろう。
男の手には鈍く部屋の明かりを反射するナイフがあった。
男はニチャアと口元を歪めると母の、大切な人の胸を一突きした。
どさりと音がして彼女の体がぴくぴくと痙攣する。
畳を染めるは赤、朱、紅、鉄のにおいをまき散らしながら海を作っていく。
「まま?」
扉にいたのは私と同じく軽く体調を崩してしまった妹だ。
男は振り返ると手に握る赤い狂器を掲げるが頭の位置までもっていったところで動きを止めた。まだ息の合った母が男のズボンをつかんでいたのだ。
彼はそれを一瞥し、私の特別な小さな命に狂器を放つ。
吹き出るは赤い雨。天井を、壁を朱に染めていく雨は止まることを知らない。
耳に入るは悲痛な叫び、怒れる泣き叫び、黒く濁った嘲笑。
目に、脳に映し出されるのは妹の体に無ができ、母の体からは赤に染まった噴水が噴き出てきた光景。
しばらくして男は満足したのか部屋を出、家を出、雨に消えていった。
私は何が起こったのか、起きてしまったのか理解できずにいた。いや、本当はわかっていたのかもしれない。
さらに時間がたち父が帰宅して部屋の惨状を見、警察に通報した。
当然私も事情聴取されたのだが、幼かったうえにあれを見た後でうまく話せなかったのを覚えている。時間がたって少しずつ警官に話をすることはできた。
しかし、これを綴っている今でも犯人は特定できず逮捕までには至っていないようだ。
事件から一年がたち、私は祖父に剣道を習うことにしたのだ。その時に彼から
「復讐のためには決して使うな」
といわれた。復讐するつもりなんて毛ほどもない。
あの日、母を、妹を助けてあげられなかった己の無力さを感じ祖父に教えを乞うたのだ。
それから長い年月が経ち今では祖父の跡を継ぐまで力をつけていた。毎日をけいこに費やしても師には届かないのだから驚きだ。
ともあれ、私はあの日のように己の無力で大切な人を失わないように力をつけた。
守り抜く。あんな悲しみをほかの人人がしなくてもいいように。
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彼女は手帳を閉じ、部屋を出る。歩を進めるは願いが届く光か、それとも血の海を踏みしめるのか誰にもわからない。
なぜなら「私たち」は今の観測者なのだから。
如月 ルナの手記 @reru-rere
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