異世界ジャパン•ワールド〜回復カウンターが本体の大盛と、日本式異世界に住むオカマたち

片山大雅byまちゃかり

序章 大樹王国•オカマシティ

第1話 マカオ•ルギラウ

 自分の人生に予定を立てた覚えは無いのだけど、予定外だ、と思う事はたくさんあって、飽きない人生だなって思う。


 予定は未定なのに、予定外はあるんだ。


 剣術だって、バリバリ活躍しようって意気込んでたのに、結局パッとしなかった。


 さらに面倒ごとに巻き込まれる性で、最近は訳あって財閥の娘を守ることとなり、結果的に極道と命の取り合いをしたばかりである。


 そんな頃、オカマに出会ったのも、きっと予定外なのだろう。


「あらーいい男! あなたを勇者としてお迎えしにきたわー!」


 全身ゴリラみたいなオカマだった。トサカ頭で、そんじゃそこらのプロボクサーにも負けないようなフィジカルの持ち主と見える。


「いっけなーい! 異世界行きのゲートが閉じるわ! 勇者様行きましょう!」


 俺は有無を言う前にオカマに手引きされ、虹色に輝くゲートへダイブすることになった。



         ◇



「鳥羽族は今日も城下街の空を滑空し、水魔法で畑から野菜が咲き乱れ、魔王軍は隣国の民を脇毛に染め上げたこのご時世、よく来てくれたな勇者殿よ」


 気づけば城内に居て、俺たちは王様の話を聞かされていた。状況がイマイチ飲み込めない。


 今日も予定外だらけだ。


 しかも、城内は城内でも日本の城みたいな木で作られている。異世界だよな?


 オカマはともかく、王様は日本人ぽいし。王様というより、征夷大将軍ぽいし。


 もしかしたら、異世界にして異世界に在らずな世界観なのかもしれない。


「前置きは省略して単刀直入、本題に入らせてもらおう。勇者殿に全人類脇毛化計画を企んでおる、たわけ者魔王を倒してほしいのだ。仲間と金はこちらで用意しよう」


「あの、つかぬ事をお聞きしますが、俺って本当に勇者なのですか? 俺はただの日本人なんですけど?」


「勇者殿の能力は事前に紙に記してある。読んでみい」


 俺は王様から手渡された資料を訝しみながら読んでみた。


◇ヒビキ•オオモリ18歳


筋力 そこそこ

知力 そこそこ

魔力 つよつよ

運力 つよすぎ

走力 そこそこ


スキル 仲間鼓舞•ヒール•マジックカウンター。


 異世界語が日本語な事にも驚いたが、このスキルはなんだ?


 ていうかそもそも、スキルってなんだ? ポケモンでいう特性みたいなものなのだろうか?


「ヒールやマジックカウンターも優秀だが特出すべきは仲間鼓舞だ。文字通り仲間の能力を数段上げる、仲間鼓舞のスキルを持ってる者は人類史で二人目なのだ」


「だからこの世界に連れてきたってわけよ。ねっ、勇者様!」


 なるほど、つまり俺は選ばれた存在ってわけね。


「……勇者って持て囃されるのむず痒いな」


 一瞬、空気が冷たくなった。と思ったら急にオカマが俺の胸ぐらを掴み、至近距離で『勇者様の自覚を持ちやがれー!』と叫び散らかし始めた。


「うっわ、急にキレた。怖。怒りの沸点どこ?」


 異世界……昔の日本みたいな異世界に来たばかりだけど、俺は元の世界に帰りたいと心の底から願った。

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