転生…後に転移って俺で遊ぶなよ!!!
クロロロ
第1話プロローグ ガイ①
太陽が登り始め朝日に照らされて目が覚める。もう見慣れた今の自分の部屋から窓を開けて外を覗き込んだ。朝は決まって霧が森を覆い、太陽の光が自然と共存している町並みを照らす。幻想的なその光景を毎朝未だに飽きもせずに見るのが日課だ。
都会では絶対に見れないだろう。…しばらく村を見渡してから、顔を洗い、布1枚の褌をつけて着物を着てオビを結ぶ。江戸時代とかの服装かな。着替え終わると居間えと向かう。
「おはよう。母さん。水汲んでくるね。」
「ええ。お願い。戻ってくる頃には朝ごはん出来てるから。」
「はーい。」
この村には水道施設というものが無い。だから水道事態がないのだ。毎日の水汲みをすることは生活する上で欠かせない事なわけだ。
因みにガスも電気もない。日本では考えれない。
「よいっしょ。」
俺の身長の倍の大きさの桶を持って泉へと向かう。因みに幅は大人3人分くらいかな。因みに俺の今の年齢は10歳。
あり得ないができてしまう。人並み以上の力。まあ、そもそも人じゃないし。
俺は泉につくと集中して目を閉じた。俺の額に光が集まりそこから一本のツノが生えていく。同時に腕の筋肉が膨大する。この状態になれば桶をまるで小さいバケツで水をすくうのと同じことができちゃうわけだ。
「ふぅー。これで良しと。」
その後は母さんと話しながら朝食をとり家の裏にある大斧を担いで森に行く。
「これがいいかな。では、頂戴致します。」
俺は一本の木の前に立ち、手を合わせてお辞儀をする。伐採するときの儀式みたいなものだ。狩る命には敬意をという鬼人族の掟だ。
この世界には魔素があり、どんな生物にも必ず流れている。俺たち鬼人族にはその魔素の匂いを嗅いで強弱がわかる。だから弱った木を選び伐採をして生活に無駄なく使っている。細い枝も同じように使って無駄なく使う様にしてる。余りそうなら周りの人にあげたりして決して無駄にはしない。元日本人としてはなかなか新鮮だが、その考え方は好きだし良いと思ってる。
そんな生活が始まったのは8歳の時。日本での最後の記憶では16歳だった。家族の旅行中に事故に遭ったのは薄ら覚えてるんだが…急な衝撃を感じて意識を無くし、次に気づいたらこの子になっていた。
目覚めた日は熱が出て、体の怠さと頭痛の中、鏡で自分を見て驚愕し、部屋に入ってきた美人さんに驚愕し、気疲れも重なって寝て過ごした。凄く綺麗な人に看病されてかなり動揺したのは忘れたい記憶だ。まあ、その人が今の母親なんだよな。
そんなぎこちない1日目の夜。
夢でひたすら謝られるというなんとも奇怪な夢も見た。本当その日1日イベント的なことが多すぎて参ったのを覚えている。
その謝る人曰く、俺はもっと早く死にこの子に生まれ変わるはずが手違いで伸びてしまったと。
その間は寿命の少ない子の魂を入れておいて、俺が死んだタイミングで融合させてなんとかしたらしい。ただ本来そんなミスはあるはずが無いらしく、慌てて融合させた事で俺の記憶を消し忘れ、融合し終えた後に気づいたから手が出せなくなり今に至ったという。因みに今世は鬼人族という種族で人じゃないことだけ言われ…最後に再度謝った後すぐに居なくなったせいで何も聞けなかった。
だからチートの能力や加護とかなんかあるのかもわからない。どんな世界に転生したことすらわからない。
一応魔力量は既に大人並みにあるから多いみたいな事を母さんに言われたがまだ確定した事じゃ無いし実感がない。今のところ前世の記憶があることしかそれに当たるものがない。
ハーレムに関しては希望はあるものの、この村では不可能。母さんはめっちゃ美人で…というか鬼人族の女性陣はみんなレベルが高い。対して男性陣は、綺麗な顔立ちの人もいるが、モテるのはエラが貼りアゴが出てるゴツい奴がモテるそうだ。俺の父親と兄さんはモテるタイプだが、俺は母さん似のため違う。前世と美的感覚が違うせいで絶望的だ。人族にはウケは良いとは思うが、魔王領に住む部族が人族と友好的に関わる事なんて皆無だ。
因みに今のうちの家族構成は父親と母親に兄が1人いる4人家族。父親は魔王軍召集を受けて戦場へ行っている。兄貴はもう狩に参加してるから朝はだいたいいない。お昼頃には戻って来るはずだ。
それでもなんだかんだ楽しく過ごしている。
そんな生活がどん底へと落とされたのが俺が18歳に成る年。魔族軍からまた、召集命令がでた。どうやら優勢だったのが、ここまで戦争が長引いたせいと勇者の加勢で劣勢になってしまったらしい。
俺は勇者の名前に冷や汗が流れた。テンプレで考えれば日本人だろう。物語なら間違いなくこちらが負ける。現実世界なのだからそんなテンプレがあるかなんてわからない。わかってはいるが…例えようのない不安が全身を覆った。この村を守りたい。
「父ちゃんは大丈夫だよな?俺は行くぞ。心配だし。」
「兄さん。確かにそうだがこの村も守る人間が必要だ。何人か残さないと。村長はなんて?」
「お前と同じことを言ってたな。父ちゃんの時は5人残したと言っていた。今回もそうするつもりらしい。だがそれじゃあ、行く数が前回よりだいぶ下回る。」
「そうだろうね。」
出来る限り兄さんから会議での話を聞きながら模索を続けた。
「俺ちょっと行ってくる。」
聞き終えるとすぐに俺は母さんと兄さんの静止する声を無視して村長の家へと行った。
「こんばんは。赤鬼ダイ、白鬼ニルの息子ガイです。」
「ガイか。なんだ?こんな時間に?」
村長の息子のザンが応対に出てきた。コイツとは同い年の友人だったおかけで話の場をすんなりつくってもらえることになった。部屋には村長、今回の召集の部隊長に決まったギル、ザン、俺と後から来た兄さんで話す形となった。
「それでどうしたんだ?ガイよ。」
村長の一言で話が始まった。
「はい。今回は前回と違い、魔王軍は劣勢状態と聞いたので先鋭で向かうのは得策ではないと伝えにきました。」
ギルが不機嫌な顔つきで俺を見た。
「それはどういう意味だ?」
「今回、最悪撤退もあり得るとういうことです。この村に万が一、ヒト族が来たらどうしますか?更に5人もこの村に残したら魔王軍から数が少ないと言われる可能性もある。だから戦場へ行くのを18歳以上を16歳以上にして、ここに居るギルさん、兄さん、ザンを村に残し、若い人間の中の強い5人も残します。他を戦場へ出すべきです。」
「何を言い出すと思えば。腑抜けが!!ワシに戦場から背を向けろと!!?若いやつに行かせるくらいなら私が行ったほうが良いに決まっている。」
「せっかく生き延びても、この村が無くなっては意味がない。今回勇者が相手にいると聞いています。長期戦よりも勇者の存在で劣勢になったとは思いませんか?まさか俺の父とザンの父親がいるにもかかわらず劣勢になった状態をあなたなら覆せると?」
ダンっ!!
ギルは怒りをあらわにしながら机を叩いたが…言い返せないのだろう。何も言っては来なかった。
「だからこそ、負けた時の事を考えて動くべきです。我々は元々魔王に忠誠をしてる訳ではないでしょ?負け戦に先鋭を送るのは自分達の首を絞めるだけです。だから…俺が部隊長で行きます。行かせてください。必ず死者を出さずにこの村に帰ります。力は弱いですが魔法はこの村の誰よりも強いですから。撤退タイミングも俺が見て周りに文句を言われない様に振る舞える様に上手く動きますから。」
「お前は何を言ってんだ!!?俺も残す?ふざけんのも大概にしろ。何故兄貴の俺が残ってお前をださなきゃならないんだ?」
「兄さんは強いし、頭もいい。若い奴にも信頼は強いし、先生に適任だからだよ。残った人で若い奴らの訓練をしてくれ。10歳以上なら今からでも時間はあるはずだ。」
「納得できる訳ないだろ?」
兄さんの一言の後はしばし黙ったままになり沈黙が続いた。
「カイが何を思って残れと言ったがのがわからないが俺は行くぞ。弟はもう16だ。お前の話から戦闘員に入るだろ?村長の家の者が誰も行かないなんてのはありえない。なら弟を残して俺が行く。ギルさんとダンが残るのは賛成だ。」
ザンの言葉に村長はため息を出し、ギルさんと兄さんはザンを睨みつけた。
俺は正直ほっとした。ザンがいてくれるのは助かる。
「ならばザンを部隊長にする。お前さんじゃ他の年上連中が納得せん。ガイは補佐としよう。」
「「村長!!?」」
ギルさんと兄さんの2人が慌てて立ち上がり村長に詰め寄った。
「村長。考え直してくれ。馬鹿な弟が臆病風にふかれて言い出した戯言だ。聞き入れる必要は…「ワシに意見するか?なら魔王軍の状況から推察してお前にはこの先の予測をしてるんじゃな?聞かせよ。何が得策かを。」
村長の言葉に兄さんは黙り座り直した。ギルさんも何か言いたそうにしていたが、何も言わずに座った。
「ふむ。ガイよ。ワシも今回の召集はおかしく感じておった。お主にかけてみよう。ギルは守護隊長を引き続き頼む。ダンは守護隊員兼教育係責任者とする。先ずは2人で残す者を明日中に決めるんじゃ。後は2人が中心となりこの村の警備体制を作り直してくれ。ザン、ガイ……頼むぞ。」
「はい。」「ジジ、任せろ。」
その場はそれで解散となり兄さんと家に向かった。
横から急に顔をぶん殴られて吹っ飛ばされた。なんとか受け身を取ってすぐ様立ち上がって兄さんを睨みつけた。
「俺はお前と一緒に戦場に行くと思っていた。そして無事に帰ろうと。お前は俺が守ると。」
「……悪いな。兄さん。母さんを頼むよ。」
兄さんの顔が歪み怒りが更に膨らんだんだろう。涙を流しながら俺を睨みつけ、無意識だろうが額から2本の角が突き出てきていた。
「お前は…お前は!!」
兄さんの突進を防御幕を出現させて止めに入る。一枚は簡単に突き破られたから、土魔法で度壁を作り防御幕をかけたものを2つ出現させてなんとか止めた。
「兄さん。俺だってタダじゃ死なないよ。もちろん帰るつもりだ。先行した父さん達とね。」
土壁が崩れて膝を突き俯き泣いてる兄さんの肩に手を置いた。
「……必ず帰れよ。帰らなかったら追いかけてぶん殴るからな。」
兄さんは俺の手に重ねる様に手をおいて言った。
「ああ。わかった。」
兄さんと一緒に帰って家に入ると母さんが心配そうに俺たちを見て頬を腫らした俺に、泣いた兄さんの姿に慌てながら濡れたタオルを2人に渡してくれた。
俺が村長との話で決まった事を伝えると兄さんに殴られた場所を思いっきりビンタされて泣き始めてしまった。
「母さん。…ごめん。」
俺は母さんを抱きしめてから謝った。
「馬鹿だよ……馬鹿だよ。アンタは。」
それから4日後俺たちは魔王軍に連れられて村を出た。
そこから1か月かけて魔王軍基地に到着。そこから父さん達がいる最前線へと移動開始する。
「ガイ。どう見た?」
「だいぶやばいと思うよ。最前線が1週間前に後退したって聞いたし。いつ勇者達が単独で攻めてくるかが分かれ道なんじゃないかな。一応ザイ。勇者が先行した騒ぎの間に一陣として半数を離脱させて、残りは戦況が完全に劣勢になってから逃げるよ。」
「どっからそんな情報を持ってきたんだ?」
「さっき別行動の間にね。魔法って盗み聞きするのにもつかえるんだよ。」
「お前がいてくれて助かるよ…本当。どちらにせよ、まずは親父達との合流だな。無事だといいが。」
「俺たちは鬼人族だよ?そう簡単には死なないさ。それに俺たちの親父達、だいぶ活躍してるみたいだし。」
「らしいな。歓迎のされ方が凄かったもんな。」
「ああ。」
2日かけて最前線へとつくと既に戦闘状態。
「ガイ筆頭に5人で基地に。残りは俺に続け!!」
敵を確認後、ザンが指示を出す。俺とザンは目線でだけ合図を出し合い、その瞬間に二手に分かれた。
基地に着くと既に周りには敵が見える。俺は直ぐに5人に手助けに向かわせて、俺は単独で上級魔法で殲滅しながら基地の中に入り、そこから遊撃隊に入り基地から撃退していった。
「すごいな。見るからに魔法とは無縁に見えたが助かった。」
「いいえ。まだまだです。鬼人族なんですが生まれつき魔力が強かったんで自分で勉強したんですよ。役に立てて良かったです。」
「また期待する。この部隊に入る様に進言しておくからな。」
「はい。」
なんとか基地周辺の敵達は撤退したあと、遊撃隊長の魔人族の人に声をかけられて焦りながらも応対した。
基地を回ってる間にバルクさんを見つけた。ザンの父親だ。他5人見えたが…父さんがいなかった。
「ご無沙汰してます。バルクさん。」
「ん…?ガイか…?ずいぶんと大人になったな。見違えたぞ。…そうかまた追加召集を受けたんだな。」
「はい。俺以外に14人います。ザンも部隊長として一緒に来ました。」
「……そうか。くそっ。」
「それで……父さんは?」
「………すまない。今生き残ってるのは我々だけだ。」
俺はただ涙を堪えながら手を握りしめた。
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