30話 3人でランチを楽しむ

 成田と向かい合い、安定の学食カレーを食べながら、俺たちは悠斗の話をしていた。


「なあ玲司、悠斗ってさ、お前にやたら敵意むき出しじゃね? なんかしたっけ?」

「いや……別に何も。ただ、篠宮さんと仲良くしてるのが気に入らないんだろ」

「嫉妬か」


 箸を止めて、成田はふむ、と頷く。


「まあ、そりゃわかるけどよ。でもさ、最初っからお前のこと悪いやつだと思い込んでる感じしないか?」

「確かに……」


 おかしいなと呟き、俺はスプーンを止める。


 本来なら、悠斗は最初は俺のことをそこまで意識していないはずだった。こっちが嫌がらせを仕掛け、ヒロインたちとの間に割って入ることで、徐々に敵対心を抱く。それが原作の流れだった。


 だが、今回の悠斗は違った。初めて話した時点から、俺を警戒し、敵視していた。まるで、俺の役割を知っているかのように。


「おい、どうした?」

「……いや、ちょっと考え事をな」

「考え事? 悠斗がなぜ最初からお前を悪役扱いしてるのかって話か?」

「まあな……」

「そりゃ単に、噂のせいじゃね?」

「昔の事か?」

「そうそう。玲司ってさ、昔は結構やんちゃしてたんだろ? そういう噂を耳にしたとか」

「……それだけで、あそこまで敵意剥き出しになるか?」


 原作の悠斗は周りの噂なんかあまり気にしないタイプだった。だが、明らかに今の悠斗は『何か』を知っている。俺が何者なのか、何をするのかを。だとすれば悠斗が『この世界のシナリオを知っている』可能性も、ゼロではない。


 違和感がぬぐえず、考え込んでいると、ふいに俺の隣に誰かが座った。


「城咲さん、ここいいですか?」

「あ、綾乃?」

「はいっ」


 にこやかに微笑み、綾乃が手にしていた包みを取り出す。


「お弁当、作ってきました」

「…………えっ?」

「城咲さん、よかったらどうぞ」


 包みを開くと、そこには彩り豊かな手作り弁当が鎮座していた。卵焼き、照り焼きチキン、ほうれん草のおひたしに、彩りのいいミニトマト……バランスも完璧だ。


「マジか……」


 ゲーム設定通り、家庭的スキルが完璧すぎる……!


 俺は感動していた。悪役の俺が綾乃手作り料理なんて食べても良いんだろうか?いやここまで頑張って来たんだから許してほしい。


「いただきます」


 一口食べると、ふんわりとした甘みが口に広がった。卵焼きの味付けが絶妙すぎる。次に照り焼きチキン。タレの濃さがちょうどよく、ご飯が進む。


「うまい……!」

「ふふっ、よかったです」


 綾乃が嬉しそうに微笑んだ。こんなの……惚れるだろ。


「おいおい、あの肝試し以来、ずいぶん仲良くなったな?」

「ち、違うからな!」

「違うとは?」

「違うものは違う!」

「いやいや、違わなくね? そのうち『玲司くん、あーん』とか始めるんじゃないか?」

「やらねえよ!!!」


 完全にからかわれてる……が、どうにも言い返せない。それくらい、今の状況は甘すぎたのだ。


「えっ……?」


 気が付くと、その隣で、綾乃がわずかに顔を赤くして俯いた。


「えっ……?」


 その反応に、俺は一瞬固まる。


 いや、待て待て待て。何を恥ずかしがる必要がある? 俺はただ、成田のからかいを否定しただけなのに――


「ほら、玲司がそんなこと言うから、綾乃ちゃん照れてんじゃねーか」


 ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら成田が肘で俺の腕をつつく。


「ち、違っ……!」


 綾乃が慌てて否定しようとするも、声が裏返ってしまい、逆に疑惑を深める結果に。


 まずい、このままでは綾乃がオーバーヒートしてしまう。その前に止めないと。


「それ以上はやめとけよ成田。綾乃が困ってるだろ?」

「あー、ごめん。篠宮さん……俺つい調子に乗って……」

「いえ、お気になさらず」


 なんとか成田の暴走を止める事に成功する。


 さて、次暴走した時の対処法考えておかないとな。


——— ——— ——— ———


ここまで読んでいただきありがとうございます!少しでも面白いと思った方は応援コメントや☆を頂けるとモチベになりますので何卒宜しくお願い致します。


現在新作も連載中です。こちらも合わせて良ければ読んで頂けると嬉しいです。貴族たちの陰謀で左遷された俺は、呪いの館で再会した幼馴染に『もう二度と離さない』と囁かれる「https://kakuyomu.jp/works/16818622171398700224

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