設定されているシチュエーションが、まずとても面白かったです。
主人公は完全な盲目。でも、音などの別の五感の情報から、外の世界で起こっていることを察知する能力に長けている。
視覚情報に頼らない分だけ、他者の心の動きなどを音から把握でき、相手が何を考えているかなども読み取れる主人公。
そんな彼が友人に誘われ、「ある心霊スポット」に向かってみることに。
目の見えない人間がその手の場所に行くと言うのは、一体どんな化学反応をもたらすのか。「恐ろしい何かを目撃する」という視覚的なものがない状況で、ホラーとしては何を見せてくれるのだろうと、この段階でとても好奇心を刺激されました。
その後で提示される、本作でのテーマ的なもの。
主人公の目が見えない。だから「見えないままで終わってしまうもの」が出てくること。そうすることで「正体不明」なものは正体不明なまま。
その一方で、主人公の境遇に対する周りの人間の反応などは、「見えないからこそ、逆にはっきりと浮き彫りになっていく」という事態が起こります。
見えないもの。見えるもの。その二つを対比させてみせることで、本作は主人公が外の世界に向ける葛藤というものを浮き彫りにしてみせました。
ホラーとしての不穏さもさることながら、人間というものに対するテーマ的な掘り下げもあり、とても読み応えのある作品でした。