第2話 鳥羽族 ファリア
「ごめんなさい。取り乱したわ。まあ、どのみち帰れないわよ」
「ちょっと待てよ! いきなり呼び出しといてそれはあんまりじゃないか!?」
「無事魔王を倒したら、王様がどんな願いでも二つ叶えてやると言っているわけだし、それで帰らせてもらえばいいじゃない」
なんで自分勝手な言い分なんだ。ていうか、王様言った? 聞いてないぞ、そんな虫のいい話。
「勇者殿に選択肢は無いぞよ。もし魔王退治を拒否するのだったら、今すぐにでも貴様の首と胴が泣き別れだ」
王様が詰め寄りながら低い声で俺を脅しにかかる。ああ、これがパワハラか。
「ここで『よし、頑張るぞ!』って出来る人間では無いですね。モチベーションが無尽蔵の様に落ちていくんだけど」
「大丈夫。あなたは後方でバフ魔法掛けてればいい簡単な話なのだから」
するとオカマは長々と説明を始めた。
長ったらしいのでオカマの話を噛み砕いて要約するとこうだ。
この世界の魔王は数多の状態異常を駆使する切れ者で、強い戦士だけでは太刀打ち出来ない。
そこで回復出来て仲間をバチクソ強化できる術師を探していたのだが、この世界には居なかった。
なので俺に白羽の矢が立ったと。
さらに言うとこの世界のバフは重ね掛け出来ない。だから一回一回がバカみたいなバフを付与できる勇者を探していた。
というのがオカマのお話。
◇
「この国で旅の仲間を呼んであるから連れてくるといい」
結局、俺が魔王を討伐するという方向で話はおさまった。否、収まってしまった。
「さあ来るのだ。たわけ者ファリア」
すると後ろから一人の少女が現れた。よく見てみると純白の羽が背中から生えている。
デカパイで眉毛が濃い女の子だった。
「この娘は忌子にして、貧民層からの成り上がり魔導師での。ぽっと出の勇者殿には最適な人材であろう」
なんか王様、言い方に棘があるな。忌子?
「それでは自己紹介をしてもらおう」
「あたしは鳥羽族にして魔導師、ファリア。魔法研究を主に担当してるよ」
「ファリアさん、よろしくお願いします」
「それで、勇者の仲間は本当にあたしで良いのですか王様。悪いですが、あたしはそんなに強くはないですよ?」
ファリアの嘆きを遮るように、オカマがシャシャリだした。
「そしてあたしはマカオ•ルギラウ。道案内兼、武闘派として鳴らしていくからよろしくね!」
えっ、オカマも付いてくるの?
嫌だなぁ。無意識にパワハラしてきそうで。それに俺を呼び出した元凶だし。
「さあ、魔王討伐を果たしてくるのだ! 勇者達よ!」
◇こうして(不本意ながらも)俺たちは王様に命じられ、魔王討伐に向かって旅立つのだった。
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