友達以上恋人未満

kano

第1話「友達以上恋人未満」

「ねえ、私たちって何?」


夜の公園。ブランコを揺らしながら、彼女がぽつりとつぶやいた。


「……友達、じゃないの?」


そう答えると、彼女は少しだけ寂しそうに笑った。


一緒にいるのが当たり前だった。映画を観に行くのも、夜遅くまで電話するのも、誰かと恋愛相談するのも、いつも二人でだった。


でも、手を繋いだことはないし、「好き」と言ったこともない。


きっと、どちらかが一歩踏み出せば、この関係は変わる。


「……もし、私が ‘恋人になりたい’ って言ったら、どうする?」


彼女の声が少し震えていた。


私は答えられなかった。


壊したくなかった。変わるのが怖かった。


だから――


「そんなの…、考えたことないよ」


嘘をついた。


彼女は少し黙ったあと、「そっか」と笑った。


その笑顔が、ひどく遠く感じた。

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